細菌が世界を支配する: バクテリアは敵か?味方か?

  • 白揚社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826901666

作品紹介・あらすじ

生命を支え、生命を奪う存在=細菌。40億年前から地球に存在している、生命の営みに欠かせないその驚異の生態と、細菌たちと共存するための賢い付き合い方。

感想・レビュー・書評

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  • 原題は「Allies and Enemies」、当然と言えば当然かもしれないが、現代の方がより著者の趣旨を的確に表現している気がする。
    かなり専門的な記述も多く、正直あまりよく理解できない内容もあったのだが、不思議と読みやすい。

    細菌というと病原菌ばかりを思い出すが、私たちの暮らしに有益に働く細菌も数多くいる。細菌の力なくして生命活動が成り立たない生き物もいる。
    殺菌、抗菌に頼りすぎることの弊害もある。
    微生物についてもっとよく知ってください、避けるべきは避け、上手に付き合うべきは付き合って、うまくやっていきましょうね、ということと理解した。

    さまざまな微生物の活動や働きについてもそれなりに面白く読んだが、細菌にまつわる研究者たちの歴史の部分がことのほか興味深く、『世にも奇妙な人体実験の歴史』を思い出した。
    研究者たちの熱意には改めて驚かされるし、こんなにごくごく小さな細菌や様々な生物など、地球上に生息するあらゆる生き物の生命活動がここまで解明されていることに、長い歴史の中で研究者たちが強い探求心をもって、たゆまず努力を続けてきたその賜物であると感嘆せずにはいられない。
    それでも、まだ地下数百メートルに潜むであろう未知のバクテリアのすべてを知るには長い時間がかかる、とさらに言っているくらいで、研究者たちのとどまるところを知らない探求心、解明の使命感には感服するばかりである。

    そういう研究者たちの地道な努力の上に現代の科学は成り立ち、その恩恵を私たちが受けているんだな~としみじみ感じ入った。

  • 細菌と仲良く生きていこう

    原題は“Allies and enemies”。邦題はいささか扇情的かな、と思う。
    味方ともなり、時には敵ともなる、細菌という生きものについて、包括的に俯瞰した好著である。
    微生物の研究に実際に携わり、その後、作家としても活躍しているという著者の筆致は、科学的正確さと、そこはかとないユーモアが絶妙にミックスされている。

    最近ではそうでもないと思うが、一時期、「除菌グッズ」が異様に流行ったことがあった。もちろん、感染症や食中毒の予防には、有毒な細菌を持ち込まないことが第一だが、そもそも、ヒトも動物も、無数の常在菌とともに暮らしている。こうした常在菌たちが作る細菌叢のおかげで、一過性の(ときに病原性である)細菌が無闇と増殖しないようになっている。怪我などでその細菌叢が損なわれたときに、バリアを破って病原性のものが繁殖してしまったりするのだ。
    常在菌なしの無菌状態というのは、ある意味、鎧を脱ぎ捨てたようなものかもしれない。

    ウシのように、食物を消化する際に、細菌なしには栄養を取り出せないものもいる。反芻動物であるウシは、繊維質の多い草を噛み戻しては徐々に消化していくが、繊維や多糖類をさらに小さい分子に分解するのは原生動物や細菌の仕事である。ウシは細菌が作り出す揮発性化合物やアミノ酸やビタミンをもらって生きている。ウシと細菌は共生しているのだ。

    細菌=悪者ではないとはいえ、病原性の細菌はいる。こうした細菌は、古来、ときに猛威をふるってきた。中でもペストやコレラは何度か大流行を起こしてきた。ペストなどは朝感染して夜死んでしまうこともあった。こうした致死率の高いものは歴史を変えるほどの威力があったといえる。
    一方で、それほど激烈には進行しないが、長期間に渡って感染者を蝕むのが結核菌だ。保菌者をすぐには殺さない分、知られぬままにじわじわと集団に広がっていく。結核は治療にも時間が掛かり、飲み続けなければならない薬を飲み忘れて、再発症する人も少なくない。
    チフスは激しい食中毒を引き起こすが、無症状の保菌者というのもいる。「チフスのメアリー」と呼ばれた料理人が、勤め先を転々としながら食中毒を引き起こし続けたという、何とも恐ろしい話もある。

    その他、細菌研究の歴史や、耐性菌の話、大衆文化に登場する細菌、産業を生んだ細菌、エネルギー問題と細菌、可能性を秘めた細菌利用等、興味深い話が多い。

    細菌を敵視するばかりでなく、しかし必要な用心はしつつ、細菌とともに生きていこう。


    *著者紹介によると、微生物研究室を舞台とした推理小説も執筆中らしく、それはそれでおもしろいかもしれない(^^;)けれど、この路線で十分おもしろいぞ。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000969464

  • ちょっと難しい。。
    自分に関わりの近いところや興味のある所だけ読んでも十分楽しめる。

  • exchange

  • 目に見えず、病気にかかったり病気が流行ったときくらいしか意識することのない細菌たちの話。このように、細菌は、病原菌とかばい菌として認識され、実際に、結核やペストなど恐ろしい病気を引き起こすが、著者は、もっと広い視点から細菌について語る。中でも、著者のお気に入りは、高温や高圧など生命にとって過酷な環境で生きる細菌や有害物質を分解して生きる細菌がお気に入りのようで、これらを詳しく紹介するとともに、細菌による環境改善の可能性や細菌による物質循環について紙数が割かれている。
    本書を読むと、日常生活のどこにも大量の細菌がいて、意識せずに共生していることが分かる。逆に言うと、あまり意識しすぎると、気味が悪くて、息をするのも苦しく感じられるかもしれない。いずれにせよ、目に見える生物たちとは一味違う生き方をする細菌のことを知り、大昔の地球の原初の生命に思いを馳せるという広い視点を提供してくれる。

  • 歴史から現代の状況まで一つ一つの掘り下げは浅いが網羅的。
    「細菌のイメージを良くする」という意図が成功しているかは微妙。特に、邦題から期待される内容とは違っている。
    学者にありがち、自分の知見を羅列してしまった。

  • 読みたい

  • 細菌の地球上で果たす役割、研究の歴史、文化やバイオテクノロジーとの関わり、そして今後の展望をわかりやすく解説。かなり最新の知見や専門的な知識までさらっと書いてあります。広く浅く、過去から最近までの微生物分野の全体像を眺めたい人向け。じっくり全部読むよりぱらぱらとめくって興味あるトピックスを探すのにもよさそう。
    わかりやすく書いているもののそれなりの専門用語は出てきますので、高校生物や化学の知識がある方が楽しめるかと思います。

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