美しい水死人: ラテンアメリカ文学アンソロジー (福武文庫 マ 1202)

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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828857138

作品紹介・あらすじ

浜辺に打ち上げられた巨大な物体。絡みつく藻やゴミを取り除いて現われた水死体のあまりの美しさに、村の人々は息をのみ、何くれとなく世話を焼く。ガルシア=マルケスの表題作「美しい水死人」をはじめ、17人の作家が、独特の時間の流れの中に織りなされる日常と幻想の交歓を描く。豊穣なラテンアメリカ文学の薫りをあますところなく伝える短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者も内容も多岐に渡っていて、とても贅沢なアンソロジーになっている。ラテアメ初心者の私でも、耳にしたことのある作家が何人も載っているが、誰でも楽しめるか、というとむやみに勧められないかも。というのも、奇想に偏った話が多く、それが苦手だと途中で読むのが苦痛になるかもしれない。もともとお目当てだったルルフォ「犬は鳴いてないか」は期待を裏切られず、よかった!他に印象深かったのは、パス「波と暮らして」表題作マルケス「美しい水死人」リベイロ「記章」キローガ「羽根枕」カサーレス「パウリーナの思い出に」「モレルの発明」を読んだときにも思ったが、カサーレスの小説はよく、夢をみているような夢見心地といった文章が続くところがあって、そこがとても魅力的だったり、物悲しかったりする。木村栄一氏による解説がボリュームがあって且つ丁寧で素晴らしかった。

  • 3、4年前にサンリオ文庫(『エバは猫の中』)で読んだラテンアメリカ文学アンソロジーの福武文庫版。ガルシア=マルケスとコルタサルの短編がそれぞれ違うのに入れ替わっている(二人の御大の本はアクセスしやすいので、サンリオと福武どっちがいいの!と迷っている人には「どちらでも大丈夫」といいたい)。やっぱり南米幻想物はおもしろいなあ、と感じ入った。またマイブームが来るかもしれない。

    今回よかったのはこの二つ。

    ドノソ「閉じられたドア」:コルタサルの「追い求める男」の勢いで追い求めている気がするのだが何しろ寝てるだけだから、という滑稽さと切実感。中年になって深い眠りが貴重になってきたので、いっそう味わい深く読めた。

    エルナンデス「水に浮かんだ家」:今回は何だか、初読時より読みとれた気がする。喪失をうめるための狂いの話で、多少狂っていてもなんとかバランスを取って生きている、その取り方の独特さがよかった。DIY感があってたくましい。ぼんやり者の語り手をしっかり使ってるところも小気味よい。

    番外でビオイ=カサ―レスの「パウリ―ナの思い出に」。名品として有名なこの短編、非モテの妄想力がすばらしい。なんでこんなきれいでしょんぼりなストーリーが作れるのか。

  • bookmark2の序文で金原瑞人が度々言及していた表題作、ラテンアメリカの"太っちょのおばさん"がそこにはいた。
    美しく、気弱で人の良い気丈夫。
    その人のために身なりを整え、家を整え、村を整え誇りにする。
    とこかにいる美しい水死人のために私は今日もより良い何かであるように努力するのだ。

  • 関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB00216948


  • アランダ司令官の手/アルフォンソ・レイエス
    波と暮らして/オクタビオ・パス
    犬が鳴いてないか/フアン・ルルフォ
    生活費/カルロス・フェンテス
    カナリアとペンチと三人の死者のお話 /ホルヘ・イバルグエンゴイティア
    包誠による歴史/サルバドール・エリソンド
    遊園地/ホセ・エミリオ・パチェーコ
    ミスター・テイラー/アウグスト・モンテローソ
    美しい水死人/ガブリエル・ガルシア=マルケス
    記章/フリオ・ラモン・リベイロ
    薔薇の男/マヌエル・ローハス
    閉じられたドア/ホセ・ドノーソ
    羽根枕/オラシオ・キローガ
    水に浮かんだ家/フェリスベルト・エルナンデス
    旅行者/マヌエル・ムヒカ=ライネス
    パウリーナの思い出に/アドルフォ・ビオイ=カサーレス
    山椒魚/フリオ・コルタサル

  • 訳がよい。読みやすい。

    アランダ司令官の手」 アルフォンソ・レイエス
    La mano del comandante Aranda Alfonso Reyes

    「波と暮らして」 オクタビオ・パス
    Mi vida con la ola Octavio Paz

    「犬が鳴いてないか」 ファン・ルルフォ
    No oyes ladrar los perros Juan Rulfo

    「生活費」 カルロス・フェンテス
    El costo de la vida Carlos Fuentes

    「カナリアとペンチと三人の死者のお話」 ホルヘ・イバルグエンゴイティア
    Cuento del canario, las pinzas y los tres muertos Jorge Ibarguengoitia

    「包誠による歴史」 サルバドール・エリソンド
    La Historia seger Pao Cheng Salvador Elizondo

    「遊園地」 ホセ・エミリオ・パチェーコ
    Parque de diversiones Jose Emilio Pacheco

    「ミスター・テイラー」 アウグスト・モンテローソ
    Mr. Taylor Augusto Monterroso

    「美しい水死人」 ガブリエル・ガルシア=マルケス
    El ahogado mas hermoso del mundo Gabriel José Garcia=Márquesz

    「記章」 フリオ・ラモン・リベイロ
    La insignia Julio Ramon Ribeyro

    「薔薇の男」 マヌエル・ローハス
    El hombre de la rosa Manuel Rojas

    「閉じられたドア」 ホセ・ドノーソ
    La puerta cerrada Jose Donoso

    「羽根枕」 オラシオ・キローガ
    El almohaden de plumas Horacio Quiroga

    「水に浮かんだ家」 フェリスベルト・エルナンデス
    La casa inundada Felisberto Hernandez

    「旅行者―1840年」 マヌエル・ムヒカ=ライネス
    La viajera '1840 Manuel Mujica-Lainez

    「パウリーナの思い出に」 アドルフォ・ビオイ=カサーレス
    En memoria de Paulina Adolfo Bioy Casares

    「山椒魚」 フリオ・コルタサル
    Axolotl Julio Cortázar

  • まだ1話目「アランダ司令官の手」

    表題作の「美しい水死人」はちくま文庫の「エレンディラ」にも収録されてて大好きな作品。
    ラテンアメリカ文学アンソロジーということで
    ステキな作品との出会いを期待してる。
    また、順番に読んでいくと久々「美しい水死人」を読むことができるのも楽しみ☆ 
    感想は追々〜 評価も読み終えてから〜

  • 表題作をはじめ水にまつわる印象的な話が多いので、水をテーマに定めて編んであればもっとよかったかも…。ただし顔見世的に広く集めるとなるとクオリティが満たないものも多かったのか。
    フェンテスは、(岩波文庫の本から判断すると)もっといい短編がありそうな気がするが。

  •  どうして海岸に水死人が漂着しただけで、海辺の村の人たちは勝手にいろいろと想像し、水死人の持っていたアクセサリーを盗ったりして、幸せな気分になっているんだろう、不思議な話だな、と思っていました。

     この謎が解けたのは小松和彦の『異人論』を読んだ時でした。
    日本にも同じような構図の話がたくさんあって(村に迷い込んだ坊主を金銭目当てに殺しちゃうとか)ああ、これが「マレビト」ということなんだと納得しました。

     要するに閉鎖された村社会に富をもたらすのは外から来る異人であって、富を村に残すにはその異人さんが死んでしまうか、殺されてしまうかしてくれないと辻褄が合わないということです。 横溝正史の『八つ墓村』も同じ構図ですね。

     と自分は思いましたが、果たしてガルシアマルケスがそれを意図して書いたかどうかはわかりません。
     この他にも不思議な話がたくさんあるので、おすすめです。

  • アランダ司令官の手(アルフォンソ・レイエス)、波と暮らして(オクタビオ・パス)、犬が鳴いてないか(フアン・ルルフォ)、生活費(カルロス・フエンテス)、カナリアとペンチと三人の死者のお話(ホルヘ・イバルグエンゴイティア)、包誠による歴史(サルバドール・エリソンド)、遊園地(ホセ・エミリオ・パチェーコ)、ミスター・テイラー(アウグスト・モンテソーロ)、美しい水死人(ガルシア=マルケス)、記章(フリオ・ラモン・リベイロ)、薔薇の男(マヌエル・ローハス)、閉じられたドア(ホセ・ドノーソ)、羽根枕(オラシオ・キローガ)、水に浮かんだ家(マヌエル・ムヒカ=ライネス)、パウリーナの思い出に(アドルフォ・ビオイ=カサーレス)、山椒魚(フリオ・コルタサル)

    内容が濃いなあ、こうやって見ると……
    「犬が鳴いてないか」がすき。荒くれ息子が悪事を働いて怪我を負う。老人はそれを背負って町を抜け出し、山を越えて助けてくれそうな村を探す。心理描写がない。全部台詞で説明するのに、老人の言葉には嘘がある。本当は息子が心配でたまらないのに、それを決して言わない老人の頑固さと物悲しさがすてき。あと、月の描写がすてき。
    水死人は二回目。最初は ほ? て感じだったが、読めば読むほど、気になる。

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