旅と交流 (北大文学研究科ライブラリ9)

  • 北海道大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832933873

作品紹介・あらすじ

ブッダとイエスの旅、中世ヨーロッパの旅と時間の概念、イランの王様のヨーロッパ旅行、万里の長城と日本人、日本や外国の漂流民の旅、国際移民など、地域と時代を越えた旅の世界に出かけましょう。各執筆者が楽しい話題でガイドします。

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 出家と自己の探究―ブッダ最後の旅
    第2章 聖書と旅
    第3章 イランの王さま、ヨーロッパへ行く
    第4章 郵便と旅行―近世ドイツにおけるコミュニケーション革命
    第5章 万里の長城を見に行った日本人
    第6章 八重山に漂流した朝鮮人たち―彼らはなぜ、どのようにして朝鮮へ送還されたのか?
    第7章 江戸時代漂流民と「安南国王」阮福映―漂流記から読み解くベトナム史
    第8章 国境を越える旅の社会学

  • 四編ほど読了。細田典明「出家と自己の探求」からは、「感興のことば」の引用を。「もしもひとが自己を愛しいものと知るならば、自己をよく守れ」「自己こそが自分の主である。他人がどうして<自分の>主であろうか」「どの方向に心で探し求めても、自分よりさらに愛しいものをどこにも見出さなかった。そのように、他人にとってもそれぞれの自己が愛しいのである。それ故に、自分のために他人を害してはならない」/森川知子「イランの王さま、ヨーロッパへ行く」は、ガージャール朝ナーセロッディン・シャーが主人公。改革者アミール・キャビールは二年半で失脚、暗殺されたそうだが、その改革の芽は改革をすすめる19世紀後半イランの重要な礎となったこと。ヨーロッパ各国の元首と会談し、その国情も意外と正確に見抜いていたこと、オスマン朝のアブデュルアジーズ1世もふくまれていたが、対キリスト教国とは反対に、徹底的なこきおろし。見聞を深め、統治にいかすところもあったのだろうが、合計三度の外遊がすべて外債でまかなわれ、その返済に様々な国内利権が売り渡されたことは、著者は評価を保留するが、やはり政策的にはまずいと言わざるを得ないだろう。/武田雅哉「万里の長城を見に行った日本人」は明治の旅行記からみる、日本人と長城の出会い。ひいては、宇宙から見える建造物は万里の長城、という俗説が、中国人宇宙飛行士によって、中国国内で打ち砕かれたあとも、日本国内ではのんきに、宇宙から見える建造物は万里の長城というのがテレビ等でもまかりとおっていて、両国の関係を示唆するかのようだと結ばれる。田漢の抗日映画「風雲児女」のために作詞した主題歌「義勇軍行進曲」が今の中国国家とは知らなかった。/橋本雄「八重山諸島に漂着した朝鮮人」はとくに興味深い論考。与那国島-西表島-波照間島-新城島-黒島-多良間島-伊良部島-宮古島という石垣島を回避した迂回ルートに対しては決定打はないが、仮説は立てられる、と。マラリア蔓延説と島嶼間の流通ネットワークにのっていなかったからでは、と。朝鮮人の書き残した各島の生活記録も、当時の彼らの目には何が豊かさの基準になっていたか伺いしれて興味深い。瓦があるから豊か、とか。鳥や豚を食べたり食べなかったりとか。また経路については「一四七九年、金非衣ら済州島人漂流民の漂着地からの送還ルート」でつぶさに見れるとのこと。漂流民を送り届けた論理は、博多商人が、朝鮮王朝の対日貿易制限政策に、漂流民・俘虜送還という人道的名目で乗り込んで、風穴をあけようとしたことにある、とまとめられる。琉球王府が費用を持ち、パスポートも出してくれ、使節待遇まで与えてくれる機会であった、と。参考文献の、大田静男「夕凪の島-八重山歴史文化誌」みすず書房、2013,得能壽美「中山政権と宮古・八重山」『沖縄県史 各論編3 古琉球』沖縄県教育委員会、2010,新名一仁「三宅国秀・今岡通詮の琉球渡航計画をめぐる諸問題」『九州史学』144号、2006/萩尾俊明『泡盛の文化誌』ボーダーインク、2004あたりもあたってみたい。

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著者プロフィール

一九五七年生、北海道大学大学院文学研究科博士課程中退。現在、北海道大学大学院文学研究科・教授(宗教学インド哲学講座)。論文に“The simile of the leech (jal《a ̄》yuk《a ̄》) as sa《m・》s《a ̄》rin,” (Three mountains and seven rivers, Motilal Banarsidass Publishers, 2004), 「『雑阿含』道品念處相応」(『インド哲学仏教学論集』第二号、二〇一四年)。


「2015年 『旅と交流 旅からみた世界と歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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