淡水魚類地理の自然史―多様性と分化をめぐって

  • 北海道大学出版会
5.00
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 0
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832981928

作品紹介・あらすじ

●本書の特徴
 本書は4部14章からなる。
 第Ⅰ部では現在の分布を読み解くための基礎知識を概説する。第1章では,日本周辺の淡水魚類の分布パターンが,どのように記載・認識されてきたかを解説する。第2章では,地質学・古生物学の専門家が,とくに淡水魚類の分布域形成に関係しそうなイベントを抽出しつつ,日本列島の形成史をとりまとめ,わかりやすく解説する。第3章では,現在の生物地理学や進化学において欠くことのできない重要なツールとなった系統地理解析の原理と応用が概説される。
 第Ⅱ部では日本列島の淡水魚類相成立過程について,種内系統地理研究の先駆けとなった代表的な研究例を通して迫る。第4章・第5章では,5種類の冷帯性魚類が登場する。これらは生活史によって陸封魚や遡河回遊魚などに分けられる。水系間の隔離を強く反映した系統地理パターンを示す陸封魚ハナカジカ(第4章)や,逆に海洋生活により適応し大規模な分布域形成過程を反映した遡河回遊魚シロザケ(第5章)などを通して,冷帯性魚類の分布域形成史が描かれる。第6章では,シマドジョウにおけるmtDNA系統の地理的分布パターンの形成過程の考察と,mtDNA系統と種の系統についての大胆な仮説が提示される。第7章では,メダカの種内系統地理研究および近縁種間の系統解析が紹介される。本種で見いだされた精密な“系統地理マップ”は,今後さまざまな純淡水魚との比較の土台となるものだろう。第8章では,両側回遊魚アユのmtDNAの調節領域における不思議な分子進化パターンや,大規模なマイクロサテライト分析によって捉えられた微細な集団構造が紹介される。
 第III部では,系統地理パターンを検討するうえで,他種や倍数性集団を考慮しなければならない複雑な状況について取り上げる。第9章では,はじめに種間交雑を介したmtDNAの異種間浸透現象に関する総論が置かれ,つぎに日本産淡水魚における極端な異種間浸透の実例が解説される。さらに,本現象が起きる要因やその系統地理研究への影響などについて,遺伝的浮動と淘汰の両面から踏み込んだ議論が展開されたあと,まだまだ未解明な部分も多い核DNAの異種間浸透についても考察される。第10章では,私たちにも馴染みが深いフナの仲間,なかでも,雌性発生やクローン性といった特徴をもつギンブナにスポットが当てられる。本種の遺伝・育種学的研究史がわかりやすく紹介されるとともに,マイクロサテライトDNA分析によって判明した驚くべきクローンの実体を通して,分布域形成史や起源について興味深い考察が展開される。
 第Ⅳ部では淡水魚地理の総合的理解に向けて,さまざまな視点からの展望が語られる。第11章では,琉球列島から日本列島南部に分布する複数のハゼ類を対象とした比較系統地理分析の結果が紹介される。第12章では,日本列島における新生代の淡水魚化石とそれに基づく魚類相の変遷がとりまとめられ紹介される。第13章では,分布域形成が生態学的なプロセスであることにあらためて注意が向けられる。第14章では,21世紀初頭の私たちの立ち位置を明らかにしたうえで,今後の淡水魚地理研究の方向性や展開について具体的な提案が行われる。
 第一線で活躍している若手・中堅の研究者13名が,地域によって「顔が違う」淡水魚類の進化史について熱く語る。

著者プロフィール

:(独)中央水産研究所内水面研究部生態系保全研究室室長 博士(農学)


「2009年 『淡水魚類地理の自然史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北川忠生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×