人間学講話第1集 運命を創る (安岡正篤人間学講話)

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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833412650

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  • ”安岡正篤さんの昭和19?50年の講話・インタビュー録。新入社員、国会議員、経営者へ語った内容は、現代の僕らにも大いに響いてくる。本書のテーマである「立命」について「自分をリクリエートすること」という定義がすっと腹に落ちた。

    なお、2012年6月の人間塾のテーマ「見識・胆識を高め、器量人になるには?」「運命を創造変化させるには?」は、今後も考え実践につなげていきたい。


    <読書メモ>
    ★「命」は絶対的な働きであるけれども、その中には複雑きわまりない因果関係がある。その<b>因果律を探って、それによって因果の関係を操作して新しく運命を創造変化させてゆく</b>──これを<b>「立命」</b>という。(p1)

    ・私は後で湯将軍と仲よしになりまして(略)夜通しで話し合ったことがある。その時初めて彼が言いましたが、「(略)伊藤さんも宰相の桂さんも、鼠公使といわれた小男の小村さんを大男が抱えるように、つまり撃てぬようにして連れ込んだ。自分はそのことを感動を持って読んだことがある。それで土居さんやられるかも知れんと思って、わざと出迎え、抱えるようにして入った」のだと。(p15)
     #司令官 湯恩泊(とうおんぱく)氏が、上海で日本軍降伏使節 土居明夫 中将を出迎えたときのエピソード。

    ・この幕府を通ずる教学の力、それから田舎武士の力、それと武士の娘・武士の妻の力、この三つが明治維新を大いに成功せしめ、徳川の幕府政治を三世紀近く保ち、なおその遺徳によって明治の日本の建設に非常に貢献をしたということであります。(p24)
     #今の時代を立て直し、先の時代をよきものにするには、これら三つのような力が必要なのかな。

    ・中国という本来の名前は、黄河から揚子江までを言ったのであります。黄河以北、少なくとも長城以北はこれは中国ではありませんでした。(略)万里の長城というものは、その塞外民族が入ってこられないようにしたものでありまして、秦の始皇帝より前からのことです。塞外民族を征服しようとしたようなことはほとんどない。やむをえず防衛上征伐したのであります。(p33)

    ・3Rはアメリカの対日占領行政の基本原則、5Dは重点的思索、3Sは補助政策です。(p37)
     3R:Revenge,Reform,Revive
     5D:Disarmament,Demilitalization,Disindustrialization,Decentralization,Democratization
     3S:Sex,Screen,Sports
     #知らないことだらけ!

    ・兵学と申しますと、古来『孫子』『呉子』『韜略』(六韜三略)を申します。民間では「虎の巻」ともうします。虎の巻と申しますのは、『六韜』の中の一部でありますが、『六韜』の「韜」という字が面白いのです。(略)弓をしまっておく袋を韜ともうします。そこで、兵学では韜という字を重んじまして、つまり、
     「武器というものは用いざるをもって理想とする」
     という意味で韜という字を使ったのですから、東洋の軍人・政治家たちの思想が非常に人道的であっった、ということがこの一字でも分かるわけであります。(p42)

    ・これからの民主主義というものは、大衆の中からいかにエリート、すなわち英雄、このエリートを出して、これをいかに懸命に組織するか、これを有能に活用するかということだとはっきり出しております。(p.45)

    ・六然(p73-74)
     自処超然 自ら処すること超然
     処人藹然 人に処すること藹然(あいぜん) … 春になって四方の草木が生々と繁り、春の生意が溢れたのどかな風情に満ちるさま
     有事斬然 有事には斬然
     無事澄然 無事には澄然(ちょうぜん)
     得意澹然 得意には澹然(たんぜん)
     失意泰然 失意には泰然(たいぜん)

    ・どうなるか、これが運命であり、これをどうするかが立命です。(p.75)

    ★六中観(p75-81)
     忙中閑あり
     苦中楽あり
     死中活あり 
     壺中天あり ※どんな境地にあっても自分だけの内面世界はつくり得る。壺中(こちゅう)
     意中人あり ※何ごとによらず人材の用意があるということ。そういうふうになるのが人間の修養!
     腹中書あり ※わが腹中に哲学、信念、万巻の書がある?そうなっていないといけません。

    ・五計(p85-103) 無限に人生、人間というものが発展していく
     生計 ? 生きるはかりごと。肉体的・生理的にどう生きていくか
     身計 ? いかに自己を処するか
     家計 ? 人間教育の根本は家庭教育にあり
     老計 ? 人生の佳境を味わうための計りごと。老ゆる計りごと。
     死計 ? 生死を超越した死に方、生き方。いかに死ぬべきかという計りごと。不朽不滅に生きる。

    ・人間の人間たる所以は、愛と同時に「敬」というものにある。愛敬、敬愛、特に敬という心によって、初めて進歩向上をするのであります。愛だけでは甘やかされる。だらしがなくなるのです。(p95)

    ★修養して器量ができてくると、知識も見識となってくる。そういう器量人になりますと、だんだんその人独特の存在が意義づけられてくるわけであります。その人間の存在性・特殊性ができてくる。その内容が器量であります。そして活きた判断、活きた行動、活きた責任、活きた人生観、活きた政治観、活きた事業観となり、いろいろ人生百般の問題に、活眼を開いて応用が効くようになります。それが「器量人」であります。(p.107)
     #かくありたい!

    ・人生には我々個人の浅薄な思想や才力の及ばない大きな生命の流れ、大きな力の動きがありまして、それに我々がどう棹さすか、いかにそれに参与するかということによって、我々の実質的価値や成敗が決まるのです。(p.120)

    ・命名という以上は、もっとそこに絶対的な意味がなければならぬ。この子供にはこの名が一番いい、この名以外にはほかにつけようがない。この名の通りの人間になればいいのである、という確信をもってつける名前で初めて命名であります。(p123)

    ★だから命というものは絶対的な働きであるけれども、その中には複雑きわまりない因果関係がある。その因果律を探って、それによって因果の関係を動かして新しく運命を創造変化させていく、これが「道」というものであります。あるいは、命という字を使えばそれを「立命」という。この複雑な数(すう)を知ることは「知命」であります。命を知って、これによって我々が自分というものをリクリエートしていくのが立命であります。(p.125)
     #立命=自分をリクリエート!

    ・運命というものは学問によって限りなく知らるべきものであり、修業によって限りなく想像せられるものである。運命は天のなすものであるとともに、また自らつくるものである。(p132)
     #袁了凡の教え、雲谷禅師のことば より。

    ・あらゆる精神活動および性格が眉に現れている。眉は動かぬものだと思ったら、大いに動くのであります。三ヶ月に一ぺん生え変わる。睫毛でさえ三週間に一ぺんくらい生え変わる。そうして拡大鏡で見ると、眉の毛は始終盛んに活動している。だから、その人間の精神状態で伏せたり立ったり、あらゆることをやっていることがわかる。(p145)
     #眉毛を吝まず(おしまず)の意味 心臓、舌、眉、みな同一系!

    ・自己を益し、事業を益し、その間に自分ができていくと、今度は、自分がまた人をそういうふうに活かせることができる。(p.150)

    ・そこでその青年は「私ならば最も有効な広告ビラの撒き方をする。今までのようなやり方では何にも役に立たない。非常に無駄が多い。一つ私にやらしてくださるまいか」と掛け合ったところが、その店主は、その熱心と意見とに動かされて、そういう自信があるならひとつやってみたまえ、と言ってやらせてみることにした。
     (略)
     精神を、ある一つのことに集中すると、霊感や機智が生ずるもので、そうすると異常なことができるものであります。(p156)

    ・お奨めのできる書物の一つに、ヒルティのものがいろいろ出ております。(略)近代スイスの最も尊敬すべき、学者であり、実際家であり、経済家であります。このヒルティが「男子は、その仕事場で、女子は、その家庭で、働く様を見て本当にその人となりが分かる。男女共つらいこと、苦しいことに際して最もよく彼らを知ることができる。最も分からないのは社交の場である」と言っています。(p158-159)

    ・まず自ら問うてみることである、自己の修業のために何をしたかと。そして諸君が次第に進歩したならば、自分は祖国のために何をしたかと自問してみなさい。そして諸君は、ついに人類のために、また、その進歩のために、何らかの形で寄与したという自覚で、広大な幸福感に浸りうる時が必ず来るであろう(p162)

    ・「結局、社会の将来を決定するものは、その組織をどれほど完成に近づけるにあるのではなく、その組織に参ずる多数の者の個人的価値、また彼らが、それを以ていかに集団に参加し、その影響を受け、さらに影響を与えるかという働きにかかっている」
     とかつてマルクス主義哲学の権威者で、今は解脱して敬虔な宗教哲学者であるベルジャイエフが説いています。(p163)

    ・眠るということに二条件ありまして、それは熟睡ということと安眠ということであります。(p167)

    ★我々の心構えと努力の如何によっては、どんな小さなことでも、生涯の仕事とするに足りる。(p173)

    ・感情の働き方から人を観察してみますと、その人物が実によく解るものであります。(略)その意味で人を観察試験する「六験」(呂氏春秋にある)を紹介します。(p182)
     一、之を喜ばしめて、以てその守を験す。
     二、…

    ・自己というものを本当に仕事に打ち込んでいく、そうすると、自分の対象である仕事は、自己と一つになることによって精神化される、すなわち対象に魂を入れる?これが「対心一処」
    であります。(p192)

    ★どうして精神をざっぱくにしないか、分裂させないか、沈滞させないかというと、無数に古人の教えもありますが、私はこういう三つのことを心がけております。(p210-211)
     一、心中常に喜神を含むこと。
     二、心中絶えず感謝の念を含むこと。
     三、常に陰徳を志すこと。

    ・読書人は脾胃を丈夫にしなければならない。そうしないと記憶が減退する。
     (略)脾胃は黄色と関係がある。(p224-225)
     #緑黄色野菜!? 食べねば!

    ・重役が小事を自分でして、部下に回すことができないから、部下の者が自然ともたれて、重役が忙しくなるのである(p229)
     #どきっ!重役心得箇条より。

    ・身体精密箇条(p237-238)
     ♯特に、六と十!

     
    <きっかけ>
    ・2012年6月の人間塾課題図書として。”

  • 多くの政治家や企業経営者が師と仰ぐ人物の著書であり、一度読んでみたいと思い購入。終戦の大詔に朱筆を入れた人物とは知らなかった。サブタイトルにあるように「人間学講話」集であり、古くから大切にされている原理原則、心得が解説されている。とても肚落ちする内容で特に兵法の部分は企業経営にも必須と再認識。

  • 賛否両論はあると思います。
    僕は大好きです。

  • 「学問したい」と考えぬ者はないでしょう。しかるに、その多くの人々は、学問することは学校に入るか、学校でやっているのと同じことをせねば学問でないように考えています。大きに間違いです。学問にも修業の学問と学校の学問とあります。学校の学問は、今日のような方法では一向修養の役には立ちません。(P.109 「人間学・人生学の書」より)ははぁ~、まったくもって勉強不足でした…。反省。

  • 安岡 正篤先生の講演録。
    内容は、生き方、勉強の仕方、健康など幅広い。
    中でも印象深かったのが、感情が身体に与える影響についての科学的実験について。今もあまり怒りや憎しみは感じない生活を送っているが、今以上に平常心を心がけようと思った。また、昔から「哺乳類の肉は殺される時の毒素が...」と言われているので、お肉を食べるのがちょっと怖くなった。
    健康についても、今まで以上に「生計」に気をつけようと思った。

  • 人間力を深く考えさせられる本。この世に生を受けたことの真の意義を考え、死後になお精神が生きるような生き方をしたい。松下侯の考え方にも似ている。深く共感した。

  •  
    ── 安岡 正篤《運命を創る(人間学講話)198511‥ プレジデント社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4833412659
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19831213 耳よりの使者 ~ 細木誤録 ~
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20081111 誤録&諸辞苑 ~ 云いたがえの研究 ~
     
    …… 日本を全く骨抜きにするこの3R・5D・3S政策を、日本人はむしろ
    喜んで、これに応じ、これに迎合した、あるいは、これに乗じて野心家
    が輩出してきた。日教組というものがその代表的なものであります。
    そのほか悪質な労働組合、それから言論機関の頽廃、こういったものは
    皆、この政策から生まれたわけであります。(20150331 新装版)
     
    ── 安岡 正篤《運命を創る ~ 人間学講話 19851210‥ プレジデント社》P39
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4833421259
     
    (20100906)(20210321)
     

  • 87年20刷本

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著者プロフィール

明治31年大阪市に生まれる。
大正11年に東京帝国大学法学部政治学科を卒業
昭和2年に金鶏学院を設立。
陽明学者、東洋思想家。
終戦の詔の起草者の一人。
昭和58年死去

著書
『易學入門』『全訳 為政三部書』『東洋思想と人物』『暁鐘』『王陽明研究』『陽明学十講』『朝の論語』『東洋学発掘』『新編 経世瑣言』『新憂楽志』『老荘思想』『古典を読む』『人物・学問』『光明蔵』『政治と改革』『古典のことば』『この国を思う』『儒教と老荘』『旅とこころ』『王陽明と朱子』『人間維新Ⅲ』『憂楽秘帖』『明治の風韻』『天子論及び官吏論』(明徳出版社)

「2000年 『人間維新 III』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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