ももいろのきりん (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 167
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  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834000443

感想・レビュー・書評

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  • 「中川李枝子」さんの物語と、その夫の「中川宗弥」さんの絵による、1965年の本書は、のっけから
    「あたしったら、ももいろのゆうやけの上にいるんだわ」といった、型に縛られない始まり方が、私には新鮮だった。

    それは、「るるこ」のおかあさんからもらった、部屋いっぱいになる程の、大きな桃色の紙によるもので、「このかみでなら、うんとくびのながい大きなきりんがつくれるわ」と、早速るるこは作り始めるが、その制作風景は、巨大なアートパフォーマンスを見ているようで面白く、また、宗弥さんの絵は、既に大人のアンニュイな雰囲気を纏ったような色の無い分、着飾らない自然さが魅力の、るること、如何にも子どもが描きました的な、シンプルで愛らしい桃色のきりん、「キリカ」との対照性が目にも映え、まるでセンスの良い女性雑誌のデザインのようで面白い(白黒と桃色しか存在しない世界)。

    そして、ついに完成したキリカには、紙が話したり動いたりできるファンタジー感と、紙の特性を活かした現実感(糊が乾くまでぐにゃぐにゃして動けなかったり、雨に濡れると色が落ちてしまったり)とが、ほどよく混在した、子どもにとって、大変惹き付けられるものがあり、しばらくは二人で楽しんでいたが、あるとき、キリカの首に登って見えた、クレヨンの木のある山が気になって、そこから一気に、本書の世界も一面に様々な色が、鮮やかに咲き誇るようになる。

    しかし、ここでの宗弥さんの絵は、ものを忠実に眺めて細かく写生した感じというよりも、どこか抽象的に近い、イメージ優先で大雑把に描いた感じで、それはキリカの絵のように、子どもが描いたような無垢な印象を持つ一方で、レモン色の猿のいる木の芸術性を感じさせる美しさもあって、はたして、これらの雰囲気を、今の子どもたちがどう捉えるのだろうと気になってしまう時代性は、正直なところ、少々感じられた。

    ただ、それでも、クレヨンの木のある山に住む、これまた型に縛られない色を持った動物たちは、とても印象に残り、上記のレモン色の猿しかり、他にも、空色のうさぎ、ぶどう色のりす、クリーム色のきつねに、チョコレート色のひつじ、赤いリボンのようなへび等々、どれも個性的であり、彼等が、いつの間にか色の付いたるること一緒に踊り回る姿には、まるで、それぞれのアイデンティティを高らかに主張しているような、そんな自由奔放で平和な世界の一面を見せてくれて、そこに、長年保育士をされていた李枝子さんの人柄と、この絵本を作った意義を感じさせられたのが、とても印象的でした。

    • たださん
      ロニコさん

      更なる返信をありがとうございます(^^)

      昔話だなんて、気になさらないで下さい。私も卒園アルバム70年代ですから(^∇^)
      ...
      ロニコさん

      更なる返信をありがとうございます(^^)

      昔話だなんて、気になさらないで下さい。私も卒園アルバム70年代ですから(^∇^)
      それから、そこに載っているキリカ見てみたいですね。

      古田足日さん、お名前だけでは分からなかったのですが、『おしいれのぼうけん』で「ああ!」と気付きました。あの絵本の作者なのですね。未読ですが(^^;)

      それから、いぬいとみこさんの、『ながいながいペンギンの話』、調べてみたら1957年の作品なのですね。是非、古田足日さんと併せて読みたいと思います。ご紹介、ありがとうございます(^^)

      私の感想、読んで下さっていること、とても嬉しいですし、選書の参考だなんて、大した語彙も知らない私には恐縮ですが、学校司書のロニコさんに、そう仰っていただき、とても光栄です。

      私もロニコさんのレビューは、いつも楽しみにしており、その一歩引いた視点に、作品の真の姿を紹介したい思いが感じられるようで、とても印象的です。
      お仕事も大変かと思いますので、私はいつも気長に待ってますよ(^_^)
      2023/06/22
    • ゆーき本さん
      はじめまして こんばんは( .ˬ.)"

      たださんの本棚を拝見していたら「ロボットカミイ」を見つけて もしかして「ももいろのきりん」もあるの...
      はじめまして こんばんは( .ˬ.)"

      たださんの本棚を拝見していたら「ロボットカミイ」を見つけて もしかして「ももいろのきりん」もあるのでは?!と遡っていたら 見つけました〜!

      実はわたしも幼稚園の先生の読み聞かせで「ももいろのきりん」と「ロボットカミイ」に出会いました。
      「ももいろのきりん」はそれからずっと大好きで
      小学生になった時に初めて自分から親にねだって買ってもらった本です。こんなに長い本を自分で読み切った!という感動を今でも覚えています。

      わたしの幼稚園は 卒園アルバムの表紙を自分で切り絵を使って作るんですが、わたしのアルバムには【ももいろをしたきりんらしきもの】(笑)が貼り付けてあります*ˊᵕˋ*

      最近 もう一度読み返したいなぁと思って図書館で探しましたが見つからず( •̥ •̥ ) だったので ここで出会えてなんか嬉しかったです!

      あぁ〜!部屋いっぱいの大きな桃色の紙!
      ももいろのクレヨンでハゲた部分を塗りなおす!
      なんて素敵なんだ!!やってみたい!!
      2023/09/22
    • たださん
      ゆーき本さん、はじめまして。
      おはようございます(^_^)
      コメントをありがとうございます。

      今の年になってから、絵本や児童書の面白さに目...
      ゆーき本さん、はじめまして。
      おはようございます(^_^)
      コメントをありがとうございます。

      今の年になってから、絵本や児童書の面白さに目覚めた、私にとって、「ロボットカミイ」と、「ももいろのきりん」が、これだけ幼稚園や保育園で取り上げられている事を知るのは、当時の良質な作品として認められていた証にも思えますし、ゆーき本さんが、初めて買ってもらって自分で読み切ったという、素敵な想い出に関わる事が出来て、とても嬉しく思います。

      しかも、卒園アルバムの切り絵が、ももいろのきりんなのも、相当の思い入れがあったからではないでしょうか。そうした一つのものに、ずっと愛着を持ち続ける子どもの姿には、何故か涙を誘われるものがあります。

      私も幼稚園だったのですが、恥ずかしながら、読んでもらった絵本を覚えておらず・・卒園アルバムの表紙の絵が、滑り台等の遊具で遊ぶ子どもだから、もしかしたら、「ぐるんぱのようちえん」かもしれません。

      そうですね。あの導入部は、私にはとても画期的で型破りな始まり方に思えまして、児童書に決まった枠や縛りなんかない、その自由さに惹かれました。今でも、あれだけ部屋いっぱいのももいろのきりんを作ったら、きっと子どもたち大喜びすると思いますし、達成感ありそうですよね(^-^)
      2023/09/23
  • 子どもの頃からのお気に入り。キリン大好き

  • お母さんにもらった、とてもおおきいももいろのかみできりんをかいた
    目や口も書くとそのキリンは喋り出し動き出す
    雨のせいで色褪せてしまいクレヨンの木を目指すことにするが…。
    色々な動物が出てきてとても色鮮やか

  • 越高綾乃さん紹介

  • 子供の頃、ずーっと欲しかった本。
    やっと自分で買いましたー☺️

  • 実家の整理をしていて出てきました。
    全く内容を覚えていなかったのですが、読み返しているうちに、子どもの頃読んだ時の感覚が蘇ってきました。クレヨンの木のカラフルな挿絵だったり、キリカを洗濯バサミで干して乾かしてあげるところなど、なんとなく惹かれる感覚がそのまま湧き上がりました。
    長いですが、大人にも読み応えのある一冊でした。

    • あきちさん
      私も、子供の頃から、好きな本です。挿絵がカラフルで、ストーリーも、想像力をかき立てられて、大人も楽しめますよね。
      私も、子供の頃から、好きな本です。挿絵がカラフルで、ストーリーも、想像力をかき立てられて、大人も楽しめますよね。
      2022/08/18
  • 主人公るるこがキリンのキリカと遊ぶお話。こういう非現実的な設定では夢落ちだったり、キリカが元に戻ってしまったり、といった現実に戻る筋を思い浮かべるのだけれど、そんな予想は見事に外れてよかった!作者はキチンと子どもの心に寄り添ってくれている。

    るるこの設定は、まるで女王様のようで、また勇ましいヒロインのようで、幼い少女の希望がすべて詰まっている、という感じ。思い通りに突き進む主人公は幼い心にインパクト大だろう。

    さて、この色はピンクではなくて「ももいろ」。少し色あせたキリカが洗濯ばさみで干されているシーンは最高!これを読んで、久々にクレヨンで絵を描いてみたくなった。

  • 子どもの想像の世界をそのまんまお話にしたような、とっても子どもらしい作品で楽しかったです。
    私も小さな頃に絵を描きながら、折り紙をしながら色々想像の世界をふくらませたなと、懐かしい気持ちになりました。

  • 基本図書のようなので、読んだ。

    るるこは、お母さんからもらった、とても大きなももいろの紙で、ももいろのきりん・キリ力をつくる。
    キリカは、世界一くびが長く、世界一強く、世界一走るのが速く、世界一きれい、何から何まで世界一!
    色とりどりの動物たちと一緒に、色がはげてしまったからだを塗り直すため、バナナのようなクレヨンがなるという木のある、クレヨン山へ向かう。

    キリ力がかっこよくて優しい。
    初恋譚にしてしまいたい。
    唐突にお母さんが大きなももいろの紙をくれて話がはじまり、人間はるるこしか出てこないあたり、さすが。
    動物に色の制約がないのは子どもの発想だよなぁ、と、カラフルな動物たちをみていて、いいなぁと思う。
    子どもは、こういう世界に親しめることが、ほんとうに大切で貴重な経験。
    おはなしを忘れてしまっても、そのときに感じた気持ちは、心のどこかに残っているんじゃないかな。
    るるこが、ももいろのきりんのために、クレヨン山のまほうのがようしを使ったのが、自然ですてきだ。

  • 私の恋愛の原点(な気がする)

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著者プロフィール

中川李枝子 札幌に生まれる。東京都立高等保母学院を卒業後、保母として働くかたわら、児童文学グループ<いたどり>の同人として創作活動を続けた。1962年に出版された童話『いやいやえん』(福音館書店)は、厚生大臣賞、NHK児童文学奨励賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞推奨作品賞を受賞した。主な著書に、童話『ももいろのきりん』『かえるのエルタ』、絵本には『そらいろのたね』『はじめてのゆき』「ぐりとぐら」のシリーズなど、多数ある。東京在住。

「2022年 『ぐりとぐらカレンダー2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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