シルバー・レイクの岸辺で―インガルス一家の物語〈4〉 (世界傑作童話シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834003932

感想・レビュー・書評

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  • シリーズの魅力は、ローラの勇気=フロンティア精神と開拓農家の生活の活き活きした描写。表現力の淵源は姉への口頭描写によるもの。
    北アメリカ大陸は1492以前、千数百万人が暮らしていたが、白人の持ち込んだ伝染病で20分の1以下となった。そのお返しに家畜の伝染病だった梅毒がヨーロッパからアジア東端の日本に伝わるまで20年かからず、性倫理は一変した。
    前巻も本巻も製材した材木で家を建てた、製材機は森林資源を大量に浪費する。旅行鳩絶滅や竜巻やイナゴの大量発生は白人が生態系に干渉した結果だが、「バッファローは、インディアンの家畜だったので白人がぜんぶ殺してしまったのです」
    大陸横断鉄道建設時代。ハイおじさんは「夏じゅう骨身を惜しまず働いて生活も切り詰めていたのに…仕事が終わってみると会社は、貸し越しになっていると…それで次の契約をしろって」
    しかし、今回、仕事が終わったあと、もてるだけの資材を持っていく。父さんは「俺は持って行った資材の代金を貸し越しと記録するだけだ。前回は会社がだました。奴はその仕返しをしただけさ」
    鉄道会社のことをRober Barons というから、あくどいことえげつないこともしたのだろう。

  • プラムクリークを離れたインガルス一家は、鉄道工事現場で働きながら、新しい農地を探し始める。
    メアリーの失明、愛犬ジャックの死という波乱の幕開け。荒くれ男たちが働く鉄道場での暮らしは、一家に、それまでにはなかったたぐいの危険をもたらすことになる。
    けれどそんな土地にも、ローラの心をふるわすものはいくらでもあった。壮大な夜明け、鉄道工夫たちの働きぶり、湖のオオカミ…。ローラはいつも、「今」を全身で感じている。
    ローラはまた、失明したメアリーの目のかわりを果たすようになる。目に映るものすべてをメアリーに教えるローラ。見たものを言葉に置きかえていくこの作業は、後年ローラが文章を書く礎となったに違いない。
    本書中、インガルス一家はいくつもの幸運な出会いに恵まれる。そのひとつはなんとアルマンゾとの出会い!(といってもすれ違っただけだし、ローラの目はアルマンゾの馬に釘付けだが…。)ぜひ続きを読まなければ。なぜ福音館は5冊しか出さなかったのか。

  • 前作から何年も経ったところから始まる。いろいろあったのだろうな…メアリイのことは読んでるこっちもショックで本当に悲しかった。ずっと一緒だったジャックも亡くなり、悲しみとともに突然物語が動き出したね…
    とうさん新しい仕事があってよかった。引越しはたいへんだけど、ついに落ち着ける土地に移れて安堵。家が建つまでにはもうちょっとかかりそうだけど、かあさんのおいしいお料理を食べて、元気に暮らしていけそうだ。ローラえらいよ。最後のほうにアルマンゾの名前がちらっと。みんなの幸せを願うよ。

  • 作者のローラ・インガルス・ワイルダーが、その少女時代を振り返り、その経験を、そっくりそのまま、再現してみせてくれている。
    アメリカ西部の開拓時代、鉄道敷設現場の事務職を手にいれたお父さん、それを支え家を守るお母さん。新しく払い下げの土地を苦労して申請する様子や、家も自分で建ててしまうお父さんの逞しさと、常に愚痴っぽいながらも精一杯お父さんに協力し、子どもたちの教育やしつけに気を配るお母さんなりの愛情が絶妙なバランスです。
    そして、家族そろって居心地のいい家で過ごす幸せを、お父さんのバイオリンに合わせてみんなで歌を歌う場面が象徴しています。

  •  ローラ13歳。ローラととうさん以外のみんなが猩紅熱にやられメアリイは失明。どん底の一家を訪ねてきたのは,キャロラインの物語ではまだ小さかった,大きな森のカエデ蜜ダンスの時は素敵な服でお洒落をしていたドーシア。大きな別れを経験し,一家は西部へ旅立つ。
     シルバー・レイクの岸辺はとうさんとかあさんの最後の地だが,ローラととうさんは本当は西部へ行きたくて仕方がない。ヘンリイおじさんとポリィおばさん,いとこのチャーリーとルイザの家族はウィスコンシンの農場を売って春になったら幌馬車でモンタナへ向かうし,ドーシアおばさんとハイおじさんとレナとジーンは行き先もわからない西部へ旅立ってゆく。ただ,遠い日のとうさんとかあさんの約束が,一家をサウス・ダコタに留まらせる。ローラが教師の職に就くことを否応ながらも決意するのもこの頃。キャロラインが娘たちに学問をさせるために西部へ行くことを拒否するのは,彼女の生い立ちを考えると当然のことのように思われる。だが,キャロラインが心から教師の職に就きたかったのに対しローラは違うので,ローラがどれほど苦しかったかもわかる。メアリイを大学にという目標ができてよかった。
     一家は鉄道の工事場で働いていたボーストさんと知り合いになる。とうさんはエドワーズさんとも再会する。
     北米のこのあたりでは,「西へ三度緯度がかわるのは、南へ一度と同じ」と言うらしい。
     鳥たちもバッファローもインディアンもいなくなったダコタ・テリトリーに新しくできる町,ドゥ・スメットの最初の入植者として一家は開拓農地の小屋に落ち着く。

  • ジャック泣いた……ジャック……
    キャリーが大きくなってて、グレイスが産まれていて、なんだか急展開
    文明開化の音がするアメリカ大陸だったーー

  • 冒頭で、メアリーはしょうこう熱で失明したという説明がある(家族全員しょうこう熱にかかったとのこと)。末の妹グレイスが生まれて四人姉妹になってる。
    ジャックが死ぬ場面では大泣きしてしまった(これまでの作品でジャックがどんなにいい犬か、わたしもよく知っているからね)。

    とうさんは鉄道敷設の仕事を得て、サウス・ダコタへ行き、一家は仕事場を点々と移り住み、工夫たちが去った誰もいないシルバー・レイクでひと冬を過ごす。

    オルデン牧師が教会を建てる準備をするためにやってきて、メアリイに盲学校(大学)の存在を教える。そうか、オルデン牧師からこの素晴らしい情報を得るのだね。
    「神は愛する者をこそ試したもう、ということを忘れてはなりません。そして、勇気ある精神は、あらうる苦難を、かえって善きこととするということも。あなたがたが知っておられるかどうかわかりませんが、盲目者のための大学が何校かありますよ」(p.293-294)

    春にようやく払い下げ農地を手に入れ、一家にも落ち着いて暮らせる家ができる。
    この土地申請をするのにとうさんは熾烈な競争に勝ち抜かなければならなかった。生きることは戦いだなと改めて思う。
    「なに、人生はすべて、多かれ少なかれ、みんな賭さ、キャロライン。死ぬことと税金以外、まちがいなくくるものは、ありゃしないよ」(p.321)と、とうさんが言う通りだと思うのです。

    後半、とうさんがバイオリンを弾き、家族みんなで歌う場面が多くなる。
    苦しいときも、悲しいときも、うれしいときも、音楽とともにあるんだな。

    「音楽がほしいな、ローラ」(p.355)
    と、とうさんがいうと、ローラはバイオリンをとりにいく。
    「音楽がほしいな」というとき、今のわたしたちみたいに「音楽をかける」のではないのだ、とハッとした場面。
    それは、みずから音楽を奏でること、歌うことにほかならないんだな。

  • 貧乏だし、不便だし、メアリーは病気で目が見えないし。現代の自分から見るといいことない家族なんだけど。

    いきいきしているローラを読んでいると、便利なのも考え物なのかなーと思ってみもみたり。

    好奇心旺盛でつらいことがあっても乗り越えていくなローラの気丈さに救われる。

  • 波乱に富んだ日々の後、静かな安らぎを迎える一家の姿が静かに物語られてゆきます。そして一歩、大人に近づいたローラの姿も。私たちが失っていけないものを正確に示しながら……。

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著者プロフィール

1867年、アメリカ北部のウィスコンシン州に生まれる。1932年、西部開拓時代の体験をもとにした自伝的小説、『大きな森の小さな家』を発表。『大草原の小さな家』『プラム・クリークの土手で』などとあわせ、「小さな家シリーズ」として世界中で読まれてきた。テレビドラマの「大草原の小さな家」は、このシリーズをもとにしている。1957年、90歳で亡くなる。



「2017年 『小さな家のローラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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