こすずめのぼうけん (こどものとも傑作集)

  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834005264

感想・レビュー・書評

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  •  表紙と裏表紙の繋がった、どこまでも果てしなく広い大空を、気持ち良さそうに飛ぶ、こすずめは、とても自信に満ち溢れた表情に見えるけれど・・。

     ルース・エインズワースの作品は、クリスマス絵本特集で読んだ『ちいさなろば』以来だが、本書(1976年)でも彼女自身の人柄を窺わせるような、動物に向けた優しい眼差しは変わらず、それを通して感じられた大切なことは、人に対しても当て嵌まると思い、本書の場合は親子愛の素晴らしさである。


     最初の見開きの、こすずめの翼をパタパタさせる仕種も可愛らしい中、いよいよ、おかあさんすずめが飛び方を教えるところから物語は始まり、早速、言われた通りに、こすずめが前へ飛び立つと・・・おっ! 地面に落ちずにちゃんと空中に浮かんでいる、その姿を見ているだけで、なんだか熱いものがこみ上げてきそうだ。

     しかし、ここで、こすずめは、おかあさんの言い付けを守らず、もっと遠くまで行けると、一人でどんどん先へ飛んで行ってしまうという、この子どもならではの冒険心、分かるけど、大丈夫かな?

     そうしたら、案の定、最初こそ面白く感じていたのが、次第に羽根や頭が痛くなってきてしまった、こすずめは、どこかで休まなければならなくなり、飛んで行く先々で見つけた巣を、いくつも訪ねるのだが・・・。


     本書の絵は、『ぐるんぱのようちえん』でお馴染みの堀内誠一さんで、ここでは鉛筆と水彩によって、自然の景色を素朴に淡く描いた、さり気ない美しさのある中に於いて、どれだけ巣を訪ねても休むことの出来ない、こすずめの焦燥感と時間の経過が同時進行しているのが印象深く、こすずめが今度こそはと思っている気持ちに反して、日はどんどん暮れてゆく一方で、その素朴な美しさを夕焼けが包み込む場面には、もの寂しさが漂い、やがては夜が訪れようとしている場面に於いては、更に孤独感まで加わったようで、思わず、こすずめの気持ちを慮ってしまう。

     しかし、そんな辛い状況にあっても、こすずめは健気に、「ぼく、あなたの なかまでしょうか?」と問い掛けるのを諦めず、ここに来て改めて、「ぼく、ちゅん、ちゅん、ちゅんってきり いえないんですけど」の言葉の、今度も無理かなと内心感じさせる重さには、どうしようも無い、やるせなさもあるようで、心なしか、それを言うこすずめの目には涙が浮かんでいるようにも見えたが、それでも、そこで待っていたのは、ちょっとクスッとさせられながらも泣かされた、泣き笑いのような安堵感に、私もホッと胸をなで下ろす。

     そして、その後の見開きに於いて、元々は、こすずめがおかあさんの言い付けを守らなかったことがあるのだけれども、それくらいでは決して変わらぬ、おかあさんの子どもを想う愛の深さが、そこには確かに存在し、それは最後の見開きで、こすずめを見つめる、おかあさんの優しい表情にもよく表れており、そんな堀内さんの絵には、文章と共に見ることで、より親子の気持ちに感情移入出来るものがあって、それは絵本ならではの素晴らしさであると共に、絵本ならではの楽しさでもあると感じられたのは、石井桃子さんの上品で優しい言葉遣いの訳も同様であった。

    • 傍らに珈琲を。さん
      たださん、初めまして。
      沢山のいいねとフォローを有難う御座います!
      バタバタしており、お声掛けが本日になってしまいました。
      素敵な本棚ですね...
      たださん、初めまして。
      沢山のいいねとフォローを有難う御座います!
      バタバタしており、お声掛けが本日になってしまいました。
      素敵な本棚ですね、絵本の博物館みたいでワクワクします。
      私もフォローさせて頂いております。
      当方、マイペースですし、長文レビューが多いのですが(汗)、どうぞ宜しくお願いします♪
      2024/01/04
    • たださん
      傍らに珈琲を。さん、初めまして。
      こちらこそ、いいねとフォローをありがとうございます(^_^)

      また、絵本の博物館なんて、嬉しいお言葉を、...
      傍らに珈琲を。さん、初めまして。
      こちらこそ、いいねとフォローをありがとうございます(^_^)

      また、絵本の博物館なんて、嬉しいお言葉を、ありがとうございます!
      私の中では、まだまだ読んでいるものが偏っていると認識しているので、今年はもっと広く読んでいければなと思っております。

      それから、傍らに珈琲を。さんのレビューですが、一つの作品を深く掘り下げている事に
      、とても驚きまして、凄いなあと尊敬致します。
      また、小説に限らず、歌集等も読まれている、その幅の広さにも大きな魅力を感じました。

      私の方から、ご挨拶出来れば良かったのですが、人見知りの為、このような優しいコメントを下さり、ありがとうございます(^-^)
      それから、マイペースも長文レビューも気になりませんし(私も、どちらかというと長文になりがちなので)、寧ろ、それがその方の個性であったり、それだけ、一つの作品にじっくりと取り組むような姿勢を感じさせられる点に、好感を抱かせるものがあると思います。

      こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします♪
      2024/01/04
  • 2023.5.18 1-1

    何故でしょう、図書館でハングル版を予約してしまった。
    読めないので改めて日本語版を借りた訳ですが、このスズメちゃんの可愛らしいこと。
    冒険に出たはいいけど帰れなくなっちゃって無事に帰れるのかと子ども達もドキドキしたみたい。
    ドキドキしながら最後無事にお家に帰れてあー良かったとホッと一息。
    こんなに子ども達の心を引き込んだ絵本久しぶりだったな。
    8分くらい

  • 素話にもあるけれど、絵本の方も良く出来ている。
    飛び方を教わって飛んでみたら、思いがけず上手く飛べたので、
    そのまま冒険に出てしまうこすずめ。
    でもすぐに疲れてしまって、休める場所を探し出す。
    ところが、同じすずめの仲間に出会えなくてなかなか休めない。
    新しい巣を見つけるたびに交渉するこすずめが、なんだか哀れになってくる。
    だんだん心配になってきて、聞いていて心細くなる展開だ。
    最後にちゃんとお母さんに出会えて、おんぶまでしてもらって帰れる。
    さんざん遊んだ後でもやさしくおんぶしてもらえるなんて、親子っていいなぁ。
    親は、子どもに永遠に片思いなのだね。人間もすずめも。
    石井桃子さんの日本語訳は、流れるように綺麗で分かりやすい。
    絵本のテキストが素話にも向くなんて、とても珍しいこと。
    音読でも不自然さがないように研究しつくされているのだ。
    約8分。幼児から。
    こすずめと会えた時のお母さんの声が怖くならないように、
    優しく微笑みながら読んでね。

  • こすずめがさいしょからとべたのがびっくりした!

  • 中古購入
    海外の絵本
    読み聞かせは4才
    小学校初級向き

    わぁかわいい!と思ったら堀内誠一さん
    こすずめ以外はリアルなタッチで
    鳥たちの巣のこともわかり
    子どももどんどん引き込まれていた
    スズメの親子の仕草が
    細かく描写されているので
    挿絵もとても愛らしい
    もともとスズメが好きなので
    これはたまらない

  • 繰り返し、そして、安心。

  • はじめて飛び立ったスズメの子が、疲れてよその鳥の巣で休ませて欲しいと頼むが、鳴き声が違うからと断られ続け、夕方になってもう飛ぶ事も出来なくなり、「ぼく、ちゅんちゅんってしかなけないんです。」と言うと、お母さんだった。というホッとするお話。1年生を見ていると、本当に毎日がチャレンジと冒険なんだろうな。と思う。3年生くらいまで、見入って静かに聞いていた。(7分)

  • 初めて飛ぶことに成功したこすずめが、調子にのって遠くまで大冒険をする物語です。
    すずめの瞳がくりっとしていてとても可愛らしいです。
    「ちゅんちゅん」としか鳴けないので、疲れても他の鳥の所では休ませてもらえないところはかわいそうでした。
    母親すずめ視点を考えると、また違った見方ができそうです。

  • 小さい頃よくこの本を両親に読んでもらっていたのを覚えています。お母さんを探して勇敢に冒険を繰り広げるこすずめにいつも勇気をもらっていました!

  • こすずめを年齢的に何歳と見なすか。
    4歳児あたりとして読み進めると、「かわいい~、がんばってる~」
    お母さんに会えてよかったね。ホロリ。

    16歳あたりとして読み進めると、
    何度断られても、がんばって面接しに(違)行く姿にホロリ。
    疲れても家に帰ろうとはこれっぽっちも思っていないその自立心。
    でも結局におかあさんに連れ戻される。ああ家出した未成年ー。

    いや、こんな話ちゃうから!

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著者プロフィール

ルース・エインズワース イギリス、マンチェスターに生まれた。子どものために二冊の詩集を出版。後に、BBCラジオ番組“Listen With Mother"のために、いくつかの物語を書いた。主な作品に『こすずめのぼうけん』『ちいさな ろば』『黒ねこのおきゃくさま』『ふしぎなロシア人形バーバ』(以上、福音館書店)、作品集に『ねこのお客―かめのシェルオーバーのお話1』『魔女のおくりもの―かめのシェルオーバーのお話2』(河本祥子訳・絵/ともに岩波書店)などがある。

「2021年 『こねこのウィンクルとクリスマスツリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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