- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834007893
感想・レビュー・書評
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怖いお話と笑っちゃうお話と、どっちがいい?なんて聞こうものなら「怖いのがいい!!怖いのがいい!!」と、全身でねだるのが子どもというもの。
もう涙目になって必死の懇願。
なんでそこまで怖がりたいのか。
自身の子ども時代をこれを読んで思い出していただきたい。
正体不明のものというのは怖いもので、そこが想像力を刺激するのかも。
簡潔な筋運びとたくさんの擬声語で、おおいに怖がってくれるだろう。うっふっふ。
美しいはずの女房の、長い髪の毛をぱかっと開くと口が現れる。
夫がいない間、その口にせっせと握り飯を作っては放り込んでいたのだ。蔵の白米がどんどんなくなるのを怪しんだ夫は、こっそり天井に隠れて見張っていたのだが、その描写のまぁ怖いこと怖いこと。
しかし、このあと話はもっと怖くなる。
ぞくっとする前半と、スピード感のある後半。
そこはかとないユーモアもあり、特に赤羽末吉さんの挿絵が素晴らしい。
この女房、正体は「おにばば」だが、外国だったらさしずめ魔女か吸血鬼だろうか。
菖蒲とよもぎが大切なキーワードであり、それが五月の節句の由来にもなっている。
でも、子どもの日にこれを読まれたら、すごい夢を見てしまうよね(笑)
約8分。読んであげるなら4歳くらいから。
怖がらせるのが目的ではないので、あっさりと読んでね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵を見ただけで、重たい走り、「びゅんびゅん」走り、「ぶーんぶーん」走りのどれなのかわかっちゃう!
ちょっぴり怖いけどおもしろい、昔話絵本。
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欲張りな男が、「飯も食わず、よく働く嫁がほしい」と言っていたら、なんとその通りの、うつくしい嫁さんが「女房にしてけれ」と嫁いできた。
「しめしめ…。飯の食わぬ嫁だから、これからは米がたんと貯まるぞ」と欲張り男はニンマリしていたが、はてさて不思議なことに、いっこうに米は貯まらず、減る一方。
女房か怪しいとふんだ欲張り男は、こっそりと昼間の女房の様子をのぞき見することにした。
するとそこにいたのは女房、ではなく…
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ほどよい分量の方言で、声に出して読み聞かせするのが、とても気持ちいい文章でした。
小2の娘も、補足なしで話の筋を理解できました。
飯も食わずによく働く美しい女房は、いわゆる鬼婆だったわけですが、その正体が判明し、第2の口をバカッと開けてバクバクにぎり飯を食べる姿は、娘いわく「きもっ」だそうです(苦笑)
また、正体を知った欲張り男を、たらいおけに入れて連れ去る鬼婆の走り方のちがいが、言葉だけでなく絵でわかります。
重たい走りは、鬼婆の姿はハッキリ描かれ、ゆっくり進んでいる様子がよくわかります。
ところが「びゅうびゅうはしって」(23ページ)と書かれているときは、鬼婆の輪郭線はとても細くなり、からだも平べったく描かれます。
そして「ぶーんぶーんはしりだした」(27ページ)ときの鬼婆は、怒りの風を身にまとい、顔の輪郭もシャープに、着物の柄も見えぬほどの姿であらわされています。
文章と絵がまさに一体となって、鬼婆の走り方、そしてそのときの感情までもをあらわしていることのすごさに脱帽です。
後半は菖蒲やよもぎという植物がカギになってくるのですが、娘は菖蒲という植物がピンとこなかったようです。
わたしは田舎生まれなので、子どもの頃、5月になると祖母がどこからかとってきた菖蒲を束ね、とぷんと湯に入れた菖蒲湯に入ったものです。
しかし、現代の子は田舎暮らしをしていても、菖蒲なんて見たことがないかもしれませんね。
ジェネレーションギャップも感じて、ちょっぴりせつなくなりつつ、読み聞かせを終えました。
ほどよい方言、メリハリのある話運び、文章と一体になってお話を伝える絵、そして菖蒲とよもぎのこと、欲張った先にあるものまで教えてくれる盛りだくさんな「くわずにょうぼう」絵本。
まさに☆5つ!といった感じです。
このお話で菖蒲やよもぎのことを知って、そこからまた、自然やよもぎの食べ物などに興味がわいて、子どもたちの世界が広がってくれればなと思います。 -
強欲な男。ちょっとお灸をすえても問題ないのでは…と思ってしまいました。
最近の絵本は可愛いイラストのような絵が多い気がします。それも良いのですが赤羽末吉さんのような迫力のある絵も私は好きです。とくに昔話や少し怖い話はピッタリだと思います。 -
6分半
この絵本では山姥が追いかけてくるが、大蛇になって追いかけてくるお話もある。
話に出てくるヨモギと菖蒲は魔除けであり、端午の節句の菖蒲湯やよもぎ餅を食べることに通じている。
端午の節句に合わせて読んでもよい。 -
昔から語られてきたお話には子どもをひきつける力があります。
本当は、絵本をみせない『語り』がいいのでしょうが、
この絵本ならお話の世界を壊さず、空想の余地もあるように思います。
菖蒲、よもぎの季節に読みたい。 -
これを誕生日にもらった姉は、どんなに悲しかったろう・・・。
そして、私ならず、13こ下の従姉妹までも「こわいよー」ってゆった恐ろしい昔話。
保育所、どうにかしてるww -
頭から口が出てくるところがトラウマになりそうなくらい怖い。「スーホの白い馬」の絵を手がけた赤羽末吉さんの鬼ばばあが疾走する場面は、日本画の絵巻のようだ。
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ちょっと怖い昔話。
妖怪に食べられそうになるけど、色んなものが助けてくれるおはなし。
絵が素晴らしい。
男が桶に入れられて鬼婆の頭の上にかつがれるシーンは、情けない感じの表情がなんとも可愛い。
一番見事なのは、男が菖蒲の中に隠れて鬼婆が追いかけてくるシーン。
そのページだけ字がないこともあって、インパクト抜群。
構図といい、迫力といい、とても素晴らしい挿し絵だ。
6才息子は話の展開とオチにびっくりしてしばらく黙っていたけど、「………。もういっかい❣️」とリクエストしてくれた笑 -
教訓云々ではなく、山姥の出てくる昔話はどれも文句無しにおもしろい。
大量の握り飯を作って食らう描写は気持ちいいほど。男を山に連れ帰る道中はユーモラス。でも怖い。
男は働き者で倹約家だが、情に薄い。
山姥は、男をつかまえて住み処に戻ると、まずこども達を呼び、次に仲間達を呼び、獲物を皆で分かち合おうとする。
逃げた男を追うが「しょうぶ」と「よもぎ」に阻まれ、くやしいくやしい残念だと命を落とす。
シンプルな話の面白さと人物の味わい深さが合わさった良い絵本。 -
小さい頃この絵本を買ってきてくれた父は、読んだ最後にこう言った。「くわずにょうぼう」はお母さんのことや!と。山姥というとおそろしいもののように思えるが、子育てを終え老齢に達した人間を姥捨てする世をも生き抜いてきた老婆の姿になぞらえることもできよう。父はそんな強かな母を尊敬して、くわずにょうぼうと呼んだのだと思う。