- Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834012279
感想・レビュー・書評
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カヤックで、深い霧に包まれた海を進んでいると、
その時です。不思議な声が
霧の中から聞こえてきたのは……、
シューッ、シューッ、シューッ……。
僕はからだをかたくして、
だんだん近づいてくるその音を待ちました。
目の前を潮を吹きながら通りすぎていったのです。
ザトウクジラが……。
広い海原にいるはずのクジラが、
どうしてこんな所にいるのだろう。
やがてクジラは尾ビレを高く上げ、
ゆっくりと霧の中に消えていきました。
カヤックを浜辺につけて、南アラスカからカナダにかけて広がる、原生林のなかへ分け入っていきますと、あたりは夕暮れのように暗くなり。目がなれてくると、森の姿が見えてきます。見渡すかぎりの木々が、いや、地面も岩も倒木も、びっしりと緑のコケにおおわれています。
著者は、人の手の入ったことのない原生林がおいしげり、獣が通った道を見つけては歩いて行きます。巨大な倒木を橋として渡り、先に進むと川に出ます。なんと川一面にサケが…気がつくと周りにはクマがサケを狙って集まってきています。まさに命がけの冒険です。
アラスカをこよなく愛した冒険家、写真家、詩人の星野道夫さんが残した写真集です。
なお、著者・星野道夫さんは、1996年8月8日の午前4時頃、TBSテレビ番組『どうぶつ奇想天外!』取材のため滞在していたロシアのカムチャツカ半島南部のクリル湖畔に設営したテントでヒグマに襲われて死亡しました。ご冥福をお祈りします。
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星野道夫さんの写真絵本
〇クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)……1999.10発行
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4834016382#comment
〇森へ (たくさんのふしぎ傑作集)……1996.09発行
〇ナヌークの贈りもの……1995.12発行
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4097270605#comment
〇アラスカたんけん記 (たくさんのふしぎ傑作集)……1990.02発行
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4834010112#comment
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森へ (たくさんのふしぎ傑作集)
1996.09発行。字の大きさは…中。2022.07.15読了。★★★☆☆
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星野道夫の文章に初めて触れたが、惹き込まれる。なぜだろうと不思議に思いながら読んだ。それはおそらく、言葉が身体としっかりつながっている感じがするからだろう。
本書では、著者はアラスカの原生林に分け入っていく。
ザトウクジラが姿を現す霧に包まれた入江まで到達すると、深い森が浜辺にまで迫っている。
「見上げるような巨木や、その間にびっしりと生いしげる樹木が、ぼくがこの森に入ることを拒んでいるようでした」
そう、私にとってもそのような印象の森。「もののけ姫」に出てきそうな森。しかし著者の重石のような言葉が読むものに道標をあたえる。
うっそうと生い茂る樹々をどのように知覚すればいいのか。
星野氏の言葉はシンプルな言葉で描写することで、私をちょっとだけその森に近づけてくれる。
水音や風音、熊、鹿、サケなどの息遣いが聞こえてくる。こちらも思わず息を潜めたくなる。
この感じは、子供の頃に昆虫や魚を夢中で捕っていた時のそれに似ている。今まさに捕まえようとしている虫や魚の気持ちになってみる。しかし同時に、自分の体の大きすぎる気配を持て余している。とうてい分かり合えないという諦めもあるが、祈るような気持ちにもなっている。 -
96年の8月に亡くなった星野道夫さんの作品。
教科書にも載っているので何を今更の思いもあるが、それでもやはり好きで、何度も読み返して来ている。
写真に添えられた文章も臨場感にあふれ、星野さんと歩調を合わせて共に森の中を歩いているかのような気分にさせられる。
特に、アラスカの霧につつまれた入り江の風景への感動がかなり強かったらしく、目も耳もあちらこちらに忙しく移動している。
鳥のさえずり、鮭の飛び跳ねる音、霧の中に現れるザトウクジラ(!!)。
その、なんと言う神秘な静けさをたたえた写真たち。
ページをめくるこちらの手も、ついゆっくりとなる。
それから砂浜にあがり、森の中へ。
朽ちたトーテムポールでは、思わず息を飲む。
それから想像されるひとの足跡というものに、星野さんが思わずシャッターをきったように。
見聞きしたものを、星野さんの主観を通して文章化された紀行文は、感情的な思い入れが強すぎるわけでもなく
客観性もじゅうぶんにあり美的ですらある。
森の呼吸まで伝わってくるような写真の数々。
深閑とした画像の前で、何を言えば良いのか言葉さえ失うが、星野さんはあえてこう言っている。
【いつの間にか、まるで、自分がクマの目になって、この森をながめているみたいなのです】
ひとと森と生き物たちと。その絆と関係を考えてみるきっかけをもらった一冊。
ゆったりと抑え気味に読むことで、原生林のありさまを子どもたちに伝えられるだろうか。
高学年の子どもたち向けに、練習を積み重ねよう。 -
写真集のカテゴリに入れるのを迷うくらい文章がいい.でもやっぱりアラスカの原生林の森は圧倒的だ.鮭,クマ,ざとうくじら,生命の煌めきの美しさが本当に素晴らしい.
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原生林の世界へ、自分も今そこで
大自然のちからに圧倒されながら
息をしている
そんな気持ちになるほどすんごい写真がいっぱいです -
◆きっかけ
図書館
◆感想
1歳11ヶ月。娘へというよりは自分が読みたくて借りた。夜の読み聞かせの時に、娘が選んだミッフィーの次に読んでみた。飽きて遊び出すかな?と思っていたが、意外にも膝の上で食い入るように見ていた。キノコや熊のページでは、アッ!と反応。文章は理解できないだろうけれど、静かで力強い写真は、小さい子も惹きつけるのか。淡々と読んだ長めの文章も、写真を眺めている間のBGMみたいなかんじで落ち着くのかな。もう少し大きくなったら、星野さんの写真絵本、どれか購入したい。それまで図書館で色々読み聞かせてみよう。2017/4/25 -
これは写真集なのだから、ほんとにある世界なんだよね。ためいき・・・そぉーと、同化したい。
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「小学中級向き」と記載がありますが、内容はとても深い。
小学校中学年から高学年にかけてこの本を読んでしまい、真に受けてしまったら、都会での暮らしに息苦しさを感じてしまい、その後の人生に変化が表れてしまいそうです。
大人も楽しめる本ですが、大人は楽しむだけで終わってしまうかもしれないです。
払ってもいい金額:1,500円 -
南アラスカからカナダにかけて広がる原生林。まるで足で立っているように根が生え、その間に大きな穴があいている大木。どうしてそのような形に育ったのか?そこにはどんな物語が!?
p16のキノコ。何だか不思議だけれど、とてもきれい。 -
南アラスカに広がる原生林を写真家 星野道夫が、ひとり歩き、森で受け継がれて来た生命や時間の流れ( 歴史) を写真と文章で綴った。「ぼくが、この森に入ることを拒んでいるようでした。」という森の圧倒的な存在感が、ページから溢れて出ている。