きつねにょうぼう (日本傑作絵本シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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本棚登録 : 228
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (44ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834012934

作品紹介・あらすじ

シッポシッポと雨の降る暮れ方にやってきた、いとしげな若い女。貧しい独り者の男は、一夜の宿を貸したのが縁で女と結ばれます。やがて二人の間にはかわいい子も生まれ、幸せな暮らしはずっと続くかに思えました。けれど、椿の花が一面に咲き乱れるある春の日悲しい別れが待っていたのでした。狐が嫁にくるというお話は、そのほとんどが恩返しのモチーフですが、この本に採られたのはひと味違ったせつない愛の物語になっています。

感想・レビュー・書評

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  • 切なくてしみじみとする物語。荒々しい片山健の絵が豊かな趣を感じさせてくれて素晴らしい。

  • 昔話によくある展開なんだけど、そんな正直に去らなくても…と切なくなってしまった。
    誤魔化すことだってできたじゃない。と。

  • う、む。確かに異種婚姻譚でした。きつねを何らかのメタファーとして捉えることもできなくは無いでしょうけれど、それよりもっと純粋に人間ときつねの愛について昔話の体裁で語った物語です。
    はじまりは結構ホラーみがあるので、男が不幸な目に遭わないかちょっと心配だったのですが、読み進めていくときつねの女房さんがただただ裏表なく男のことを好きになったのだとわかってくる。男も男でそんな女房さんのことを大事に思っており、その愛は女の正体がきつねだとわかってからもそう簡単には消えない。それならこれまで通り一緒に暮らしたらええやん、と思うのだけど、きつねにはきつねの事情があるようで、戻ってくることはありません。そしてそのまま物語は幕を閉じる。切ないなあ。
    東北なまりの強い文章や、片山健さんによるカラフルで力強い絵がインパクト大。片山さんの絵は黒がかっこいいですね。自然の怖さとか迫力とかに重きを置いた作風なので、人間よりも「自然」の方が主役として描かれているような気がします。この絵本もそんな「自然の摂理」というものをテーマとした作品なのかもしれませんね。

  • (1998.02.28読了)(1998.02.28購入)
    第4回(1998年 ) 日本絵本大賞受賞
    内容紹介 amazon
    狐がお嫁さんにくる物語は日本各地に、それもずいぶん昔からあるようです。歌舞伎や浄瑠璃にもなっていますし、「恋や恋なすな恋」という映画のストーリーもそうでした。そのほとんどが、“恩返し”のモチーフを持っていますが、この本に採られた話はひと味ちがって、とてもピュアーでせつない愛の物語になっています。 シッポシッポと雨の降る暮れ方にやってきた、いとしげな若い女。貧しい独り者の男は、一夜の宿を貸したのが縁で女と結ばれます。やがて二人の間にはかわいい男の子も生まれ、幸せな暮らしはずうっと続いていくかに思えました。けれど、つばきの花が一面に咲きみだれるある春の日に……。 この絵本の主人公は、不思議なできごとをそっと包みこむ山里の自然そのものかもしれません。長谷川摂子さんの定評あるたおやかな語りと響きあいながら、豊かな四季の移ろいを画面いっぱいに描き出す片山健さんの油絵作品は、昔話絵本の新しい地平をひらきました。ページをめくるごとに広がってゆく驚きと情感にみちたお話の世界は、子どもからおとなまで、すべての読者を魅了しつくすことでしょう。
    読んであげるなら:5・6才から
    自分で読むなら:小学低学年から

    • nejidonさん
      nakaizawaさん、こんにちは♪
      お気に入りに入れてくださり、ありがとうございます。
      この本は、お話会では使ったことはないのですが、夫婦...
      nakaizawaさん、こんにちは♪
      お気に入りに入れてくださり、ありがとうございます。
      この本は、お話会では使ったことはないのですが、夫婦・親子の深い情愛にはしんみりしますね。
      フォローさせていただきます。
      今後ともよろしくお願いします。
      2013/07/26
  • 有名な作品ですが、やはり感動してしまいました。
    きつねが何故若い女性の姿を借りて、この男のもとへ来たのか。
    それは一切描かれていません。
    たぶん、重要なことではないのでしょう。
    この話の主旨は、子を思う親の心です。
    それは、狐でもひとでも、変わりはないということでしょうね。

    片山健さんの挿絵は力強く迫力にあふれ、画面から色があふれそうです。
    秋の刈り入れの場面と、もとの狐に戻ったときの姿。
    とりわけ、椿の花の群生が本当に見事です。
    機織りをしていて、うっかりその椿に見とれて尻尾を出してしまうくらいです。
    我が子に見られたからにはもうこの家にはいられないと、狐の母親が歌う歌の切なさ。
    ここは、お話の聞かせどころでしょうね。

    狐というのは、あまり良い比喩には使われません。
    女狐とかね(笑)、狐にだまされたとか、化かされたとか。
    それでも昔話の狐はこんなにも愛情にあふれています。
    ひとと、他の生き物とがごく身近であった時代を、ふと思ったりします。

  • 男やもめ暮らしの家にある日突然麗しい女が現れて嫁となるが、正体は化生のものであったために夫と子どもを残して去る、異類婚姻譚のひとつのお話
    と、分かってて読んだのに、おそらく東北の方言のお話の文体と、荒々しく逞しい油絵の美しさに! すごくびっくりした作品です
    雨の日に“いとしげな わかいおんな”が、びんぼうなひとりもんの男と出会い、流れるように夫婦となって息子も生まれ、幸せに暮らしていたのに、ほんのささいなきっかけで、きつねである正体を息子に見せてしまって姿を消し、しかしとびきりの富と愛情を息子と夫に残す、きつねのにょうぼうのお話です
    きつねの姿に戻ってしまうきっかけが、すごく可憐で類を見ない理由だし、家を出てからも田植えを一人で一晩で終えて息子に乳を飲ませてあげたりする…めちゃくちゃ素晴らしいお嫁さんなんです 三国一と言っても過言ではない
    むしろきつねの尻尾が可愛いんだから、そのまま一緒にいればいいじゃない…
    夫と子どもに別れを告げる場面が…美しい水田に逆さに映る一家の姿があまりに美しくて、素晴らしいのです
    そう言えば、こちらのきつねにょうぼうさんの鳴き声は(ぐえーん)だったので、あ、(ぐえんこぐえんこ)の派生!? とちょっとびっくりしました
    きつねの鳴き声って(コンコン)のイメージだけど、コンコン言ってるきつねが出てくる絵本は今のところ読んでないなあ

  • 読み聞かせ 7分

    「語りと絵が豊かに響きあう昔話絵本の傑作

    シッポシッポと雨の降る暮れ方にやってきた、いとしげな若い女。貧しい独り者の男は、一夜の宿を貸したのが縁で女と結ばれます。やがて二人の間にはかわいい子も生まれ、幸せな暮らしはずっと続くかに思えました。けれど、椿の花が一面に咲き乱れるある春の日悲しい別れが待っていたのでした。狐が嫁にくるというお話は、そのほとんどが恩返しのモチーフですが、この本に採られたのはひと味違ったせつない愛の物語になっています。

    読んであげるなら 5・6才から
    自分で読むなら 小学低学年から」

  • 7分…遠目がまあまあきく。方言あり。低学年には少し難しいかな。

  • 実りの秋の時期に、あたたかくてやさしい、子どもをおもう、きつねのおかあさんのおはなしをきいてください。

  • 片山 健 (イラスト), 長谷川 摂子

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著者プロフィール

長谷川摂子(はせがわ せつこ)1944~2011島根県生まれ。東京大学大学院哲学科を中退後、公立保育園で保育士として6年間勤務した。その後、「赤門こども文庫」「おはなしくらぶ」主宰。絵本に『めっきらもっきら どおんどん』『きょだいな きょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『はちかづきひめ』『みず』『さくら』『きつねにょうぼう』『かさ さしてあげるね』『おじょらぽん』、童話に『人形の旅立ち』、著書に『子どもたちと絵本』『絵本が目をさますとき』(以上、福音館書店)などがある。

「2016年 『ぐやん よやん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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