クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834016383

作品紹介・あらすじ

アラスカの大自然のまっただ中に身を置き、悠久の時のかなたから響く声に耳をすまし、闇にひそむ動物たちの鼓動にわが身の鼓動を重ね、凛とした言葉と永遠の今を捉えた映像を残して、遠い世界へ旅立った星野道夫。その彼が、小さな人たちの魂にまでとどいてほしいと願った祈り…。小学中級から。

感想・レビュー・書評

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  • あっと 気がつくと
    草むらの中に
    おまえは
    困ったような顔をして すわっていた
    おれも どうしていいかわからず
    ただ 立ちつくしていた
    たがいに じっと 向きあったまま
    どれだけ 時間がたったか
    かすかに かすかに
    おまえの息が聞こえていた
    著者の目の前に黒い大きなクマがこちらを向いて座っています。

    山の上には雪の残るアラスカの雄大な情景のなかで、
    谷を越えて夏草がおいしげる丘を3頭の親子のクマが悠然と歩いています。
    子グマが、母の乳を吸い、
    子供どうしがたわむれて、母に寄り添って、
    何かに驚いたか、母が二本足で立ちこちらを見ています。
    子グマが、母の背中にのっかった姿が可愛く、
    そして母の安心した姿がなんともいえずホッとします。

    夏がきたミクフィック川では、
    遡上してくるサケをもとめて多くのクマが集まっています。
    それぞれの場所でサケを捕り、
    食いちぎり、かみ砕き、そして親が小さな子供に食べさせる姿が、
    躍動感にあふれ、慈愛に満ちています。

    静寂と、激しさと、いのちをかけた戦いのなかを生き抜いたものたちだけが歩むことができる大自然のアラスカに挑み続けた冒険家、写真家、詩人の星野道夫さんが残した写真集です。
    1996年8月8日ロシアのカムチャツカ半島南部のクリル湖畔にてヒグマに襲われ亡くなる。
    43歳でした。ご冥福をお祈りします。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    星野道夫さんの写真絵本
    〇クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)……1999.10発行
    〇森へ (たくさんのふしぎ傑作集)……1996.09発行
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4834012271#comment
    〇ナヌークの贈りもの……1995.12発行
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4097270605#comment
    〇アラスカたんけん記 (たくさんのふしぎ傑作集)……1990.02発行
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4834010112#comment
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)
    1999.10発行。字の大きさは…大。2022.07.16読了。★★★☆☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 切ないほどに詩的で凛とした文章。
    圧倒的に雄大なアラスカの自然。
    【いつか お前に 会いたかった】で始めるこの写真集は、「星野道夫氏の遺稿と使用写真についてのメモをもとに作りました」という編集部の注記がある。
    その一行で改めて、そうか、これは鎮魂の作品なのか・・とはるかな思いにとらわれる。
    96年、取材中にクマに襲われて亡くなられた星野道夫さん。
    「自分の過ごしているこの時間に、クマも同じ時間を過ごしている」と、子ども時代に気づいてから、ずっと憧れ続けたクマに、命を絶たれたのだ。
    その胸に去来したのはなんだったろう。

    会いたいと熱望しても、手の届きそうな距離まで近づいても、決して一体化することはない。
    クマを含む大自然が無言でそう語っているかのようだ。
    登場するクマたちには、子供向けのキャラとして描かれているような愛らしさは一切ない。
    表紙画像のクマは一見大人しいが、鮭を引き裂いて食する場面は、想像以上に猛々しい。
    そして、アラスカの自然のなんという雄大さと神々しさ。
    クマが好んで食べるという白いベアフラワーの群生にも、何やら不思議さが漂う。
       
      【夜になると すこし こわいんだ
       どこかに おまえがいると 思うだけで
       テントの中で じっと耳をすましてしまうんだ
       でも そんなとき ふしぎな気持ちになるんだよ
       おれは 遠い原始人になったような気がして
       おれは 動物になったような気がして
       夜になると すこし こわいんだ
       でも そのふしぎな気持ちが すきなんだ】

    最期の夜は、クマが来て危ないからこちらで一緒にと言われても、大丈夫だからと仲間から離れてひとりでテントに寝ていたらしい。
    「こわい」という気持ちよりも「その不思議な気持ちが好き」な方が勝ったのだろう。
    星野さんの遺したものを、どう子どもたちに伝えれば良いのか。
    私はまだ立ち止まっている。
    そして、場所こそ違え、同じ時間帯を共有している様々な命について想像を巡らし続けている。

    • 8minaさん
      nijidonさん、お久しぶりです。
      星野さんのように自然のただ中で生きてきた訳ではありませんが、それでも山奥の登山で一人幕営する夜中、裸...
      nijidonさん、お久しぶりです。
      星野さんのように自然のただ中で生きてきた訳ではありませんが、それでも山奥の登山で一人幕営する夜中、裸の存在の恐怖とか本能的な畏れとかを感じる瞬間があります。
      本来の感覚が研ぎ澄まされていく感じがとても好きです。
      2015/10/14
    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      こちらこそご無沙汰しております。
      そうですか、8minaさんは登山で幕営された経験があるのですね。
      登山...
      8minaさん、こんにちは♪
      こちらこそご無沙汰しております。
      そうですか、8minaさんは登山で幕営された経験があるのですね。
      登山さえも未経験の私はひたすら想像するのみですが、自分の身体以外は何ひとつない山奥で、どれほど頼りなく心細いだろうと思ってしまいます。
      本来の感覚が研ぎ澄まされていくというのは、星野さんの言われたことと通じるかもしれませんね。
      そんな環境に身を置くことに憧れもありますが、私にはとてもとても。。
      写真集を見て、想像するのみにとどめます。
      2015/10/14
  • 友人から

    星野さんの
    力強く、優しい写真。
    クマや自然への愛の溢れたことば。

    グッとくる一冊。


  • お亡くなりになった後に、メモや遺稿をもとに作られたと知り、
    表紙からはわからなかった壮大な背景に、読後、身動きが取れなくなりました。

    星野さんの他の作品同様、写真から被写体への想いが強く伝わってきて
    「敬服」や「敬愛」という類のものを感じます。

    地球の中で、たまたま人間に生まれてきたこと、
    他の生き物や自然全体への尊厳などを煎じ詰める時間を持ってもいいのになと、
    自分含めて、そう思います。

  • 著者の生き様を表現する一冊でもあり、私たちヒトはどう生きるべきかについて深く考えさせられる。

  • 「ぐいぐいと草をかきわけて進むクマ。風のわたる草原で遊ぶ親子のクマ。どんどん川をのぼってくるサケをつかまえるクマ。今この瞬間も、遥かな北の大地で、クマが生命のいとなみを続けています。アラスカを歩き、クマを見つめ、クマに見つめられてきた星野道夫氏が子どもたちに贈るメッセージ。96年に亡くなった星野氏の『アラスカたんけん記』『森へ』(共にたくさんのふしぎ傑作集)に続く最後の写真絵本です。」

  • 愛を感じる1冊です

  • あんなにも恐ろしい熊の毛並みと優しさを感じる。写真と詩で楽しむ。

  • 遠く首都圏の学校に通いながら、北方の自然に暮らすクマに想いを寄せていた星野道夫少年。カメラマンとなった彼の、クマのいない山についての考察に共感する。

  • T図書館
    児童書
    メモから抜粋した詩とクマの写真

    星野さん、あなたはクマの友達ですか?
    と思うようないい写真ばかり
    赤黄青の自然豊かな大地のコントラストは、きれいで目が離せない

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著者プロフィール

写真家・探検家

「2021年 『星野道夫 約束の川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

星野道夫の作品

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