続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834017328

作品紹介・あらすじ

「子どもへのまなざし」の読者の方々からいただいた質問に対して、児童精神科の著者が臨床経験をふまえて答えていきます。乳幼児期の育児について、母性と父性について、障害を持つ子をどう育てたらいいのか、あるいは、最近、幼稚園、保育園で目立ってきました注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもたちを、どう理解したらいいのか、さらに、少年事件の背景にあるものを、どう考えたらいいのかなどをわかりやすく答えています。

感想・レビュー・書評

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  • 1巻での読者からの質問に回答する形式。

    社会の変化にあわせて、自分を大切にする親が多くなったのではないか。という点は興味深い。

    自分主体、個性的な生き方をめざす風潮は、子どもにとっては決して最高ではないと。子どもは、自分だけをえこひいきしてくれる存在、つまり母性的なものが必要な期間がある。というのはなるほどと思った。まず、母性的なものを十分にあたえ、それから父性的なものをあげるんですよと。

    そして、誰かを大切にした生き方をしなければ、結果として自分も幸せにならない。人間関係をわずらわしいと思わず、作っていき、よい人間関係をたくさんもっているほど、よい育児ができる。
    というのも、心に残った。

  • 育児がうまくいかない。
    すぐイライラして怒鳴り散らしてしまう。
    怒りで身体中の血が煮え立ち、そのたぎったものをどこにぶつけたらいいかわからない。
    ストレスに次ぐストレス。

    半年以上トイレトレーニングをしても未だにウンチはうまくいかないし、人が嫌がることをわざとやるし、減らず口を叩くくせに気持ちをうまく言えなくて大泣きする。
    こんな子、いらない。
    でも......。私が悪いのかもしれない、どこかに障害があるのかもしれない。
    わからないよ、助けてほしい。
    そこで目に留まったのが、「第四章 障害を持つ子ども」。
    もしかして、を考えて読んだ。
    すると、こう言われたのだ。
    「一番大切なことは、この子達に深い理解を示してあげるということだ」(362頁)

    私はちゃんとできているだろうか。
    悪い親だから、この子の未来を潰してしまっているんじゃないだろうか。
    「欠点や短所ばかりを注意され続けることによって、子どもは自分自身を信じられなくなってしまいます。」
    「子どもというのは、私のこと、僕のことを大好きだと言ってくれる人に、どれだけめぐまれるかということが、その子がどれくらい自信と誇りを持って、生きていくことができるかを決めることになるんだと思います」(134頁)
    「「あなたには、こういうすてきなところがある」と本人に伝えてあげること」
    「こういうことを十分しないうちは、子供の欠点や弱点を指摘しても通じない」(182頁)

    もっと甘えさせてあげよう。
    もうおしまい、と勝手に切り上げないで。
    すると、本当に、子供は「もうおんぶ降りる」と言ってくるではないか。
    それでもやはり毎朝、毎晩、抱っこ抱っこと大騒ぎしているけれど、やってあげるとそれはそれは満足そうにしているのだ。

    本書に書かれた内容に、一から十まで全てが正しいとは思えない(一箇所同意しかねる部分があった)。
    でも、通して子どもへの愛と、親、とりわけ母親に対する愛情が深く感じられた。
    今日よりも明日、それが希望になるし、子供は望んだことを満たしてあげればちゃんと自立できる。
    この二つの言葉が本当に助けになった。

    下手な育児をしているのはわかっているし、点をつけるなら35/100点くらいの母親だ。
    だから子どもに話した。

    ママも、〇〇ちゃんも頑張らなくちゃいけないところがいっぱいある。
    でも、二人で一緒に頑張っていこう。大好きだよ。

    小さな指が私の指を掴んだ。
    指切りね、この約束を守っていきたい。

  • 佐々木先生の本を3冊読んできて、少し育児に対する心構えみたいなものが芽生えてきたかな、と思う。親にとって、子育ては戸惑うことばかりだと思うけど、ちょっと心構えしておくことで余裕が生まれたらいいな。自分のこどもが障害を持って産まれてきたときのことも含めて。こどもを幸せにしてやることが自分の幸せ。いつもそのことを頭の隅に置いておきたい。孤独がいちばんいけない、色々な人との関わりの中で過ごすことが生きることなのだという指摘は本当にその通りで、これも忘れたくないこと。本当はみんな身体でわかってるんだと思います。

  • 基本的に前著と一緒で、とにかく親は子供の要求に全て答えることで愛情を注ぐべしと述べている。子供の要求はなるべく体験(抱っこおんぶ遊ぶ)で満たしてあげてモノで満たそうとはしないこと。

    一人っ子家庭よりも、他の家族と育て合わない家庭の方が心配と著者は指摘する。地域の子育てサロンなども活用して積極的に他の家庭と交流する機会をもつこと。

    子供に限らず大人でも、自分の話をゆっくり聞いてくれる人がいないと心にゆとりがなくなり、欲求不満になる。

    子供にしつけ(父性的なもの)を教えようと思ったら、まずは愛情(母性的なもの)で満たしてあげること。愛情不足な子に、いくらしつけをしても意味はない。

    家族の力関係がはっきりしている方が家庭が安定する。父がリーダーシップを発揮する方がなお良いらしい。そして、家族の役割(父は働きリーダーシップを発揮する、母は家事をやり父のサポートをするなど)がはっきりしている方が子供が健全に育つとのこと。
    この辺は近年の新しい家族のかたち思想とは異なるが、個人的には一理あると思う。

    後半は子供の発達障害について述べられていた。一般的に子供の発達障害が表面化してくるのは1歳半頃から。中でも自閉症の子は明らかに他の子と様子が違うから分かりやすい。ダウン症の子供は人懐っこくて、大人の言うこともよく聞くから非常に育てやすい。
    自閉症、ADHD、学習障害の子供は、症状がとてもよく似ていて、線引きが難しい。
    親だけで抱え込もうとすると、潰れてしまうから周囲のサポートを積極的に受けること。

  • 保育園の図書館シリーズ。
    前巻でのメインメッセージは「子どもに対する全面的で無条件の受容が大切」。今回も軸はぶれず、親の心に刺さるメッセージがたくさん。自分に響いたのは「父性と母性」、「障がい児を親に持つことと教育」をテーマにした章の部分。育児に対する考え方が楽になる、育児そして家族の人生を楽しく幸せなものにするためにも皆んなに読んでほしいと思える一冊。ビジネスにおけるマネジメントにも役立つんちゃうかなこれ。

  • 子育てしている両親、祖父母、保育士さん、幼稚園の先生、全員におすすめしたい本。
    子どもを幸せにするためには、どうしたらいいかヒントが沢山散りばめられている。
    医学的に興味深い話も織り交ぜられており、最後まで楽しく読めました。
    読んだ後は優しい気持ちになれます。

  • 第二巻は読者の質問に答える形式なので、自分の悩みについての箇所を読むのもよさそう。

    実践したいこと
    •モノではないコトの欲求に応えてあげる
    •たまに一人っ子のように、兄弟の見えないところでえこひいきする。
    •長所やいいところに注目する
    •短い時間でも、子どもの話をちゃんと聞く

    子どもを育てることを真剣に考えることは、次の世代を思いながら仕事することだと思う。

    第一巻で、まず自分が幸せであることとあったけれど、
    自分のことしか大切にしなくなった、誰かを大切にして生きなかったから、結果として自分も大切にできていないということ。

    ADHD、LDの話、悲しみから立ち直るまでの11の心理過程も勉強になった。

  • 前作と重なる内容が多かったが、新しい話でいうと、母性と父性の話は非常に納得度が高かった。夫とどう協力して良い家庭にすれば良いかの大きなヒントになった。

    また、個人的に響いた内容では、鳥飼玖美子さんの、妊娠前に仕事が制限されることを恐れていたが、生まれたらただこの子のそばにいたいと思った、という言葉。自分自身もまさにその通りの感覚だった。

    さらに、佐々木先生は、母親がおなかで40週も育てたのに、父親と同じぐらいの愛情しかもてないのは不思議ではないかと書いていて、母親としてのプライドをなくしてはいけないと書いておられる。私自身、産前は夫をたてることに何の抵抗もなかったのに、子育てだけはプライドが出てしまうことに罪悪感があったが、この言葉に救われました。

    以下、まとめ。


    子どもはものでは満たせない。もの以外で要求を満たしてあげると、ものを要求しなくなる。たとえば好きな献立を作る、休日にトランプやキャッチボールをするなど。

    うそをつくことはよくないということは教えるべきだが、ある程度は認めてあげる。うそをつかなくていい雰囲気で育てるのが最も良い。

    兄弟げんかはたくさんするほうが、友だちとは喧嘩せず仲良く遊べる。攻撃性や征服欲を自然な方法で向上心に変えていくのに格好のトレーニング。上をつい叱ってしまうのは、あまり心配いらない。強い者が我慢するのが世の中の道理。

    うまい保育というのは、全員が一斉に同じことをするのではない。子どもたちがお互いに気の合った仲間を見つけて、いくつかのかたまりになっている状態が、育ち合うということ。そして入れない子を上手に入れてあげるのが上手な保育。

    子どもに色々なものを与えるだけの早期教育は良いが、成果を期待するのはよくない。

    親に気を許していない他人行儀のいい子より、いつも欠点を出している子どもの方が安心。

    人の嫌がることをする子どもは、めぐまれた環境でやさしく育てられた経験が不足している。あるいは、望んだことを満たされながら育ってこなかった。人間は欲求不満になると攻撃的になる。

    鳥飼玖美子さん「妊娠中は仕事がうんと制限されるのがつらいと思っていたが、生まれてみたらもうそんな考えがすっかりとんでしまって、もうこの子のそばにだけいたいという気持ちになった。こういう気持ちこそが母性なんだろうか」

    子どもに対して、それでいいんだよといってあげ、くつろぎややすらぎや安心感を与える機能は母性的、このように生きなければと指摘し伝えるのは父性的なもの。 

    しつけは長所を見つけて伸ばす姿勢が大事。

    育児の主役が親であれば、祖父母が孫を甘やかしても大丈夫。

    母性が先にきて、父性は後にくる。複数のこどもがいても、ひとりひとりをえこひいきすることが大事。

    不健康な家族に共通していることは、お父さんとお母さんの役割がはっきり分かれていないこと。健康な家族では誰がイニシアチブをとるのかはっきりしている。不健康な家族の場合は家族全体が平等。また、片親が子どもたちと連合して、もう片方の親との間に境界線をつくってイニシアチブを大きくしようとすると、子どもはうまく育たない。なかでも母親が男の子を取り込んで夫に対応しようとする場合は最悪。それらの家庭の66%に、重症な神経症患者がいた。

    家族の役割は二つあり、一つはありのままの自分を、安心してさらけだせる場であること。もう一つは、人は何のために生きるのか、どういう価値観を持って生きるのか、どういう理想を持つべきかなどを考えていくこと。

    信頼関係の豊かな子どもたちは、いじめともいじめられとも無関係な位置にいる。人を信じられる子どもは、いろいろな子どもと友達になれるから、いじめる子どもと友達にならなくてもいい。

    小さい時から親が話を聞いてあげることが大切。親に話を聞いてもらって解決してもらった経験がなければ、子どもは親に話しても仕方ないと思うようになる。

    母親が40週も自分のおなかのなかにおいて、大切に育ててきた子どもをいとおしまないで、父親と同じような愛情しか持てないというのは、不思議なことではないでしょうか。自分と同じような質でもって、父親がこの子をかわいがれるはずはないと思って、育児は自分でやりたいとどうして思わないのか。母親に母親としてのプライドがなくなってしまったは、子どもは安心して育っていくことはできなくなるのではないか。

    ダウン症は不適応行動や異常行動が極端に少ない。極端に多いのは自閉症。ダウン症の子は人なつこく、他の子と一緒に何かやるのが大好き。自閉症はその逆。ダウン症は知能の発達だけが遅れているごくふつうの子ども。ADDやADHDはその間。特徴はシングルフォーカス。こういう子たちには、大人が我慢して叱らないでいてあげるしかない。

    自閉症だと、想像力を働かせるということができない。同時にいくつものこともできない。イメージの世界がもてないので、鬼ごっこなどもできない。空間の世界に生きていて、時間の世界には生きられない。話してもわからないが、文字になればわかる。

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著者プロフィール

児童精神科医。1935年生まれ。新潟大学医学部卒業。ブリティッシュ・コロンビア大学留学後、国立秩父学園、東京大学、東京女子医科大学、ノースカロライナ大学等にて、子どもたちの精神医療に従事する。現在、川崎医療福祉大学特任教授。
日本で初めてTEACCHを紹介し、普及に努める、TEACCH及び自閉症医療の第一人者である。
近著に『子どもへのまなざし』『続 子どもへのまなざし』『完 子どもへのまなざし』(以上 福音館)『「育てにくい子」と感じたときに読む本』(主婦の主社) 『アスペルガーを生きる子どもたちへ』(日本評論社)ほか多数

「2011年 『出会いでつむぐ私の仕事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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