ダンス・ダンス!―ユウレイ通り商店街2 (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834025750

作品紹介・あらすじ

わたしはまゆみ、クリーニング屋の娘。ジャズダンスが大好きで、ヒップホップ派の子たちとバチバチ張り合ってる。でも、商売が不調のせいで両親がなんだかギクシャクしてるし、おじいちゃんは病気で入院。ダンスでも、新入りの親友にポジションを取られちゃって…わたしもウチも、このままじゃダメだ。小学校中級から。

感想・レビュー・書評

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  • ユウレイ通り商店街シリーズ第二弾。
    第二弾は、第一弾の主人公・小村製パン所のムカシのお隣さん、ひまわりクリーニングのまゆみが主人公。
    クリーニング屋の娘・まゆみは小学五年生。ジャズダンスを習っていて、ヒップホップ派の理香子とバチバチ張り合っている。市民祭りの発表を目前に、家では商売のことで家族がギクシャクし始め、ダンスではやる気が出ずにセンターポジションを外され、そのことで親友の都とも口をきかなくなってしまう。そんな時、おじいちゃんが病気で入院してしまい…。


    実は第一弾はそれほどでもなかったので、続編はずっと読んでいなかったのですが、今回手に取ってみたら、私は第二弾の方が面白かったなぁ。
    第一弾の主人公のムカシやムカシのお父さんもたくさん登場し、つながりもあってよかったです。まゆみのお母さんとムカシのお父さんが幼なじみで仲良しという設定も生かされ、昔ながらの商店街の付き合いってこんなもんかなと思いながら読みました。
    作中には普通の小学生まゆみの等身大の姿が描かれていて、感情的になったり短絡的なところも、だるくてやる気が出なくて結果が出せないところも、友だちに対して思慮深くもなく意地っ張りなところも、全部等身大という感じで、それでいてなんでか憎めず、その素朴さが読みやすかったです。
    最後の方でまゆみが都に対して不条理にキレているところさえ、「はい、はい、もうわかったから…」「こんなバカな妹だけど、許してやってくれる?」というお姉ちゃんの呆れながらも優しいまなざしに、なんでか許せてしまうのがすごい。お姉ちゃんが、「都ちゃんっていい子だね。いい友だちがいてよかったね」と気持ちを代弁してくれるおかげでしょう。涙を拭く流しの横のタオルがしめっぽくてくさかったのが、家庭あるあるでウケた。

    ジャズダンスの教室のこと、都との葛藤のこと、クリーニング屋の商売のこと(お母さんは依託店にしたい)、戦時中に唯一焼けずに残った、まゆみの家の倉のこと。おじいちゃんの脳梗塞と、だんだん増える世界一の超高層ビルの階数。そしてムカシのパン屋の今日のおすすめ、『アジの干物パン』。
    いろいろな要素がすべて楽しくて、ぴったりハマっていて、楽しい読書となりました。
    なんでも家のせい、親のせいにしていたまゆみが、お姉ちゃんにキレられて、自分で動き始めるところも見もの。これは意外と大事なメッセージだと思うけれど、子どもたちは気づいてくれるかな?

  • 本当は「駅前通り商店街」という名前なのに、
    人通りが少なくてうら寂しいので
    「ユウレイ通り」なんて呼ばれている商店街の
    いろんな「お店の子」が主人公。
    お家も近くて、学校でも同じ5年1組、という子どもたちのお話。

    1巻目はパン屋の息子武蔵が主人公の
      「ムカシのちょっといい未来」

    2巻目は、そのお隣のクリーニング屋さんの娘まゆみが主人公の
      「ダンス・ダンス!」

    どちらの主人公も、
    特にカッコよくも、美人でもないし、
    スポーツができたり、勉強ができたりもしないし、
    特に健気だったり、友達思いだったりするわけじゃない。
    ごくごくフツーの元気のいい子ども。

    そんな、
    そのへんにいそうな子どもの日常と、
    彼らの心を波立たせるちょっとした事件の数々。
    それは、学校でのことだったり、
    友達との間のことだったり、
    家族とのことだったり。
    ささいなことだけど、でも、子どもにとっては結構重大。
    自分の情けなさに気付いたり、家族のありがたさに気付いたり、
    痛い思いをしたり、泣いたり笑ったりして、
    ちょっぴり成長する子どもたち。

    うーん、ものすごくまっとうな児童文学だ!
    著者の子どもたちやまわりの大人を見る目が暖かく、確かなので
    安心して読める。
    オーソドックス、と言えばそうだけど、
    でも、このまっとうさは貴重。
    子ども時代に絶対必要だと思う!

    ムカシの話もよかったけど、
    わたし的には、まゆみちゃんの話がすごく好き。

    まゆみちゃんは、気は強いし、
    負けず嫌いでひがみっぽいし、
    末っ子だから「してもらうのが当たり前」な子で、
    決して「いい子」じゃないんだけど、
    著者の語り口が暖かいので、
    あ、いるよな、こういう子、と苦笑しながら読める。

    あっちでつっかかり、こっちでつまづいて、
    ぜんぜんカッコよくいかないんだけど、
    でも、ちゃーんと最後には一件落着。
    フカクにも、二度ほど涙ぐんでしまいましたよ。
    あー、面白かった!

    「ユウレイ通り商店街」は、
    子ども同士も同級生だけど、
    親の世代も、おじいちゃんおばあちゃんの世代も、
    子どもの頃からの知り合い、というコミュニティ。

    こんな「ご近所付き合い」って、
    今では、ほとんど「絶滅危惧種」なんじゃないかしら。
    もう、ドラマか小説の中だけにしか存在しないのかもしれないけど、
    だから憧れるって部分もあるよね。

    小学校3・4年生くらいから読めると思います。
    小学校図書館に、ぜひ!

    これ、来年の夏休みの課題図書とかにならないかなあ。
    おもしろいし、自分だったら?と考えやすいから、
    感想文すごく書きやすいと思うよ。

    ただ一つ不満なのは、表紙とイラスト。
    特に表紙は地味すぎ。
    せっかく作品はいいのに、これはないんじゃない?

    中身が良心的なオーソドックスな児童文学なんだから、
    表紙はもう少しポップにして欲しかったなあ。
    一期一会のタカノトモコさんの絵とか、よかったのになあ。
    すごーく残念!

    だけど、お話はとても面白かった。
    他の子どもたちのお話も読みたい。

  • 福音館書店からの献本

  • 友達にダンスをこされそうだったけど、あきらめないで、ライバル同士になったところが好きです。

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著者プロフィール

東京生まれ、東京育ち。「初音ミクポケット ハジメテノオト」「ダンス・ダンス!」「いい子じゃないもん」「クールな三上も楽じゃない」「パパとミッポの星の3号室」「パパとミッポの夢の5号室」「とびだせ!そら組レスキューたい」など。

「2021年 『探偵犬クリス(3) 柴犬探偵、豪華客船を探検する!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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