- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834026658
作品紹介・あらすじ
北国の山中で開墾生活をはじめたトシちゃんの家に、ネズミどもが出没! その退治のため、雄の子ネコのトムがもらわれてきました。はじめはどちらかというとネコぎらいだった一家だけれど、とぼけたような行動力でふりまわしてくれるトムがいるおかげで、大変な生活のなかにも大笑いが絶えなくなって――。 文庫化にあたって、これまでほとんど知られていなかった、「山のトムさん」と背景を同じくする短篇「パチンコ玉のテボちゃん」も収録。
感想・レビュー・書評
-
家族とネコの心温まる児童小説ですね。
福音館書店版の「ピーター・ラビット」の訳者の、いしいももこ(石井桃子 1907~2008)さんが気になりましたので、図書館で探して見つけました。
1968年に出版されたものを、2011年に文庫に改訂版にされたものです。
初出しは1957年。
石井桃子さんの体験をもとにした物語です。
北国の山の中で開墾生活をはじめた家族が、ネズミの被害に困って、雄ネコをもらった。
ネコの名前は「トム」。
野性味あふれるトムの活躍と、家族一人一人の頑張りが伝わってきます。
戦後まもなくの、山の生活が語られています。
トムとの生活が愉快に、また厳しさもあり、家族との絆を、やさしい文章で綴られています。
トムへの詩もあり、トムの写真もあります。
トムへの愛情あふれる本ですね。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
WOWOWでドラマ化されていたのを見て、原作に興味を持って読んでみたら、原作はドラマとは全然違った!
原作は戦後すぐの田舎が舞台で、自分たちで食料を調達するために開墾して野菜を栽培し、家畜を飼っていたのだけれど、ドラマは舞台を現代に置き換えてしまっているので、何故彼女たちが田舎に住んでいるのかの意味合いが全く違う。
また、大人の女性である「おかあさん」とその娘のトシちゃん、「おかあさん」の友達であるハナおばさんとその甥のアキラさんが一緒に住んでいるのだけれど、原作では「おかあさん」の連れ合いやアキラさんの両親たちは戦争で亡くなってしまったか、あるいはまだ戦地から戻ってこないために彼らだけで一緒に住んでいるのだが、ドラマでは現代に設定を変えているので、彼らが一緒に住んでいる背景も異なる。
ドラマでは、自然に囲まれた美しい土地でお日様を浴びながらみんなで育てた野菜を調理して食べる暮らしに充足感があったのだけれど、原作は時代柄、食べることにもっと切迫感があった。住み着いたネズミ退治のために猫のトムを飼うのだけれど、原作ではネズミの害はもっと切実だし、トムの飼い方も今とは違う。
それでも、原作は原作の、ドラマにはドラマの魅力があったように思う。
福音館文庫に同時収録されているもう一遍もたいへん良かった。あの時代の空気をリアルに感じられた。 -
2020.4
山での生活。厳しい環境のはずなのに。でもなんて爽やかでユーモアがあってあったかいんだろう。暮らしって生活ってきっとこういうもの。人が集まって暮らすってこういうこと。ねこのトムさんが目に見えるようだ。そして、全然物語が古びてなくて、これは本物の力だと思う。 -
映画を観たので、読んでみました。映画とは時代設定も違うけど、ほっこりする世界観は同じ。私が子供の頃よりさらに一時代以上前の話だけど、それでも懐かしい。戦後の貧しい中、物がなくても人々の心は温かかったんだなと気持ちがほんわかした。
-
【収録作品】山のトムさん/パチンコ玉のテボちゃん
*猫を中心に回る一家の様子を大らかに描いているので、何気なく読んでしまうが、実際はかなり厳しい生活だったことだろう。「おかあさん」と「ハナおばさん」のしなやかな強さが好もしい。 -
児童書の翻訳や創作で有名な石井桃子さんの実話を元にした物語。最近たまたま石井さんの山の生活に関する記事を読んだばかりだったので、より感慨深く読みました。
山の中で開墾生活を始めたトシちゃんの家にネズミ退治の為に貰われてきた雄猫のトムの物語。家の人たちのあとをついて野山を駆け巡るトムの姿が愛らしいです。文章が実に素朴で、素朴だからこそ山の生活の大変さと実直さが伝わってきます。 -
石井桃子さんの自叙伝的な話。開墾生活を始めたネズミだらけの家に来たネコのトム。家族に愛され犬のように一緒に山歩きするトムとの逸話。
ぜひ子どもに読んでもらいたい一冊。
時代の事、女性が働く事、元の木阿弥、豪傑などわざと平仮名表記で点付きの言葉の数々…素晴らしい一冊!
小林聡美さんが映画化しているとか。そちらもみてみたい。
パチンコ玉のテボちゃん こちらもクスッと笑える心温まる話。現代ではあり得ない、当時では当たり前の環境。そんな違いも子ども達の柔軟な頭の時にぜひ一読される事を願う。 -
北国の山の中で開墾生活をするお母さんとトシちゃん。一緒に住むのはお母さんの友達のハナおばさんとその甥のアキラさん。
そして、ネズミ退治にと飼い始めた雄猫のトム。
4人と1匹がみな対等に暮らしている気持ち良さ。厳しい暮らしのなかにも工夫と笑いがたくさん織り込まれており、全体的におおらかさを感じ、優しい気持ちになった。
映画を観た後だったせいか、イメージしやすく、読み進められた。心が忙しすぎた時、一度断念していたので、読めて良かった。
石井桃子さんの自伝的作品と聞き、たくましい人だったのだなぁと感じ入る。そして、こんな日常のささいな、けれどとても素敵な出来事の数々を物語に昇華させていることに、あー、いいなぁ。私も毎日をこんな目でみて暮らしたいな、出来れば書き残したいなとつくづく思った。
石井桃子さんのことばが独特で素敵。時間の節約のことを時間の経済と言ったり。トムがネズミと戦うのをおどる、と言ったり。新鮮だった。
トムが狂ったようにネズミを捕る時期、友達をこっそり家に入れてお客の布団に忍び込ませていた話、病気になって牛のお産と一緒に診てもらった話…トムに振り回されながらも生活を楽しむお母さんたちの態度が素敵。
最後のクリスマスのお話はラストにふさわしく、心に残った。キジをとったアキラさんをみんなでワーワー出迎えるシーンは映画のように見えた。
パチンコ玉のデボちゃんもいい話だった。こういう子どもは今もたくさんいて、周りの大人が何をしてあげられるかなのかな、と考えさせられた。
小学校中級以上とあるが、大人が読んでも十分楽しい。
子どもには生活が想像しづらいがもしれないが、1話1話読んであげたい。きっと猫が好きになるはず。
私もまた読みたい。 -
ずっと読みたかった本。期待通り。
ネズミ退治の為に家族になった猫のトムとの生活が生き生きと描かれていて、和む。 何回も読み返したくなるような素敵な一冊に出会えて嬉しい。