- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834027464
作品紹介・あらすじ
水族館が好きな少女が、いつものように水族館に遊びに行くと、水槽はすべて空っぽで、黒い大きな目の少年が、ぽつんと立っています。帰り方がわからないというその少年を、少女はおくっていってあげることにしました。少年は、湖に近づくと、走っていって、そのままざぶーんと、湖にとびこんでしまいました。じつはこの少年の正体は……。幻想的な物語。片山健の油絵がふしぎな異世界をみごとに描き出しています。
感想・レビュー・書評
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片山令子、片山健コンビの絵本は、シンプルな物語でありながら、細部の表現でわたしたちの心の原始的な部分にいつも触れてくる。そこが好きなところ。
本書は、かなこが廃墟となった水族館を訪れるところから始まる。
水族館の魚たちは、すでに別の水族館へと運び出された後。しかし、気配がして中を覗くと、黒くて丸い大きな目をした少年がいるのに気がつく。
かなこは、「かえりかたがわからなくなっちゃったんだ」というその「とくんとくん」という少年を、お家のある「ひすい湖」に連れていってやることにする。
なんとなく想像がつくとおり、このとくんとくんは実は水族館の鯉なのだった。彼は無事、ひすい湖に帰り着くことができた。
お話を要約するとそれだけなのだけれど、「とくんとくん」という変わった名前は、心臓の鼓動、命を連想させる。
とくんとくんは、ほんとうはとくんとくんではないのかもしれないけれど、身の回りの木々や人々がしきりにとくんとくんと音を立てているので、それを自分の名前としたのかもしれない。
そしてとくんとくんを「命の精」として見るとき、彼がひすい湖に帰り着くまでの道程が、ひどくはらはらする冒険に思えてくる。まるで剥き出しの心臓が旅をしてるかのような。
命の糧となる水を絶やさないように、と。
さすがと思ったのは、かなこが乗ってきた/いく電車の「ゴトンゴトン」という音が、「とくんとくん」のアナロジーとして用いられているところ。それで一挙に、命というものの境目が曖昧になり、広々とした眺望が開ける。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とくんとくんって何だろう?から不思議な世界がひろがる。途中からなんとなくヒントが…。
わかりやすくて良かった。 -
不思議な話。なんとなく癒やされてくる、長閑な景色のなかに入ってしまいました。
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かなこは、水族館のなかで、不思議な少年とくんとくんと出会います。
わきあがる泉の水。
冷たい水。
言葉と絵が気持ちを盛り上げてくれます。
少年の正体は、途中でわかりますが、
だからこそ
急いで!
大丈夫かなーと
ハラハラしたりしました。
とくんとくんは、いきている音。
いいな。 -
「とくんとくんとって、いってる。いきている花」
とくんとくん、ゴトンゴトン。擬音と片山のイラストが、すてきなハーモニーで響き合う。生きてるって、いいな。(10分)#絵本 #絵本が好きな人と繋がりたい #とくんとくん #片山令子 #片山健 #福音館書店 -
水の冷たさ、透明感、のどごし、手ざわり。
みずみずしさを感じる物語。 -
お気に入りの鯉だったのか。
不思議な雰囲気。
絵がいい。 -
なんだか知らないけれど、片山さんの絵に惹かれてしまう。これも、図書館の本棚に立てかけてあったものを衝動的に借りてきてしまいました。
不思議な透明感、静けさ、緑や水の匂いが、物語を包んでいて、何度も深呼吸したくなる。娘も、じっと聞き入っていた。
とくんとくん。娘とぴったりくっついて、お互いの心臓の音に耳をすませながら読んだからかな、読み終わったら、娘がやけに甘えん坊になっていて「一緒に寝ようね。」と抱きついてきた。なんでしょう(笑) -
かなこは閉館してしまう水族館で「とくんとくん」という少年に出会い、ひすい湖まで一緒に旅することになる。
「とくんとくん」が誰なのかは多分ある程度大きくなるとすぐにわかってしまうけど、水を浴びて喜ぶ様子はなかなか嬉しいものだ。
みんなこうやってふるさとに帰れるといいんだけどね・・・。
片山健の、描きこんでいながら透明感のある絵が(夫婦だけに)物語とぴったり。