シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

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著者 : 佐藤哲也
制作 : 西村 ツチカ 
  • 福音館書店 (2015年1月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834081374

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シンドローム (ボクラノSFシリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • SF的な始まりしながら実際にSF的要素が出てくるのは後半からである。その間は一体なにが書かれているのか? それは主人公のぼくが後ろの席の女の子、久保田との距離をずっと気にして気にして・・・いや、SF的要素が始まってもそれは変わりはしない。久保田との距離についての決着、或いはひと段落ついたところでこの物語は終わるのだ。少々SF的要素に決着が付かなくても。

    自分流にシンドローム文体を表すならというこんな感じかな、という風に少々くどいように思われる文章もそれは精神的男子高校生の頭の中を視点としているので、最初はとっつきにくいが慣れればシンドロームの世界の住民になり、後半のSF展開がより身近になり恐怖すら感じる。

    よく主人公のぼくは久保田に恋をしている、という感想を見かけるが、読者のぼくは少し違う捉え方をした。
    あれは恋になる前の思春期たる症候群ではないのだろうか。
    実際にほぼ、好きだとか、恋だ、っていう言葉は出ない。恥ずかしいのだ。そう言ってしまうのが。ただ久保田との距離、それも絶妙な距離を保ちたい。他の誰かではなくぼくが。

    主人公のぼくに読者のぼくは共感してしまって、最後は少し心が痛みながらも、読み終えて良かったと思えた作品だった。

  • 某 読書家だと思われたい漫画にて知った本だが、予想以上に面倒臭い思考をする少年の話だった。

    隕石と思われる謎の飛行物体と、未知の生物が高校の近くに落ちてきたため、日常がだんだんと非日常になっていく話だが、そんなことより、自分の好意を寄せている女子が気になって仕方がない主人公は、自分の気持ちや行為(行動に移さないことも多い)を論理的に説明しようとする。

    芥川や太宰がこの本を読んでも「こいつ、面倒くせぇな」と思うはず。

  • 平凡な街を謎の宇宙生物が襲撃する。しかし、主人公である「ぼく」の関心は同級生の女子である久保田に注がれている。そして「ぼく」は紛れもなく恋に翻弄され彼自身の言うところの迷妄に捕らわれながらも同じように久保田に気がある同級生の平岩を迷妄の奴隷、ヒロイズムに酔った人間と軽蔑し久保田は迷妄から離れた神聖なものとしてあつかう。これは世界からしたらまったくもってセカイ系ではないのだが「ぼく」からしたら紛れもなきセカイ系なのだ

    平岩の真意も語られなければ久保田も実は大した応答をしていない。わりと親しげな存在として登場する倉石も実は自身のことはほぼ語っていない。いや「ぼく」のセカイが久保田によって狭められた結果そぎ落とされているのだ。それは異形が街を襲撃する事態であっても例外ではない

  • ある日突然町の裏山に火球が落下する。高校生の「ぼく」はさして仲良くもない平岩に半ば強引に誘われて落下地点を見に行く事になるが、「ぼく」の席の後に座る松本零士の描くところの女性に似た美少女久保田葉子がいっしょに行くと言い出して・・・。

    突然「降って」きた非日常に侵食される日常。じわじわとゆっくり、決して認めたくない現実として。
    繰り返されるフレーズがぐるぐると渦巻きながら、少年の感情を視覚化する。思春期の制御しがたい感情と格闘しながら、主人公は考えたくもない非日常と対峙する。それはこれから起こることかもしれないし、すでに起こったことかもしれない。
    心がざわつく青春SF。若い人ならどう感じるか、感想を聞いてみたい。
    そして、アニメ化、いかがですか?

  • 空は青く澄みきっていた。
    教壇では歴史の教師が午後の眠りを誘う声で話していた。
    クラスの何人かは眠っていた。
    教室が小刻みに揺れて、窓の枠が音を立てた。
    重たい音の波が上から下へと突き抜けていった。
    ぼくは窓のほうに身を乗り出して空を見上げた。火球を見た。
    突然飛来した謎の火球は、八幡山に落下し、深く巨大な穴を残して消える。
    ほどなくして、ぼくの住む町のあちこちで、大規模な陥没が起こる。
    少しずつ、町は地面に飲み込まれていく。
    破滅の気配がする。
    それでもぼくは、中間試験のことが気になっている。
    日常と非日常が次第に溶けあっていく。
    それでもぼくは、久保田との距離が気になって仕方がない。
    彼女を見つめ、ゆるやかに距離を縮めながら、最後の一線は越えることなく、この状況を制御し、迷妄を乗りこなそうとしている。
    静かに迫る危機を前に、高校生のぼくが送る日々を圧倒的なリアリティで描く、未だかつてない青春小説。

  • ぼくらの町のはずれに、火球が落ちてきた。隕石ではないらしく、その正体はわからない。真相究明に熱心な友人、しかしぼくが気になるのは同級生の女子のことだ。
     常に冷めたスタンスでいるぼくは、事態の進行に応じてやはりその態度を保とうとする。文面はそんなぼくの一人称でとつとつと語られていく。自意識過剰な自分を制御しようとする努力、周りの人間へ批評。共感できたし、非常時だろうが人間こんなもんかも知れないというリアリティもある。
     読者をおきざりにするようなラスト、児童書でこの終わり方はありなのか? と非常に疑問を感じたけれど、取ってつけたようなまとめより正解なのかもしれない。
     おかげで読了後しばらく経ってもぼくのフレーズがこだまする。迷妄のとりこ 僕は蔑む ヒロイズムの延長 カドリールを踊る などなど。問題作だと思う。

  • 今、中盤まで読んだところ。
    「ぼくはたまに、考えすぎることがある」(p.116) という文章が出てきて「いや、たまにじゃないだろ!」と、即座に突っ込んだ(笑)。わたしはおばさんなので、評判どおり自意識のかたまりの前半をずーっと笑いながら読んでるけど、当事者年齢だったらうっとうしいかもねw でもそこがいい! 
    「良くも悪くもはっきりとした性格で、妙に正直なところのある平岩」って……w 枕詞がおかしすぎるw

    さて、後半は、どっちへころんでいくんでしょうか。

    ========================
    どっちへころんでいくんでしょうか、どころじゃなく、すごい展開になっていった。

    それでも休むことなく久保田との距離をはかりつづけるぼくの自意識。
    そして学校の教師の(なかでも国語教師の)欺瞞と愚かさをするどく断罪するぼく。
    でもそれはすべて頭のなかの出来事で、外には何一つ出てこない。

    いや、久保田に「これが終わったら映画行こう」ってさそったか(笑)。

    そんな、とってもちぐはぐで日常と非日常がないまぜになった描写が、3.11のとき感じた混沌そのもので、ものすごくリアルだった。家が崩れ落ちるかもしれないから避難指示が出てるのに、戸締まりしていてなかなか出てこない母親とか。

    クセがあるから誰にでも勧められる小説じゃないけど、わたしはすごくおもしろかった。

  • ある日謎の火球が飛来して。沈む地盤、赤黒い触手…。
    「現実」は非現実的な侵略者に侵されていく。
    それでも、同級生の女の子のことばかり考えてしまう主人公。
    主人公は完全に、主人公の言う「迷妄の奴隷」であるなあ。
    ゆっくりと傾いていった日常が完全に非現実的な状況になっても、考えることはたいして変わらない、というところが変にリアリティを感じさせた。

  • 眠りを誘う先生の声を聞きながら授業を受けていた午後、突然、謎の火球が落ちてきた。それは、学校からすぐ近くに大きな穴を残して消えてしまった。町が陥没し始める。破滅の気配。でもぼくには近づく中間試験と、同じクラスの久保田葉子のことが気になってしょうがない。

  • 佐藤哲也さんの「シンドローム」、本日読了。
    福音館書店(!)のSF。
    大好きな漫画家、イラストレーターの
    西村ツチカさんの挿絵が、すごく素敵。
    筒井康隆さんとか眉村卓さんのジュブナイルSFを踏襲している、
    と思わせて、実はかなりひねくれた
    観念的青春小説。
    自分と周辺5メートル以内の人間関係との間に起こる事象と、
    それに対する自分感情、観念とが、
    街や世界を揺るがす漠然とした危機と、
    何の根拠もなくつながってしまっている。
    そんな世界観は「セカイ系」っぽい。
    偏執的な文体(同じ意味を成す文章を、微妙に変えて
    何度もリピートさせる等)は、
    「残念系ラノベ」にも通じるなーと感じた。
    僕は大好き。

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シンドローム (ボクラノSFシリーズ)の作品紹介

飛来した謎の火球。沈みはじめる町。破滅の気配。次第に溶けあう日常と非日常。それでもぼくは、久保田との距離が気になって仕方がない。未だかつてない青春小説。

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