なくしたものたちの国

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834251661

感想・レビュー・書評

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  • 角田光代さんの小説の挿絵が、松尾たいこさんだったこと、
    ピンクベースの装丁がかわいかったので読みました。

    わたしは好きな感覚。
    案外、こういう経験や体験、想いをしているひとっているんじゃないかな。
    他の方のレビューを拝見していて、「怖い」とか「不思議」という方がいて
    改めて、ひとが持つ感情の多種多様性を感じました。

    自分のことでひるがえると、「なくしたものたち」を振り返り、
    内省ばかりの日々もあったけれど、こうやって晩年にまた触れる機会もあるかもしれないという希望も持てました。


    【本文より】
    ・「恋?そうね、ずっとおなじところに何十年も立っているようなものよ」

  • なくしてしまった物(者)たちは、一体どこに行ってしまったんだろう? というのがテーマの小説。
    このお話の「なくしたもの」の範囲は非常に広い。
    あれ?あれはそういえばどこに行ったのかな?という物であったり、亡くしてしまった人であったり。
    幼い頃大切にしていたはずの「物」は、その物自体がなくなっても記憶の中にちゃんと残る。
    亡くなった人はどうなんだろう?

    今、私がここにいるのも、夫と出会って結婚したのも、子供たちがうちの家庭に誕生したのも、いつからか大きなつながりがあったからに違いない。
    すべてのものがつながってここに存在するに違いない。
    そう思える作品だった。

    何かをなくした(誰かを亡くした)人に読んでほしい素敵な一冊だった。

  • なくしものについての5話。現実ともファンタジーとも区別をつけがたい、少し不思議な話たち。小さな主人公がやがて子供をうんで、最後はまた一人。物悲しいようでいて、狂おしいくらいあったかい気持ちになった。
    葉っぱややぎ、ポストや野菜と話せた子供時代は、なんといってもやぎのゆきちゃんが印象的。大好きな先生とデートをするゆきちゃんに、お母さんのかんむりをかしてあげたナリコ。夏休みが終わったらもう話せなかった。それでも、デートの光景をゆきちゃんに見せてもらい、明るい気持ちになる。
    二話目のミケが、知らず知らずに泣いた。ミケの記憶を語り出す銃一郎。ボクがだんだんメス猫時代のわたしになり。ナリコのお母さんも、ミケと言葉に出すわけでもなく自然に再会に涙する場面。私たち人間は、ペットを世話する分だけ守っている気分だけど、思った以上に温かく、大人の器で見守ってくれている、なんて想像するだけで嬉しくなる。一番近くで見ていたよ、っていうようなメッセージを、そうと言わずに、でもその言葉以上に確実に伝えていた、あのやりとり。
    生き霊になる三話目も好き。うまくいかない、運命じゃないから誰かを憎んだりしてしまうんだという言葉に納得。もしかしたら、別の作品のだれかのいとしい人のお話に出てきたあれも、この中の生き霊だったのかな。
    なくしてしまうものや人は、誰にでもある。死は不可抗力だし、ものにしたってなくしたくてなくすわけではない。いつしか疎遠になる人。生きていくって、なんてなくしものが多いことなんだろ。
    でも、そんなものや人にも、いつかまたきっと会える。形を変えてまた会える。その言葉が、この先の私の人生をどれだけ優しく照らしてくれたことか。
    松尾たいこさんのどこか懐かしいイラストも素敵。ひとつひとつ眺めて、作品とリンクしてるものはあるかなと想像してみたり。巻末にそれぞれのタイトルがあり、また最初から照らしあわせて、なるほどとじっくり。
    お二人の後書きも好き。角田さんの本は、いつも後書きがすごく良い。じんとする。
    またいつか、この本を読む時にも、今日感動した気持ちが薄れていないといいな。

  • 角田光代さんは「八日目の蝉」を読んだきりで、それからも全然読んでなかった。松尾たいこさんのイラストで物語を綴った本があるのを知って読んでみたら とても心の中にずーっと入ってきて 小さな小学生の頃を思い出した。

  • 好きだな。山羊のゆきちゃん最高!!(*´∇`*)

  • ファンタジックな話しで、主人公の成子の子供の頃からの成長を連作短編として書かれたもの。
    なくしたものはどこに行くのか。
    この物語を読んで、以前母が話してくれた輪廻転生の話しを思い出した。
    今、いろんな人や動物や物と関わっているけれども、以前もずっといろいろ関わってきてたんだろうねっていうような話。
    松尾たいこさんの絵も懐かしい感じがして素敵。

  • 連作短編集でファンタジー小説。

  • 名作『Presents』に続く松尾たいことのコラボ作品。正直『Presents』のように誰が読んでも感動できるような作品ではないような気がします。それはやはりファンタジー的要素が強いために角田さんお得意の“身につまされつつも読者にちっぽけではあるが、かけがえのない夢を見させてくれる”話ではないからだと思います。一話一話完結した話じゃないのも原因かもしれません。ただ読む人によっては大きな夢を見させてくれる物語であるのかもしれませんし、他作とは違った新たな角田さんの魅力が全開した作品と捉える方がいても何ら不思議ではありません。

    体裁的には連作短編集と言った感じで五編が綴られ、主人公の女性雉田成子の小学生時代から中年にさしかかるぐらいまでが描かれています。
    それぞれの話、うしなったものに対するいろんなエピソードが書かれ、そして人間として一女性として成長を遂げて行くのですが、最終編でのまとめ方はやはり作者の筆力の高さを認めざるをえないと言えましょう。
    ゆきちゃんとの再会によって自分の過去を振り返り、そして明日を見つめて前進して行く姿は本当に微笑ましいです。
    個人的にはタイトルの“なくしたもの”というよりも自分自身の現在過去を問わず“見失ったもの”を見つめなおす機会を与えてくれた読書であった。
    私にとってはやはり“現実感溢れる作家”で、そこを掬い取ることを目的として読んでいるんだなと改めて気づかせてくれました。

  • 無くしたモノ、亡くした人、忘れた記憶、それらは実は「なくしたものたちの国」へ行っただけでちゃんとどこかに存在するんじゃないか?なくしものファンタジーとでも言いたいような作品です。

    いつもの角田光代の「読者置いてけぼり」攻撃が全くない気持ちのよい読後感で驚きましたw
    書こうと思ったら書けるんじゃんwwwって感じですw

    特に八木のゆきちゃんとの件は冒頭もラストもすごく良かったです。
    今でも実際に一部のこどもには動植物と会話が出来たり、過去世を覚えている子がいたりします。
    おとなになるにつれてその能力は失われることが多いようですが、そんなことが出来た頃のことを「いつかなつかしくおもうのよぉ」とゆきちゃんに言われたとおりに主人公は思い出します。

    猫のミケが過去世を覚えたまま主人公の5歳年上の男の子として今世を生きていること。
    でもその記憶は少しずつ失われつつあること。
    母と元ミケ少年が過去世を共有し語り合う機会を得られたこと。

    読めば読むほど「こうであって欲しい」「こうなって欲しい」と私が思うようにお話は綴られていて何度も何度も心が暖かくなります。
    遺物管理課の「忘れこども」の部屋のシーンだけは軽くオカルトでやけにリアルに脳内再生されてしまってちょっと気味悪かったですが、これはこれで面白かったです。

    「八日目の蝉」を読んで以来次々と角田作品を読んできましたが、初めて同じくらい面白かった良かった!と太鼓判押せる作品に出会えましたw

  • ふんわりとした絵本のような小説だった。色んななくしたもの、の話。

    山羊と話ができたり、猫が男の子に生まれかわったり、生き霊になったり。突拍子もないようで、自分も同じ経験をしたことがあると思った。

    「なくした恋と、歩道橋のこと」「キスとミケ、それから海のこと」が好きだったなあ。

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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