はせがわくんきらいや

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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784835440583

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物のはせがわくんは、森永ヒ素ミルク事件の被害者である。障がい者に対して周囲の人がどのような行動をとるのか、絵本で如実に表現されている。子どもたちが事件のことより、目の前のはせがわくんとどうやって毎日すごすかを真剣に考えて行動している様子が手に取るようにわかる。大人のあたまでっかちとは違う行動力に脱帽。

  • 灰谷健次郎さんの感性に興味を持ったので、灰谷さんの絶賛するこの絵本を読んでみたいと思いました。

    障害を持った子どもに対して、子どもが素直に感じたことが率直に描かれています。
    例えば・・・
    「ぼくは、はせがわくんが、きらいです。はせがわくんと、いたら、おもしろくないです。なにしてもへたやし、かっこわるいです。はなたらすし、はあ、がたがたやし、てえとあしひょろひょろやし、めえどこむいとんかわからへん。」
    こう言いながらも、この子ははせがわくんのことを決して見捨てません。


    素直な素直な感情なのですが、そこに悪気はないと思うのですが、「残酷だ」と批判する人もいるそうです。


    子どもたちに読む機会を与え、考えさせることができればと思う一冊ですが、この本の表現を、「こうすべきなんだ」とか、「これでいいんだ」と捉えてしまわないかと、こちらが思案してしまいます。

    教室に置いてみたいと思う、印象の強い衝撃的な一冊ですが、
    教室に置いてあるのをみた保護者や、先生方はどう捉えるかな・・・。
    と心配してしまう自分も恥ずかしながらいます。
    この考え方自身が「差別」なのかな・・・?

    私にはまだわからない部分があります。
    わからないから★4つにしました。

    灰谷さんはきっと心の強い方なんだなと感じます。

    私にとっても、考えさせられる、きっかけとなる一冊になりそうです。

    この本の作者、長谷川集平さんの他の本も読んでみたくなりました。

  • 「長谷川くんきらいや。せっかくぼくら仲ようしたりようのに。」
    きらい、という言葉に込められた長谷川君に対する労わりと愛おしさに、不覚にも書店で手にとって涙をこぼしてしまいました。

    くぎ付けになるページがあります。
    裸で横たわった赤ん坊‥それが何を意味するか‥?
    あとがきの最後の最後の一行まで心のこもった作品。
    子どもが描いたような絵柄は、
    だからこそ、ダイレクトに子ども心を伝えてきます。
    大人にも子どもにも“知ってほしい”内容の絵本です。

    注:私が所蔵するのはこの本の中型版です。
    ブクログの検索には載ってないけど図書館にはあるかもしれません。

  • 森永ひ素ミルク事件の被害者自身が描いた絵本。ブッキングでPickupされていた作品で、表紙に惹かれて読んでみることに。事件について殆ど予備知識がないまま読了しました。“ぼく”が長谷川くんを嫌いや嫌いやと言いつつ、傍を離れようとしない姿に心打たれた。“ぼく”が長谷川くんにミルクを飲ませたのかとおばちゃんに問う場面も、ズシンときた。あとがきも含めて、子ども大人問わず読み継がれてほしい作品です。

  • ヒ素入りの森永のドライミルクを飲んだため、体が弱いはせがわくんを友達の絵日記目線で描いた絵本。とても衝撃的。

  • 母にお薦めしてもらって読んだ本。

    森永のヒ素事件、知らなかった。
    かわいいわが子が、と思ったら居た堪れない。


    20歳の時に書いたってことに驚いた。年下。
    それと、こんな事件が起こっても「森永」は
    なくなっていないことに驚いた。
    人を死なせても、看板下ろさなくて済むんだね。

    むしろ、下ろさせないのかな。

    確か何かの公害の原因となった会社も、
    倒産すると慰謝料を払い続けてもらえなくなるから
    倒産させないようにしてる、って聞いたことがある。

    読めて良かった。

  • 森永ヒ素ミルク中毒事件の「被害者」であった著者の幼少期を描いた作品。体が弱く、何をしても人並みにはできない「はせがわくん」。その「はせがわくん」を、「きらいや」といいながらも、排除せず、根気よくつきあってくれていた「友人」のことを綴っている。

        *    *    *

    作者の長谷川集平さんは、1955年(昭和30年)生まれで、森永ヒ素ミルク中毒事件の当事者です。13000人以上の中毒者、130人以上の死亡者が出た大事件でした。今はもう、語られることも滅多にありませんが、社会科の授業で「四大公害病」を学んだ世代としては、必ず教わっているだろう「知識」です。

    はせがわくんは、作者本人だろうと思われます。ヒ素ミルクのために病弱で、健康な子どもができることができません。足手まといなのです。しかし、そのはせがわくんを排除せず、粘り強くつきあうのが主人公です。いわゆる「ガキ大将」というのとも違うようです。

    思い起こすと、ぼくも3月生まれのため発育が遅く、級友たちとの遊びでは「足手まとい」でした。当時は「おまめさん」とか「おみそ」と言われていたかもしれません。

    例えば、通例だとスリーストライクでアウトとなるところ、4~5ストライクまではアウトにしない、場合によっては、見逃しはそもそもストライクとカウントしない等の「特典」をつけてもらって、やっと「人として」扱ってもらえていた。

    しかしそれらは、「いじめ」や「排除」の順送りとセットでもあったと記憶しています。

    何でもかんでも、昔は「よかった」あるいは「悪かった」とは言いませんし、そうすべきではないと思います。しかし、弱くあるということまでも、ともすれば「自己責任」の中に放り込んでしまう傾向がある昨今、「包摂」であるとか、弱者へのまなざしであるとかを「学ぼうとする」ことは、今の私たちの心がけ一つであると考えます。

  • おそらく,幼稚園・保育園・小学校の先生たちが読み聞かせをする際には,「『きらいや』って言ってるけれど本当は好きなんだよね」という読みをしているんじゃなかろうか.

    最後のページ.はせがわくんを自転車の後ろに乗せ力いっぱい自転車を漕いでいる彼の目は笑ってないぜ.
    好きとか嫌いとかいうレベルの話じゃない.

  • 絵本作家・長谷川集平が自分の体験をもとに絵本にしたもの。

    森永ヒ素ミルク事件の被害者であい、障がいをおった作者の小学生時代のエピソード。モノクロで力のあるイラストと、関西弁がきいてて、引き込まれる。

  • 彼が口にする「きらいや」という言葉には愛がある。そう感じるのは彼の行動に愛があるからだと思う。
    同情や憐みではない。知らない、分からない、だから付き合ってみる。上っ面ではない子どもの優しいとは、どのようなことなのかを考えさせられました。

    ヒ素ミルク中毒事件というものが実際に日本で起こり、そして被害にあわれた方々がいてることを忘れてはいけないという気持ちになる一冊です。

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著者プロフィール

1955年、兵庫県姫路市に生まれる。
絵本、小説、評論、翻訳、作詞作曲、演奏など多様な表現を試みる。長崎市在住。
1976年第3回創作えほん新人賞を受賞した『はせがわくん きらいや』(すばる書房/現在、復刊ドットコム)でデビュー。
森永ヒ素ミルク中毒事件(長谷川自身もヒ素の入った粉ミルクを飲んだ)を扱いながら、日本人の生活や心理を大胆に切り取り、斬新な絵本作法で鮮烈なデビューを飾った。
『見えない絵本』(理論社)で、1990年第20回赤い鳥文学賞。
『石とダイヤモンド』(講談社)、『鉛筆デッサン小池さん』(筑摩書房)で、1992年第14回路傍の石文学賞。
『ホームランを打ったことのない君に』(理論社)で、2007年第12回日本絵本賞。
ジャンルを問わず作品多数。2012年、第34回姫路市芸術文化賞。
2013年『およぐひと』、2014年『アイタイ』(解放出版社)を刊行。原発災害に向き合った視点を貫く。
2002年から京都造形芸術大学客員教授。

「2015年 『あなに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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