ハリスおばさんパリへ行く (fukkan.com)

  • 復刊ドットコム
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784835441641

作品紹介・あらすじ

ハリスおばさんが、節約とくじでお金を貯めパリのディオールの店で念願のドレスを手に入れました。しかし…。

感想・レビュー・書評

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  • 1958年、原題はFlowers for Mrs. Harris。
    ハリスおばさんの勇気、洞察力、忍耐強さ、優しさに大いに励まされる!

  • 映画と共に楽しみました。
    ドレスを作ったあとのエピソードのほうが、心に残ります。単なるハッピーエンド小説ではないところが、魅力です。

  • 子供の頃から通算して、かれこれ4度目の読了である。懐かしい再会というところだろうか。こちらは『復刊ドットコム』の投票を基に講談社少年少女文庫から復刊した版。角川文庫からこのほど、同じ翻訳者様の手になって『ミセス・ハリス、パリへゆく』と改題。若干訳文にも手が入ったのだろうか。昨年映画にもなったと聞いた。

    ロンドンの下町なまりもそのままの、ハリスおばさんは家政婦で未亡人。もうすぐ60歳というが、この作品が書かれた頃には、そろそろ老境の入り口だったろう。毎日お得意様の掃除をし、親友のバターフィールド夫人とお喋りしたり、花の世話をするのが生きがいのしっかり者。その彼女が、お得意先で、オートクチュールのディオールのドレスに一目惚れをする。

    「私もディオールのドレスが欲しい!」

    そんな贅沢品は目もくれず、堅実に生きてきた彼女。さあその日から懸命に働き、倹約し倒す。彼女の一大決心は叶えられるのか??

    皆さん、シンデレラストーリーだと感想を述べられているし、映画のアオリもそうなっている。でも、私はこの話、ただのおとぎ話じゃないと、断固主張したい。だって、ハリスおばさんは、懸命に働いて、決心してから何年もかけてパリに行くのだ。最近のご都合主義とは違う。ほいと他力本願だけで話しが転がっていくんじゃないのだ。お察しの通り、おばさんはドレスを手にする。
    だけど、それだけで

    『はい、シャンシャン良かったね。』

    ではないのだ。私が最初にこれを読んだのは、確か小学4年生。その頃はお話にわくわくして、パリでおばさんが堂々とドレスを買い求める姿に憧れたのだが、今読むとこの本、とても手堅い翻訳文学で、いいものに出会ったのが解る。当時は出てくる一流ブランドの名も、カルティエとディオールくらいしか知らなかった。決して、子供向きに優しく書かれているわけではない。

    おばさんは、最初は怪訝な顔もされ、悔しい思いもする。ディオールの店が彼女を受け入れ、そこでお客と認められたのは、彼女の持参した金の力もさることながら、何よりそのチャーミングで温かい人柄のせいだ。50代の女性がディオールを着るなんて、現代じゃ普通のことだけれど、まだイブニングドレスが普通に必要だった時代。女達は帽子をかぶり、手袋をするのが、どんな階層の人であっても常識だった頃のことだ。まさに

    「あなたがその(年齢でその)ドレスを着るの?」

    という言葉が飛んできそうである。でもおばさんは、まるで少女のように、きらきらと目を輝かせ、運命の一着を選ぶのだ。その一途さ。けなげさ。ハリスおばさんの心の中には、瑞々しい少女が、まだ住んでいるのだ。魅了されないわけがあろうか。そうして、夢を買いに来た側のはずのハリスおばさんが、店に集う人々に、親身になって力を貸してゆく。その楽しい交流の様子はお読み頂くとして。(だって一番楽しいところ、書いちゃったらつまらないではないか!おばさんと一緒にパリ旅行、ぜひ皆様にもして頂きたいもの。)

    このお話、すごいなあと思うのは、ただめでたしでは終わらないところ。ハリスおばさんは幾度も、『分別のある』『地に足をつけて生きてきた』と描かれる。人生の荒波をよく知っている人なのだ。おばさんの思慮。優しさ、そしてこころのつよさが、このお話を名作にしている。ほろにがいラスト近くの展開、何度読んでも胸がぎゅっとなる。ハリスおばさんのちいちゃな身体を、優しく抱きしめたくなるのだ。

    子供の頃の記憶では、その衝撃の展開から先の、麗しく、香り高い結末を、私は覚えていなかった。大人になってからも読んでいるのに、驚くべき展開と、おばさんのした、もう一つの決心だけを覚えていたのだ。よほどの事とお察し頂きたい。すごいから。本当に。

    ちなみに、ハリスおばさんのドレスの名は『ユウヤク』
    ―『誘惑』。少年少女文庫版の本には、冒頭にカラーで口絵がついていた。大人っぽいネイビーブルーに黒のスパンコール。煌く星がきらめくドレスだ。ドレスと言えばピンクのふわふわしか知らなかった私に、違う世界の予感を残したのは、間違いなくこのドレスだった。たった1つ持っている、クリスチャン・ディオールのバッグは、奇しくもネイビーブルー。不思議な縁である。

    ギャリコの作品はどれも、こころ美しく優しい。どんなに世界が荒れても、子供にも大人にもぬくもりを残す。幸福が必ずしも、完全だったり、傷のないものの事を指すのではないと、滋味をもって教えてくれる。長い時を越えて、これからも読みつがれて欲しい名作ばかりだ。

    次の『ニューヨークに行く』も借りてあるが、一冊間に入れながら、シリーズ再読破といこう。

  • ちょっとほろりとする、心暖まる良いお話です。
    ハリスおばさんは、パリで、ディオールの服を手に入れたのではなくて、幸せな気持ちを手に入れたのですね。

  • 児童書だけど、十分大人も楽しめる。
    逆に大人だからこそわかるところもあると思う。
    ギャリコさんが、ハリスおばさんを愛していることがよく伝わってきた。
    続きを読もうと思う。

  • 市井の女性の慎ましくも心豊かな生活ぶりに感動☆
    その後いろいろ事件が起こるのですが、ポイントはココ。

  • すごく良かった。児童書なのでサクサク読める。そしてハリスおばさんがとても良い。金持ちを羨んだり僻んだりすることもなく、しっかりした善良なおばさんだ。ディオールのドレスを欲しがるというのは意外だが、何かにすごく惹かれたり、なんとか手に入れようと頑張ったり、なかなか上手くいかなかったりするのは誰でも経験があるんじゃないだろうか。ラストも良かった。
    続編の「ニューヨークへ行く」も読みたい。

  • ハリスおばさんの人柄がすばらしい。

  • 何より翻訳が美しい。この綺麗な日本語があって、ハリスおばさんの矜恃、パリの紳士の紳士らしさが際立つ。大人にも子どもにも読んで欲しい児童文学の名作。

  • この優しさがわかる人でありたい、そういう人であってほしい

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著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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