その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学 (単行本)

著者 :
  • 三笠書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837925576

作品紹介・あらすじ

「人の心の仕組み」を知って、正しい選択をするために―

行動経済学では、人は「得した喜び」よりも
「損した苦しみ」を2・5倍強烈に感じると言われています。
だからこそ誰にでもある「損を避けたい」という
本能が、逆に、さらなる損を呼んでいるとしたら――。
こんな悲劇の当事者とならいために、
これだけは知っておく必要があるのです。 ――大江英樹


こんなとき、何を考え、どう行動しますか
――絶対に“損をしない”のはどっち?

★「あと500円買えば、1時間駐車無料」と言われたら?
★「ランチビュッフェ」で元をとるためには?
★「毎月分配型」金融商品ならお得?
★「成功率95%の手術」と「20回に1回失敗する手術」どちらなら受ける?
★「1万円借りても、利息は1日たったの5円!」――これなら借りてもいい?
★年金未納率40%――それでも年金は得?

感想・レビュー・書評

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  • 行動経済学を自分の接客に活かせないかと思い、この本を手に取った。以前にも別の「行動経済学」を本を読んでいるが、復習も兼ねてこの本を読ませてもらったが、こちらのほうが現実の生活に即した具体例が多く、わかりやすいかも。


    【新たな気づき】
    ●「モノ」にお金を使うよりは、やはり「コト」に使ったほうが良さそう。
    ●少ない選択肢の中から選んだ方が、満足度が高い。

  • 【感想】〜損得と幸福は矛盾するという話〜

     損得では考える限り、必ずどこかで損をする。読後、この逆説的な印象を強く受けました。

     一番とっつきやすいのが、保険の話。まずテレビのある家庭、YouTubeを見る人なら、必ずと言っていい程どこかで目にする感動のCM。実際に癌を罹患した方が出演したり、ストーリも作り込まれたよい話。また、社会人になれば必ず、何かのタイミングで周囲の大人から勧められたり、就職・結婚・引っ越し、自動車の購入などのイベント毎についてまわる保険。

     実は株式や投資信託と同じ金融商品であるということを完全に忘れてしまっているのでは、と感じます。学校で習うわけでもないこれら金融商品に一般の人が無知なのは当然で、無料で相談できる企業などがあっても、結局は、相談に乗ってくれる人も、会社も、契約によって収入を得るために、殆どの人が不必要な保険に加入している、無駄に保険料を払い続け損を重ねているという事実を聞くと恐ろしいばかりでした。

     同じように誤解されているのが“年金制度”で、基礎年金の半分は国が出すことになっており、制度が崩壊すると言っても、全体の2,9%(年金加入者対象の内)の未納率しかないのに、年金制度が破綻するという都市伝説を信じては未払いのまま損をする人の存在などが明らかにされています。また、所得控除から考えて、おおきな損失をしている「個人年金保険」の利用者が多いというのも驚きでした。

     人間は放っておけば、どこまでも無知のまま損失を肥大化させ続けてしまう…。

     “損”はお金だけのことに限らない。本書が教えてくれるのは、対人間関係や集団内でも、人間の認知が損失を呼び続けるということ。

     ぱっと思いつくのは、DVを受けている人や、働かない配偶者のために身を削って働いていたりする人。集団内でいじめを受けていて、甘んじて自分が悪いとその状況を看過してしまう人。

     傍から見たらどうしてその関係を継続しているのか不思議であったり、当事者でも、辞めたいと思いながらそこから抜け出せない心理にも、多数の、人が陥りやすい心理が隠されていることが思い浮かびます。

     例えば、恋人・配偶者が暴力を繰り返している関係。友人や家族が「もう離れないとあなたが危ないよ」と忠告しても、その関係をずるずると継続してしまうパターン。

     “いったん手に入れたものを手放すのが惜しい”「保有効果」が働きます。さらにうまく適合するのが“現在の状態から何かを変えるということに対して抵抗を抱く”「現状維持バイアス」がこの醜悪な環境を維持させようとし続け、“すでに払ってしまっていて、手元に戻ってくる可能性のないお金(この場合は時間)”(サンクコスト)へ執着するあまり、自発的この関係を断ち切ろうとする意志を喪失してしまう。

     傍から見れば馬鹿らしいような問題でも、当事者からしてみれば、このように次々にのしかかってくるバイアスのせいで、苦しい状況から抜け出せないのではないかと思ってしまいます。

     とりわけ身近に感じる例は“夏休みの宿題と生活習慣病”で糖尿病患者の大多数が、夏休みの宿題を休みの終わりへと“先延ばし”する傾向にあった研究が面白いです。

     過度な糖分接種や運動不足が、自分にとってゆくゆくは大損失をもたらすことは分かっているけど、今、目の前にあるケーキやラーメンを食べたいという欲を我慢する目先の損を耐えることができない。

     “遠い将来のことはあまり評価しない”「双曲割引」いう心理が説明されていますが、「アリとキリギリス」の寓話を思い出してぞっとしました。
     
     さらに恐ろしいのが“人間は原因と結果がストレートかつシンプルな因果関係を求める”心理です。

     頭痛がすれば、頭痛薬を飲もう。私は頭痛持ちだから、整体に通う。一見、何の問題もない行動に見えますが、頭痛の原因は、普段の姿勢が悪いからかもしれない、普段の姿勢が悪くなるのは、PCやデスク作業の時、椅子や机の高さがあってないのかもしれない。いや、待てよ。高いお金を払って、そのば限りの気持ちいいをなくすんじゃなくて、毎日ヨガやストレッチの習慣をつけた方がいいかもしれない。と本来なら、一つの結果(頭痛)に対して、様々な原因があり、対処も複数存在するはずですよね。

     これらの“人間の性質”を考えると、「依存症」への見方が変わってきます。

     本書で取り上げるのが“ソーシャルゲーム”ですが、これは過去に自分が経験してきたこともあり、真摯に受けとめることができました。

     実体験をあげるとF○te。所謂、アーケードRPGで、ストーリは史実をモチーフにしたキャラクターを扱い、敵を倒すことで、ストーリを追いかけていく構成なのですが、魅力的なキャラクターと、独特の世界観あら作り出されるシナリオで、無課金でも楽しめるゲームです。

     私も無課金だったのですが、“レアや期間限定に弱くなる”「稀少性の原理」から、生活費を削ってまで課金するプレーヤーも多く、ガチャシステムにはもちろん“直感の得感が、リスク確率の計算を度外視する”「確率の誤謬」さらに、これまで時間もお金をかけてきたわけですから「サンクコスト」も当然のしかかってくる。

     私の陥ったのは「サンクコスト」で、1日中プレイすることもあって、「分かっていてもやめられない」状態で、時間を浪費してしまっていました。

     これがパチンコや、競馬だったら。そう思うといまでもぞっとします。

     ギャンブルやゲームには手を染めて無いから。私は大丈夫。そんな人も、多分に漏れず影響を受けているのが“身近に起こったことや目の当たりにしたことは起こる確率が高くなると錯覚する癖”「利用可能性ヒューリスティック」です。

     12月も末になると、拍子木のカンカンという音の後に「火の用心」とならす習慣。冬の風物詩のように思っている人も、一晩開けると、火災のニュースを目にする、なんて経験はないでしょうか。

     1月・12月の火事の確率は他の月よりも高い水準にある。だから、ああして火事の注意喚起を行っているのですね。

     ガンや交通事故、空き巣、痴漢、ストーカー、殺人。これら確率的には低くても、ゼロとは言い切れない。そんなリスクを日々抱えていながら、被害者はみな口をそろえて言います。「まさか自分がそうなるとは」
     
     裏を返せば、自分だけが大丈夫なんてないことが分かります。

     宝くじを買う人は「この店から大当たりがでました!」なんて、店頭放送や張り紙を見たことがあるかもしれません。それも、パチンコの隣の台が当たっている。競馬で隣の人が当てた。これらとそう変わりません。

     極めつけは、“表現の仕方によって同じことでも印書がガラッと違う”「フレーミング効果」“くらべやすいもの”にミスリードされる「おとり効果」で、自分で選択しているのではなくて、選ばされていることです。

     手術を受けるとき、95%の確率で成功するのと20回に一回失敗するのは同じ確率なのに、言い方によって、恐怖を覚えてしまう。

     洋服は値札から大幅な値引きをされているのをお得がって買うけれど、相場を見てみれば、もっと安値であったり、急な出費に対して定期預金を崩せば一括で買える処を、わざわざローンを組んだり、学歴や性別ですでに思い込みが働いたり。。。

     人間ってかなりいい加減な生き物なんだってことが分かります。

     これらのバイアスも、家庭環境によっては、男らしさ、女らしさというバイアスを植え付けられ、こうあるべき、という理想に縛り付けられてきた人もいるかもしれません。

     そういった、日常の些細なバイアスを、少しづつ凝り固まった思考をほぐすように、考えなおしていくのも本書からまなんだ楽しみ方の一つです。

     スタバではベンティサイズを頼んだ方がお得。こんな日常から私も、一つ一つ考えて行こうと思いました。

     このような人間の脳の癖を知っておかなければ、今自分が考えたり、願ったり、希望していることが、実は自分の意志ではなくて、脳の癖や、巧みに誘導されているのかも分からずに、ひたすら時間とお金を浪費し続けることになる。というのが、本書のメッセージのように思いました。

     しかし、人間、数字上の確率や損得で正しい方を選択した時が、もっとも幸福度が高いかと言われると、数字ではもっとも損をしているのにもかかわらず、最も幸福な人もいるのかもしれません。

     幸福度や人生の充実、豊かさと行動経済学が明らかにする損得を踏まえた行動、消費は元来、相容れない性質のものなのかもしれません。

     自分の瞳に映るすべての景色を、損か得かで眺めようとした悲しい人間を描いた『クリスマスキャロル』(ディケンズ)を思い返さずにはいられない本でした。

    【要約】
     “損”の苦しみは“得”の喜びの2~2,5倍大きい、“プロスペクト理論”から、損をすることを異常に嫌うという“損失回避”へ向かう心理のおかげで、人間は逆に損を重ねてしまう。

     人間は損失を避けようとするときに、心のうちに、いったん手に入れたものは手放すのが惜しくなる“保有効果”や、現在の状態から変化することを極端に嫌う“現状維持バイアス”、すでに払ってしまっていて、戻ってくる可能性のないお金“サンクコスト”へ執着するあまり、損を重ねてしまう。

     さらに保険等の金融商品を前に、自分が判断できる範囲を逸脱した“情報負荷”や不安になると麻痺する金銭感覚から、感動CMや極端に安心を求める心理が働き、入る必要のない保険や、自分の払ったお金という事実を忘れ、お祝い金等を喜ぶあまり、見直しをしないという選択をしてしまう。

     新聞の大見出しの数だけで、物事を判断することで、数字の判断を見誤ったり、95%と20回に1回等の表現の仕方によって同じことでも異なる印象を受け取るなど、数字の扱い方には、注意が必要である。

     生活習慣病と密接に関わってくるのが、双曲割引で、遠い将来のことは価値を低く見積もってしまう心理から、目の前の欲求を我慢することで後の損失を回避することができなくなってしまう。

     ソーシャルゲームやギャンブルには、人が熱中して、正常な判断をできない状態になる仕掛けが多く、直感の得感が、確率のリスクを上回る“確率の誤謬”や珍しい、レアの物の価値を過大評価する“希少性原理”“サンクコスト”が落とし穴である。

  • 行動経済学を身近な事例からわかりやすく説明している一冊。

  • 行動経済学をらわかりやすく、素人目線で書いてます。
    あるあるが満載。人生の選択は合理的でないことばかりだけと、それは合理性だけが人間の基軸でないから当然かとも思った。

  • 行動経済学の初歩的な内容。人間のお得をしたいという気持ちが不合理な行動へと誘う。
    全て合理的には人間は動けないし、そこがまた面白いところ。

  • 長い間、積読状態だったのですが年末年始の休みを利用して短時間で読むことができました。
    行動経済学について、事例を列挙してとてもわかりやすく解説されていました。
    賢く、損することを最小限にして生き抜くためには行動経済学の知識は不可欠だと考えていますので、こういった本の知識をしっかり頭の中にしみ込ませておきたいと考えます。
    内容は既存の行動経済学の名著からの流用が多く、新しく得るものは少なかったように思いますが、復習・再認識の意味合いからわたしにとっては十分に対費用効果のあるものでした。
    付箋は27枚付きました。

  • お金

  • 「あるある」気分で読め、自分の行動を見つめなおせる本
    投稿者 ライター希望 投稿日 2014/12/3

    この本には、よくありがちな消費者の心理行動が書かれており、それに対して、その行為が損につながることを述べていた。紹介されている行動の多くがまさに「あるある」。おそらく誰もが経験していることであろうことから「損」につながることを紹介している。

    私にとって、身につまされたのが「『元をとろう』は相手の思うツボ」や「もったいないという気持ちがさらなる損を生む」ということばだった。ランチビュッフェに行き、元をとらなきゃとばかりに食べ過ぎて、具合が悪くなってしまえば、かえってそのほうが自分が損する羽目になるし、あらかじめ前売りを買っておいた映画を観に行った際に、予想以上につまらなかったとしても、せっかくチケットを買ったのだからもったいないという意識が働き、最後まで観てしまうという行動は、充実した時間を逃しているため、損をしていることになる。作者が挙げている一つ一つは、これまでの自分の行動の中で当てはまるものがあり、いかに自分が損をしてきたかを思い知らされる。

    だれでも1日は24時間と決まっている。その24時間を充実したものにするには、自分が抱えている時間に対する意識が必要だ。自分の中で合理化を意識することで日常生活も目標ができ、良い方向で変わっていくだろう。

    現状と今後を見据えた考え方にヒントを与えてくれる1冊だった。

  • 金融や経済に精通する著者が私たちが普段してしまう不合理な行動について行動経済学の観点から解説した一冊。

    些細な行動から仕事や人生の選択など様々な物事についてなぜそのような行動をとるのかということが著者が精通する経済学の観点から書かれており、自分の立場に立って考えながら勉強することができました。
    また、章末にはポイントが書かれており、損をしないための考え方や行動が具体的に書かれており参考になりました。
    そして、本書を読んで普段してしまう何気ない選択が人間の行動心理や行動経済学の用語で説明できてしまうことに驚きました。

    ハロー効果やヒューリスティックや参照点からの変化など日常生活の中で行われていることには行動心理に基づいているものが多くあることを本書を読んで感じました。

    本書の中でも確証バイアスによって広告はすでに買った人のためにもあるということは初めて知り、広告や保険に対する考え方が変わりました。
    また、言い方を少し変えるだけで印象が変わることも強く感じました。
    あと役員の質問の対処法として素早く答えることというのは参考になりました。

    本書で学んだ考え方や立ち居振る舞い方を頭において不合理にならないためのルールを作ることが大事であると感じた一冊でした。

  •  良書。おすすめ。
     行動経済学の本だが、お金に限らず、組織内の人事評価や人生の中でいい選択をするための指南も含まれる。

     結論としては、「人間は放っておくと不合理な行動をとりがちで、ついつい損になる選択をしてしまうものだ」という事実をよく知った上で、自らの行動のルールを作ってそれを守る習慣を身につける必要がある、ということ。

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著者プロフィール

経済コラムニスト/㈱オフィス・リベルタス代表
1952年、大阪府生まれ。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニングに関する講演・研修・執筆活動を行なっている。『定年前、しなくていい5つのこと』『お金の賢い減らし方』(ともに光文社新書)、『知らないと損する年金の真実』(ワニブックスPLUS新書)など、著書多数。

「2023年 『50歳からやってはいけないお金のこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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