ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837956662

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳者である大前研一は書名をアルビン・トフラーの『第三の波』に倣って『第四の波』にしようかと思ったそうだ。つまり、情報化社会(第三の波)の次に来る発想力・企画力社会(第四の波)の到来というわけである。

    <blockquote>豊かさのおかげで、多くの人の物質的ニーズは過剰なまでに満たされた、それによって美しさや感情面を重視する傾向が強まり、物事の意味への追求に拍車がかかった、(P.96)</blockquote>

    情報はネットで検索すれば手に入る。ルーティン的な仕事、反復的な仕事は労働単価が低い海外へアウト・ソーシングされる。このような社会では下記のようなことを自問自答していかねばならない。
    1)他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか。
    2)コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか。
    3)自分が提供しているものは、この豊かな時代でも需要があるだろうか。

    これから求められるのは以下の6つの感性(センス)。

    ・「機能」(実用性)だけでなく「デザイン」(有意性)

    ・「議論」よりは「物語」

    ・バラバラの断片をつなぎあわせる「調和」

    ・「論理」ではなく「共感」

    ・「まじめ」だけでなく「遊び心」

    ・「モノ」よりも「生きがい」

  • 1年以上積読状態でした。大前氏が絶賛する割りには、いまいちでした。ダニエル・ピンク氏の著書は、「フリーエージェント社会の到来」のほうが秀逸です。EQ、右脳型、文脈社会、感性価値、モノからコトへ、といったテーマを掲げている類似書はたくさん出ています。そのうちの一つに過ぎません。

    あえてよい点を挙げれば、大前氏の解説が分りやすい点です。第二部は、事例こそ豊富ですが、日本人に馴染みのないものも多く、ボリューム感の割りには得るものが少なかった印象です。



    目次
    訳者解説 これからの日本人にとって必読の教則本 大前研一 9
    〔はじめに〕「専門力」ではない「総合力」の時代! 26

    第一部「ハイ・コンセプト(新しいことを考え出す人)」の時代
    1なぜ、「右脳タイプ」が成功を約束されるのか 34
    2これからのビジネスマンを脅かす「3つの危機」 66
     原因は「豊かさ、アジア、オートメーション」
     第一の危機 「過剰な豊かさ」がもたらす新しい価値観
     第二の危機 次から次へと湧き出す「競争相手」
     第三の危機 そんな脳では、すべて「代行」されてしまう!
     この「ジリ貧パターン」からは、医者や弁護士でさえ抜け出せない
    3右脳が主役の「ハイ・コンセプト/ハイ・タッチ」時代へ

    第二部 この「六つの感性」があなたの道をひらく 122
    1「機能」だけでなく「デザイン」 126
    2「議論」より「物語」 166
    3「個別」より「全体の調和」 204
    4「論理」ではなく「共感」 240
    5「まじめ」だけでなく「遊び心」 272
    6「モノ」よりも「生きがい」 312

    〔あとがき〕
    これからの成功者と脱落者を分ける3つの「自問」 346

    ----
    p10 格差社会について
    上のほうはアメリカのプロフェッショナルに引っ張られる。非常に給料が高い。下はインドや中国に引っ張られる。人件費が安い。人口分布は「M型社会」になっていく。
    p11 上にいくためにはどうしたらいいか
     1「よその国、特に途上国にできること」は避ける
     2「コンピュータやロボットにできること」は避ける
     3「反復性のあること」も避ける
    p15 第四の波
    「情報化社会」から「コンセプチュアル社会」へ
    p18 教育革命
    みんなの意見を聞いて消化した上で、「自分はこう思う」、また、「自分の考えは違う。しかし、俺のほうが正しい」−そういう仮説のもとに作っていくという力である。先生の役割は、すべての生徒が異なった答えを出したときに、クラスの議論を指導したり、そこから新しい知見を生徒が導き出せるように誘導してあげることだ。言い換えれば、これからは「カンニングOK」の社会になるのだ。
    以上、大前研一

    63 左脳タイプ vs 右脳タイプ
    左脳主導思考ー連続的、逐語的、帰納的、分析的
    右脳主導思考ー同時性、比ゆ的、美的、文脈的、統合的

    170 「議論」より「物語」
    事実というのは、誰にでも瞬時にアクセスできるようになると、一つ一つの事実の価値は低くなってしまうものだ。そこで、それらの事実を「文脈」に取り入れ、「感情的インパクト」を相手に伝える能力が、ますます重要になってくるのだ。

    全体の調和
    212 「これから成功する可能性大」の3タイプ
    ・「境界」を自分で超えていく人
    ・何か「発明」できる人
    ・巧みな「比喩」が作れる人
    214 ミハイ・チクセントミハイ「創造性の大部分は伝統領域の境界を超えることにある」
    215 ニコラス・ネグロポンデ「技術面での行き詰まりが、技術者ではない人によって解消されることはよくある」
    215 ミハイ・チクセントミハイ クリエイティブで才能豊かな女性はそうではない女性よりも支配的でタフであり、クリエイティブな男性は、他の男性に比べて繊細で攻撃性が低い。精神面が中世的な人は、事実上対応のレパートリーが倍になる。

    共感
    242 共感は、想像力によりもたらされる大胆で驚くべき行動であり、究極のバーチャル・リアリティなのだ。他人の心に入り込み、その人の視点で世界を体験するのだから。

    遊び心
    275 ブライアン・サットン=スミス
    遊びの逆は仕事ではない。抑鬱だ。遊びとは、自分の見通しが確実であると信じているかのように行動で表現し、意思を強く持ち、それに打ち込むことである。

    生きがい
    315 ロバート・ウィリアム・フォーゲル(ノーベル経済学賞受賞者)
    精神的(または非物質的)な不公正は、現在、物質的な不公正と同じくらい、あるいはそれ以上に重大な問題である

    319 ダライ・ラマ@MITにて
    科学と仏教とはとてもよく似ています。なぜなら、どちらもリアリティの本質を探ろうとしているからです。そして、どちらも、人類の苦しみを軽減することを目標としているのです。

  • 「知の衰退」での紹介。でも本当に世界のビジネスリーダーが読んだ本なのだろうかという印象もある。

    【要約】
    ・これからは新興国やシステムの隆盛によって、これまで通りの仕事のやり方ではジリ貧
    ・新しいことを考え出す=新たな価値観の創出こそがシフトするべきステージ

    【ノート】
    ・重要な3つの問いかけ
     この仕事は他の国ならもっと安くやれるだろうか
     この仕事はコンピューターだともっと早くやれるだろうか
     自分が提供しているものは豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

  • ドラッカーやトフラーが予言し、出現した「知識社会」。この社会構造の変化にいち早く対応したアメリカが繁栄を手にした。しかし、繰り返し可能な知識(形式知、例えば、単純なアプリケーションソフトや税務申請書)は、賃金が安く知識レベルの高い国(インドや中国)にアウトソースされたり、ソフトで代用されることにより、この国家的繁栄は、必ずしも個人には当てはまらない。この本では、ポスト知識社会が「ハイ・コンセプト社会(暗黙知、複雑知)」であることを予言し(当たり前だが)、その中で個人がいかに社会の中で自分のポジションを作り出すかについて言及している。面白くないが、自分の賃金の妥当性に自信の無い方にお勧めする。

  • "これまでの、効率化、大量生産を是としてきた20世紀から21世紀となり、これからの時代はどんな時代になるかを、個人の役割に落とし込み描いたのが本書。
    ハイコンセプトの時代と命名し、これからの社会に必要とされる能力を提案している。
    左脳よりどちらかというと右脳がつかさどる能力が今後必要な能力だと喝破している。

    まず自分の仕事を振り返り以下の質問に答えてみる
    ?この仕事は、他国ならもっと安くできるだろうか?
    ?この仕事は、コンピュータならもっと速くできるだろうか?
    ?自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

    当て張るのであれば、以下の従来とはまったく違うアプローチで仕事を見つめてみよう。

    1.機能だけでなく「デザイン」
     ・気になったデザインは忘れずに記録してみる
     ・デザイン誌に触れる
     ・美術品を見に行く。ミュージアム

    2.議論よりは「物語」
     ・ミニミニ短編小説を書いてみる
     ・自分史を語る
     ・質の良い短編を読む
     ・物語の完成を磨く書物
      Story-Substance,Style,and the Principles of Screen-writing
      マンガ学-マンガによるマンガのためのマンガ理論
      千の顔をもつ英雄

    3.個別よりも全体のシンフォニー(「調和」)
     ・優れた交響曲を聞く
     ・気にも留めなかった雑誌を購入、じっくり眺めながら自分の生活、仕事との関連を探す
     ・バランスを高める書物
      Beethoven's Anvil: Music in Mind and Culture
      Powers of ten 宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅
      レトリックと人生
      No Waste
      How to see-A Guide to Reading Our Man-made Environment

    4.論理ではなく「共感」
     ・ポール・エクマン博士の本を読む
     ・演技力は大事
     ・ボランティアの効用

    5.まじめだけでなく「遊び心」
     ・世界笑いの日

    6.モノよりも「生きがい」
     ・生きがいを考える書物
      夜と霧
      世界でひとつだけの幸せ
      フロー体験:喜びの現象学
      このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?
      心はマインド・・・「やわらかく」生きるために
      ダライ・ラマ 心の育て方"

  • いかにもヤッピーぽい感じ。ここでまたフランクル博士の「夜と霧」が取り上げられている寄寓にびっくり。このあと読まなくては。

    P21 日本人はそこが下手だ。「類は友を呼ぶ」で同じような発想をする人間だけで群れを成してしまう。それではダメだ。自分とは全く対極的な人と仲良くいろいろなことを語り合って物事を創造していく。頭が片利きの人はこういう人間関係の工夫によって付加価値を高めていかなくてはならない。

    P122 6つの感性(センス)
    ?デザイン
    ?議論よりは物語
    ?個別よりも全体の調和
    ?論理ではなく共感
    ?遊び心
    ?モノよりも生きがい

    P159 世の中には3種類の人間がいる。文化の創造者・文化の消費者・文化など意に介さない人。最初の二種類の人間のどちらかになるようにする。

    P170 事実というのは、誰にでも瞬時にアクセスできるようになると、一つ一つの事実の価値は低くなってしまうものなのだ。そこでそれらの事実を「文脈」に取り入れ、「感情的インパクト」を相手に伝える能力がますます重要になってくるのだ。

    P228 全体像を見る能力は(中略)さまざまな精神的苦痛に対抗する手段として、最も重要なものではないだろうか。(中略)このような現代病に対する最良の処方箋は、文脈や全体像の中で生活を捉え、本当に重要な問題と、単に不快なこととを見極めることかもしれない。(中略)人間のあらゆる可能性を踏まえた形で自らの人生を理解する能力が、生きる「意義」を追い求める上で必要不可欠なのではないだろうか。

    P263 共感とは、知性からの逸脱でも、知性への唯一の手段でもない。人は多くの場合、他人と調和する必要があるが、時には孤立することも必要だ。これからはこの二つを切り替えられる人が成功するのだ。

    P327 私たちは、生まれつき遺伝子に組み込まれた、それぞれに異なる幸福を感じる幅を持っている。その幅の中でも憂鬱なほうに偏っている人もいれば、陽気なほうに傾いている人もいる。だが、誰もが、自分の持っている幅の上の部分−幸せのもたらされる場所−に到達する方法を学ぶことができる。

    P331 迷宮(メイズ)と迷路(ラビリンス)の違い
    迷宮はほとんどの通路が行き止まりになっている。中に入ったらできるだけ早く脱出することが目的になる。迷路はそれ自体を楽しむ。後者が大切

  •  農業社会⇒工業化社会⇒情報化社会と進んできて、次は「コンセプトの時代」である、という本。
     ナレッジワーカーが最強だった時代は既に終わりつつあり、これからは左脳思考だけではなく、右脳思考をうまく組み合わせていく必要がある、という話。

     あとがきの「これからの成功者と脱落者を分ける3つの自問」

    1) この仕事は、他の国ならもっと安くやれるだろうか?
    2) この仕事は、コンピュータならもっと速くやれるだろうか?
    3) 自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

     将来的に生き残るのは、ケアプランを立てたり相談に乗ったりすることよりも、実際に身体に触れて介護を行なう仕事のほうかもしれないと思った。

  • 時間があれば

  • 発売から13年経った2018年時点で、課題として全体的なコンセンサスが取れてきた内容。2005年の時点でこれだけ分かりやすく示唆がまとまっていること、13年後になっても色褪せない内容なこと。凄い。
    日本で話題として薄いが、ストーリーの重要性はここで語られている程大事に捉えていなかったこともあり、勉強になった。

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著者プロフィール

Daniel H. Pink
1964年生まれ。米国ノースウエスタン大学卒業後、イェール大学ロースクールで法学博士号取得。米上院議員の経済政策担当補佐官を務めた後、クリントン政権下でゴア副大統領の首席スピーチライターなどを務める。フリーエージェント宣言後、経済変革やビジネス戦略についての講義を行うかたわら、「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・タイムズ」などに寄稿。著書に、『ハイ・コンセプト』(三笠書房)、『モチベーション3.0』『人を動かす、新たな3原則』(ともに講談社)など。

「2018年 『When 完璧なタイミングを科学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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