太陽と毒ぐも

著者 :
  • マガジンハウス
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本棚登録 : 496
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838714995

作品紹介・あらすじ

角田光代のどこにでもいる恋人たちを描いた11の恋愛短編集。

感想・レビュー・書評

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  • とても面白い短編小説なんだけど、読み終わるそばから内容を忘れてしまう。登場人物の印象が強過ぎて、ストーリーが頭に入ってこないのだ。
    でも読んでいる最中は「そうだそうだ」とうなづいたり、「そんなもんかしら」と首を捻ったり、過去の自分と重ねて懐かしく、または恥ずかしく思ったりした。

    一番好きなのは『雨と爪』というタイトルの話で、迷信をとことん重んじる彼女と同棲している男の子の葛藤を描く話。
    時々思うことがある。
    今のわたしがこうなってしまったのは、あの朝蜘蛛を殺してしまったからなのではないだろうかと。例えば夜中に口笛を吹いたから電車の中で財布を盗まれてしまったのかと。いろんな不幸が起こるのは、その裏で気がつかずにやってしまった全く関係のない何かが糸を引いているのか。

    おれたちは自分の意思で何かを決めて、少なくとも決めようとはして、そのとおりに日々を過ごしているのか。それとも、もうひとつの世界で決定される何ごとかに従って、自分自身に決定権すら持たぬまま翻弄されるように行きているのか。(雨と爪より)

    作者の感性が自分にあまりにも近くて、文章のリズムも選ぶ言葉もすっと入ってき過ぎるので、多分何も残らないような気分になるのだろうと思う。

    あとがきを読んで、これはハッピーエンドからだらだら続くしあわせな恋人たちの日常を書いたと知った。もしこれを日常と呼ぶなら、それは結構ハードだ。

  • 恋人たちの話で
    もうお腹いっぱい!
    会話が自然で登場人物がみなリアル


    角田光代さんは大好きな作家さん
    やっぱり『笹の舟で海をわたる』が私の
    ザ・ベストワン!です

  • 11個の短編、11組の恋人たち。
    何日も風呂に入らない女、迷信を信じ込む女、買い物依存症の男、誰にでも個人情報を話してしまう女、記念日が大好きな女、巨人軍の応援を最優先する男、悪気も無く万引きを続ける女、ご飯代わりにお菓子を食べる女、何よりも酒が大好きな女、海外旅行で険悪になる男女、友人たちからは酷評される彼と付き合う女。
    笑えるほどにアクが強い人たちばかりだった。

    一緒に暮らしている恋人たちもいたし、これから同棲を始める恋人たちもいた。お酒が原因で同棲を解消した二人もいた。

    角田光代さんの小説の何が好きかといえば、話のなかに生活があるところが好きなんだと思う。
    恋する男女が結ばれてハッピーエンド!大団円!!
    ではなくて、恋人関係の二人が生活のなかでケンカしたり、思い合ったり、仕事に疲れたり、食事したり、という日常があるのだ。

    100パーセントぴったりの相手なんているわけがない。妥協もあれば、我慢もある。決して諦めているわけではない。
    冴えない生活、苛立つ日常、些細な行き違い、繰り返しの毎日に悩みながらも、ぼんやりと未来に向かっていく人たちに愛着のようなものを感じた。くだらない日常こそが何よりも愛おしい。

  • 当初はお互いに痘痕もえくぼだった恋人同士が、痘痕が痘痕になってきて葛藤するお話しを集めた短編集。こんなバカ臭いことで?ということで愛が壊れていく人々を見てると身近に実例があるわけではないけど他人事に思えず共感すら覚える。100%自分に合った相手などいないというのはあながち間違いではないのかも。

  • 意外と傑作かもしれない。

    「べつにさあ、外見飾んなく立って、内にもってるもんがきれいだったらそれ、外にだって出てくんのにね…」
    と風呂に入らないスマコは言う。

    風呂に入らないのは置いといて天才だ、納得。


    角田さんは、あとがきにて
    「ばっかじゃねぇのこいつら」と罵る。
    ばっかじゃねぇのこいつらな人たちの
    すばらしく、くだらない日常を描く。
    普通じゃないことは、なんにも悪いことでない。
    ※ある程度の範囲内では

    「ばっかじゃねぇの」というのは、褒めコトバだとも思う。

    ばっかじゃねぇのと思われるくらいの生活に少し憧れるかも…

    巨人ファンすぎる主人公がいたが、西武ファンすぎる自分と若干重なってしまい…
    ※あくまで若干。

    少し反省もした一冊だった。

    100%でなくても、お互いを認め合える暮らしをねー。

  • また随分痛いところを刺されたな。

    ハッピーエンドのあと、だらだら続く男女の恋物語の短編集。

    恋愛で美しい時間なんてほんと一瞬で、生きているのだから、そんな2人の時間は生々しく、醜い時間がほとんどだ。
    どんなに相性がよくて、惚れ合った相手でも、許せない部分があって、第三者からみたらくだらない、ほんとに些細なことだったりするんだけど、でも本人からするとそれは耐え難きものであったり。
    一瞬とはいえ、珠玉幸せな時間を共有した相手なのに、憎しみを抱いてしまう自分に疲れ果てたり。

    世を歩くカップルの、大半ははたからみると幸せそうで、でも、みんな何かしら抱いている黒い部分がある。

    そんな、もやっとしたものを丁寧に切り取るのがお上手な方です、角田光代。ある種のホラー小説家。

  • いろんなダメ人間の日常を見せられても、全く面白さを感じなかった。
    恋愛パラメーターが極度に低い私から見ると、意味がよくわからん。嫌ならさっさと別れればいいのに。

  • 一緒にいるのも、分かれるのもほんの一寸で決まる。紙一重。全ての人が全てピッタリで一緒にいれるわけではなく、いかに相手を受容しなければいけないかを改めてリアルに感じて、すごく引き込まれた。アラサーの皆さんには感じられる感情がたくさんありそうですよ。今のタイミングで読めて良かったと思う。

  • 恋人関係で生じる相手の"些細なこと"に考えさせられ、幻滅し、時には関係が壊れたり、恋人たちの人間模様が書かれた短編小説。



    人って似た者同士を求めがちだけど(そうなのか?)
    似てない者同士の方が意外とうまく行くと思う。
    なぜなら、電池みたくプラスとマイナスの凹凸同士が合わさるとてつもないエネルギーが生まれるからである。

    人との関わりでズレは生じるものだから、そのいざこざをお互いがどうすり合わせお互いの違うもの同士って受容することが必要だと思った。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/574797

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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