ハケンアニメ!

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著者 : 辻村深月
制作 : CLAMP 
  • マガジンハウス (2014年8月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838726905

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ハケンアニメ!の感想・レビュー・書評

  • いやー、面白かった。純粋に楽しんだ。
    のっけから王子千春に恋してしまいました。
    一章の「王子と猛獣使い」が最高に良かったので、次章から主人公が変わってしまいやや凹む。
    それくらいのめり込んで一気に読ませる作品だった。

    これがいわゆる白辻村か。
    今まで読んできたのは黒辻村だったみたい。
    やっぱり作家の相性を数冊で判断してはいけませんな。
    他も読んでみないと。

    たくさんのレビューがあるので細かいことは省略。
    私も小さい頃からテレビっ子でありとあらゆるアニメを見てきたはずなのに、いつの間にか遠のいていた。
    子供の影響で最近また見るようになったけれど、深夜枠などで放映される1クールで終わってしまうアニメの存在は全く知らなかった。
    そう言えば、聖地巡礼って時々話題になってるよね。
    これって深夜枠のアニメから来てるのか―!
    勉強になるな。

    これって昔と違って純粋な子供向けアニメと違ったジャンルに、新しいジャンルが確立したってことなのかな??
    いつの間に!!
    全然ついて行けてない。

    こんなすっかり時代に取り残されている私でも十分楽しめながらアニメ業界が分かるのが良かった。
    おまけにベタな恋愛もテンコ盛りで、ご都合主義的な感もあるけれどまあ良しとしよう。

  • 冒頭───

     どうしてアニメ業界に入ったんですか。
     という質問をされる時がある。
     さあ、どうしてでしょうね、と首を傾げる。アニメが好きだからですよ、と答えることもある。
     もう少し熱く、答える時もある。
     大好きだったからです。昔から。アニメが、キャラが、あの声優が、あの作画が、設定が、監督が、音楽が、主題歌が、世界観の、それこそ、すべてが。

    この作品にはいろいろな愛があふれている。
    アニメそのものに対する愛。
    アニメ作画家に対する愛。
    アニメ監督に対する愛。
    アニメ声優に対する愛。
    アニメのキャラクタに対する愛。
    そして、アニメを愛する人間すべてに対する愛。

    アニメ業界の中では、『覇権』と称するそのクールのアニメでトップを取るために業界内での争いが繰り広げられる。
    そこでは、アニメに対する愛と情熱が試される。
    オタクと呼ばれ、リア充でなくとも、彼、彼女らの情熱が冷めることはない。
    そのなかでの人間模様。
    アニメへの愛を媒介にして、人間同士の愛も生まれる。

    前半は、アニメ制作の構造や、業界の内幕の説明など、初めて知る世界が多すぎて、物語に入りにくくやや読みづらい。
    “スロウハイツの神様”のような展開------。
    だが第三章『軍隊アリと公務員』から一気に人間くさくなる。
    そして、ところどころの著者独特の仕掛けで、ほろりとする場面が。
    “白辻村”の本領発揮だ。
    最後、作中で話題になる『ハッピーエンドで終わるべきか、否か』の論争と異なり、この作品自体は、ハッピーエンドで終わったと言っても問題ないだろう。

    この『ハッピーエンド論争』は、辻村氏自身の“白辻村“と黒辻村””という二面性の自らへの問いかけではないのか?
    私個人の見解で言えば、「ベタでもハッピーエンドで終わらせたい」と数年前に言った彼女の言葉を支持する。
    たとえそれによって、文学的な作品の完成度が劣るとしてもだ。
    彼女の爽快な終わり方は、本当に心が温まり、胸を打つ。
    大の男が、憚ることなく涙を流すような終わり方だ。
    そんな作品を書ける作家は数少ない。

    ブクログのレビューを見ても、“黒”の直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」と“白”の「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」では、1点近い評価の差がある。
    それだけ、“白辻村作品”が読者に評価されているということなのだから。
    そんな彼女の最大限の長所を活かした作品を、これからもより多く発表してほしいと願うのみだ。

  • 「ここで働けて幸せだ、と心の底から思う。」

    愛がぎゅーーーーーーーーーーーーーーーっと詰まったお仕事小説。
    もうめっっっっっっさカッコイイ。
    アニメへの愛。
    仕事に対する誇り。
    仲間への信頼。
    これでもか!という格好よさ。
    くらくらしました。

    「覇権アニメ」という言葉を初めて知った。
    深夜に放送されるアニメが多いというのにも驚いた。最近アニメが減ったと思っていたら…。
    そして、視聴率よりもDVDなどの売り上げが勝負ということにも。
    最近のアニメ事情にただただ驚く。私が知らなかっただけで昔からそうだったのかもしれないけど。
    プロデューサーと監督の関係性とか本当にすごい。
    ここまで近いと合わなかった時最悪だよなぁ…とか考えてしまうのは、職場の人間関係にネガティブになり過ぎている証拠かもしれない。
    危ない危ない。

    アニメ制作の現場だけに限定せずにアニメ周りのこと全部(じゃないかもしれないけど)が登場している。
    フィギュアとか、聖地巡礼とか。
    この物語で描かれる大人達のほとんど(一部例外あり)は、ありとあらゆる困難を体当たりで蹴散らしている。
    その力の源は「愛」だと描かれている。
    それがもうカッコイイのだ。

    こんな世界があると信じることは心の救いです。

  • まだ、じーんと余韻が残っていて、目頭が熱いです。
    文句なしの最高傑作。読めて幸せでした。
    ハケンアニメは派遣アニメじゃない、というのは知っていました。が、具体的にどういうことなのか、というのは本書を読んで知るところでした。

    読んでいて胸が熱くなるし、涙がこみ上げてくるし、その涙がまた熱い。仕事に誇りを持って働く人たちの姿があまりにも尊くて。

    アニメ業界といえば、ものすごくタフでないと乗り切れないハードな現場で、夢を糧に生き抜くイメージでした。
    実際に描かれているのも壮絶な現場で、いわゆる時間給で働く職種ではないんですよね。何日も寝てないなんて描写が度々出てきますが、それなのに本書は全然重苦しさや暗さがない。

    狭い業界ならではの苦労も見え隠れするけど、読んでいてこんなにも泣きたくなるのは、愛を持って仕事をしているのがありありと伝わるから。誇りを持って仕事をしている人って、なんて、格好いいんでしょうね。
    ハードな現場だからこそ、誇りや愛情なしには乗り切れないという一面はあるかもしれません。
    でも、自らその道を選び取って進む人たちがすごく輝いていて、感動しっぱなしでした。

    さて、アニメと言えば私もあまり見る方ではないですが、「コードギアス 反逆のルルーシュ」には随分はまって泣いたりしたものです。
    アニメがある人生もまた、本がある人生と同様に豊かなものでしょうね。

    ところで本書は、登場する人物もまた魅力的でキャラが立っているんです。物語の終盤近くにも新たに魅力的な人物が登場したかと思えば、思いもよらない相関図に驚いてみたり。どの人の素敵で好きですが、なんだかんだで一番好きなのは王子でしょうか。
    ちょっぴり前途多難ですが、お似合いな二人が結ばれたらいいなあ。本当にいい物語でした。おすすめ。

  • え?これ辻村深月だよね?と思ったのが最初の印象だったんだけど。
    前向きな愛にあふれる熱血お仕事小説+ラブコメな本作は、ハケンってそういう意味なのか―てところから始まり、チヨダ・コーキの登場により無駄にテンションあがりました。

    全然詳しくはないけど多少マンガも読みアニメも見るし作中のイケメンにときめくし、周囲の人よりは二次元よりなのかな?とは思うものの、オタクには程遠いリア充寄りの人間なんだろうなと感じますな。

    アニメーション作りって、儲からないとかハードだとか聞くけど、想像以上に愛憎とお金にまみれた過酷な現場なのね。
    でも素敵。みんな素敵。
    しかし王子の「三次元の可愛さなんて所詮二次元の可愛さに絶対的に敵わない」ってのがいーなー。

    とてもおもしろかったです。

  • アニメの製作現場の熱っぽい人間模様をいきいきと描いた作品。
    3人の個性的な女性と、そのお相手?を中心に。
    ノリが良く、愛に溢れていて、面白かったです。

    「王子と猛獣使い」
    中堅スタジオの女性プロデューサー有科香屋子は、王子こと(なんと本名で)王子千晴監督のことに頭を悩ませていた。
    伝説的な作品で知られる、天才肌で気まぐれな王子。
    香屋子はアニメが大好きでかなりの美人、ちょっと天然。
    王子のほうも憎からず思っているのだが、香屋子はまったく気づかない‥

    「女王様と風見鶏」
    女性の若手アニメ監督、斉藤瞳。小柄だが、職業柄性格はきっぱりしている。
    敏腕プロデューサーの行城とコンビを組むが、行城は口八丁手八丁、アニメを愛している感じはしない人物。
    しかし‥?

    「軍隊アリと公務員」
    新潟市に本拠を移したアニメ原画スタジオで働く並澤和奈。神原画を描くとファンの間では噂になっている。
    市役所の観光課の宗森のまじめさに戸惑うが、しだいに協力的に‥?

    章のタイトルや、キャラの立った描き方など、いつもの辻村作品とは雰囲気が違いますね。
    アニメ風を意識したせいなのか?
    むしろ有川浩っぽいけど、だったら女王様キャラがもっと強く描かれていそう。割と控えめなのが辻村さんぽいかも。
    話はモデルがあるというわけじゃなさそうだけど、取材に基づくアニメ製作の実態を少しは知ることが出来るし、快調なテンポでハッピーな方向へ向かい、楽しく読めました☆

  • ずっとこの世界に浸っていたいと思える作品だった。
    熱い思いをもって仕事をしている人は素敵だ。
    嫌なことも辛いことも山ほどあるのに、それでも、通りすぎてしまうと楽しさしか残らない、という感覚。
    そんな気持ちで仕事ができたら、作品が作れたら、他にはもう何も望まない。
    第三章の波澤和奈の自意識過剰ぶりは、痛くてくすぐったくて、一番感情移入してしまったなあ。浴衣姿をかわいいと言われるシーンでは、思わず涙ぐんでしまったくらい。
    今までの辻村作品とはちょっと雰囲気が違うけれども、これを機にもっと他の作品も読もうと思った。
    カバーがちょっと抵抗あったかな。やっぱり、ああいう絵は手を出しにくい。

  • 辻村深月さんの朝が来るがよかったのでこれも読んでみる。

    もっとよかった。
    いわゆるマンガとか小説とかと同じくアニメ制作者ものなんだけど、こういうの何故か面白い。

    読みながら、笑ったり怒ったり悲しくなったり恥ずかしくなったり素直に感情移入できる感じが心地よかった。

    読み終わったらふわっと全部忘れてしまう感じも気持ちいい。

    辻村さんファンになったかも。もっと読みたい。

  • 伝説のアニメと言われた王子監督の「ヨスガ」。
    そのラストにまつわるエピソードが強く印象に残った。
    最終回の1話前で人類を滅ぼす敵との戦いは終わりを迎える。
    では、最終回では何を描き、どんなストーリーになるのか。
    新たな敵が現れて、魔法少女候補の4人全員が魔法少女となって戦いは続くのか。
    それとも4人とも戦うべき相手がいなくなって、全員が魔法少女とはならないか。
    多くのファンがそれぞれの予想をたてていた。
    そして最終回。
    戦う相手はすでにいないまま、1人は当初の予定通り魔法少女となり、残った3人は現実の生活へと戻っていく。
    だが、王子は言う。
    「殺したかったんですよ」と。
    選ばれなかった3人を殺して終わりにしたかったけれど、やらせてはもらえなかったと。
    倫理的な問題やグッズ販売の売上など、大人の事情による理由がそこにはある。
    でも、もしもそんなラストのアニメだったら、きっと忘れられないアニメになっただろう。
    賛否両論、喧々諤々の騒ぎになったとしても、文字通り「伝説のアニメ」になったに違いない。
    ハッピーエンドばかりが良いラストなわけじゃないだろう。
    ハケンアニメは「覇権アニメ」だ。
    そのクールでパッケージ(DVD等)の売上1位を争うこの言葉は、業界側にとっての言葉だ。
    だが、けっして視聴しているファンにとっての1番ではない。
    ファンは売上や視聴率に関係なく、「誠実に公平に」判断する。
    どのアニメが好きで、どこに心惹かれるのか。
    100人の視聴者がいれば、「ハケンアニメ」は100通りの理由でそれぞれの視聴者の中にあるのだろう。
    アニメ制作の裏側が、各章で主人公を変えながら描かれている。
    一人はアニメプロデューサー。
    一人はアニメ監督。
    そしてもう一人は原画スタジオで働くアニメーター。
    立場の違いはあるものの、彼女たちの日々はけっして平穏ではない。
    何かと作りあげることの難しさ、葛藤、そして結果を求められることへの不安。
    読んでいて引きこまれるものがあり、一気に読み通してしまった。

    個人的にアニメが好きなことも影響しているのかもしれない。
    けれど、アニメには詳しくない。普段アニメなんて見ない。興味もない。
    そんな人も楽しめる物語だと思えた。
    この物語、そのうちにドラマの原作とかになりそうで怖いような・・・。
    好きな物語はあまり映像化してほしくない気がする。

  • ananに、連載されていたものを作品化。
    本になるのを待っておられた方も多いようです。

    ハケンアニメ、とは漢字で書くと 覇権アニメ。
    そのシーズンで一番人気のあった=覇権を取ったアニメをさすんですって。



    で、3人のアニメに携わる女性が登場します。

    みんなアニメが大好きで、熱くて作品にまっすぐです。

    スタジオえっじの制作プロデューサーの有科香屋子は 
    自分がかつて夢中になったアニメ
    「光のヨスガ」の作者にして、覇権を争うアニメ業界の寵児 
    イケメンで 天才肌の王子千晴に 制作を頼み込みました。
    わがままな王子に振り回されっぱなしの香屋子。

    ついに!「電撃戦隊 リデルライト」を4話で放り出して 王子失踪!!

    香屋子とともに ハラハラ・ドキドキ、イライラ・・・

    王子が戻ってきた時には 私の頬にも熱い涙がハラハラ・・・
    香屋子と一緒に 安堵と感動の涙に濡れました。


    一方 大手 トウケイ動画(東映動画のモジリ?)の行城(ゆきしろ)は、
    アニメーション監督の斎藤瞳とともに
    「サウンドバック 奏の石」を売り出し中。

    声優、クリスマス商戦のおもちゃ、DVD売上、ポスター、放映枠

    アニメと一口に言ってもたくさんの人の手から生まれ
    たくさんのビジネスが絡んでいるのだな、と
    改めて 思い知りました。

    アニメーションには セル画の他に 原画がありますが
    「神・原画」を描く アニメーターの並澤和奈が
    サウンドバック 奏の石 通称「サバク」を描いています。
    彼女のスタジオは 新潟。サバクの舞台がちょうど和奈の住んでいるところでした。

    アニメファンの「聖地巡礼」を 
    地方自治体の活性化につなげようとする 役所の宗森の熱意と
    彼の人柄に、心を開く和奈にもじーんとさせられます!

    土地の祭りにサバクの「舟」を出すことになります。

    お祭り当日には大勢のファンが詰めかけて・・・
    伝統の祭りの歌を歌いに駆けつけた声優、
    唱和する大勢のファン、心が一つになって川面に響いていく・・・
    あ・・・ふいに今でも涙・・・。
    人のつながりの大切さが身にしみるシーンでした。

    実は、後の種明かしで この宗森 
    王子千晴の後輩なんです。
    他にも あの人が?という種明かしあり。

    体育会系のノリについていけない和奈も
    実直で 愛される人柄の宗森に心を開いてラブの予感♪

    最後には
    たくさん張られた伏線も回収、きちんと符合してスッキリ!

    温かいものが心の中に広がって
    読後感爽やか!!

  • 素晴らしかった!!!!!久々の星5つをつけました!

    辻村深月さんの本は久々。
    「子どもたちは夜と遊ぶ」が救いようのない程暗かったので、ダークな印象があった。
    しかし、今回は今まで読んだ辻村作品とは作風ががらっと変わっている。ライトノベルに近く、暗さは一切無い。
    調べたところ、相当ゲームが好きらしく、その趣味の部分も今回はふんだんに盛り込まれている。
    これは良い作品!!今年読んだ私のオススメ本ランクインに決定した。

    ハケン=覇権=覇者の権利。
    同じクールで一番ヒットしたアニメがもらえる称号。

    アニメ業界で働く3人の女性達が主人公で、3章からなる。
    番組プロデューサーの香屋子(35歳)、監督の瞳(26歳)、アニメーターの和奈(26歳)、それぞれ違う立場の3人の視点で物語は進む。

    アニメという業界がいかに過酷で体力勝負な世界か、ということがわかる。しかし、アニメは私は普段あまり見ないんだけど、(特に魔法少女系、萌え系少女とかはさっぱり疎い)、彼女たちの仕事に対する熱意、1つの仕事をやり遂げた後の達成感を強烈に感じることが出来る1冊だった。
    アニメ業界に限らず、何か「物語」を作る仕事って面白そうだな、と思う。(勿論、面白いの一言で片付くものじゃなく、血のにじむ作業、交渉があってこそ、なんだろうけども)
    それに、1つの仕事にかける時間がとても長く、作品のキャラクター達の成長を自分も近くで見守り続ける為、愛着の強さや思い入れも相当なはず。
    瞳が、2章の最後で泣くシーンが好き。自分の関わった仕事によって感動して泣く、なんてことは、あまり他の業界では無いことだ。

    最後は、3人の主人公と、脇を固める個性豊かなキャラクター達が結集して、1つの大きな仕事に立ち向かう。
    和奈の不器用な恋愛模様も見所。

    働くことの意味、努力することの大切さを学べる、ビジネス本としても紹介できるような一冊だ。

    最後に、私の気に入った言葉。天才監督、王子の一言で締めたい。
    「リアルが充実してなくたって、多くの人は、そう不幸じゃないはずでしょ?恋人がいなくても、現実がつらくても、心の中に大事に思っているものがあれば、それがアニメでも、アイドルでも、溺れそうなときにしがみつけるものを持つ人は幸せなはずだ。覇権をとることだけが、成功じゃない」

  • 辻村さんは好きな作家さんで、出ると読む、の1人です。
    ただ、正直、初期の進学校ミステリー、また一連の学校ものの印象が強く、ここのところの広範囲なお話は、一応面白く読んだものの、辻村さんじゃなくてもいいかなぁ、と感じていたんですよね。

    で、この「ハケンアニメ!」。
    とにかく表紙のラノベテイストにかなり引いてしまって、手に取ることさえしていなかった…。でも、本屋大賞ノミネートとなれば、それは読みたい!ということで早速購読。その結果といえば、すっごくはまってしまいました。

    アニメ業界で働く人々が連作の形で綴られ、
    彼らの怒涛の日々の清々しいことったら!
    少しずつは知っていたけど、というアニメを作るための現場の役割、誇り、葛藤、
    そして、アニメなんて、という世間の目。
    サブカルを必要としている受け手&作り手への目線が
    変な言い方だけどとても“真っ当に”描かれていると思いました。

    ヒットアニメ監督の王子(ホントに王子という苗字なんですよ。(#^.^#))なんていう、
    キラキラキャラも嬉しかったりする私って、あはは・・・なんですけどね。

    ・・・・これって、二次元に生きるいわゆる“オタク”ひとりひとりへの
    そうそう!それを言ってほしかったんです!という、痛いところを突く応援歌としてヒットしそうですね。
    本屋大賞の投票者のピンポイントかもしれない。
    で、私も今のところ、この作品を一押し、とさせていただきます。(#^.^#)

  • 「スロウハイツの神様」からつながる辻村深月の作品群のひとつ。最初と最後にチヨダコーキ(の名が)が出ます。中で本人もちょっと出ます。
     出てくる人は皆善人で、一生懸命仕事をして、後を引くような悪い出来事も起きないし、だから極端なご都合主義もない。
     とにかく安心して読めて心を温かくできる本です。

     ただ、なんで表紙がCLAMPなのか、なぞ。全然本文の雰囲気を伝えてい無し、CLAMPらしさも希薄。アニメが題材だから新しい層を取り込もうと使ったのだとしたら、作者も絵師も読者もまとめてバカにしているのだろうかこの編集者は。いっそのこと有川浩つながりで徒花スクモさんに描いてもらえればよかったのに。

  • アニメ業界で働く3人の女性を軸に、彼女達を取り巻く環境や情熱を描いた、お仕事小説。
    3人の女性はそれぞれ熱意や信念を持って仕事に取り組んでいますが、時にはその熱意が相手に伝わらなかったり、周りと考えが対立したり。
    仕事でのこういうトラブルはアニメ業界に限ったことではないと思いますが、皆が好きなことを仕事にしているであろうアニメ業界を舞台に、楽しいことも辛いこともきちんと盛り込まれて描かれていたのが良かったです。

    3人の女性がそれぞれ主人公として描かれるオムニバス形式で、とあるエピソードでは悪役的に描かれているキャラクターが、別のエピソードでは別の面にスポットが当てられて同じキャラクターなのに印象がガラリと変わるような、多面的な描かれ方をしていたのが面白かった。
    ある人にとっては面倒で付き合いにくい人でも、別の誰かにとっては信頼するパートナーだったり、かけがえのない人だったり、実際の人間関係でもきっとこういうことはたくさんあるのだろうと思います。
    そういう当たり前のこともさり気なく丁寧に描かれていて、感動してしまいました。

    あとはもうとにかく、辻村さんのアニメへの愛が、小説の至るところから伝わって来ました。
    自分も小説やゲームやアニメなどフィクションの作品から様々な影響を受けてきた人間なので、それはもう色々なところに同調してしまいました。
    「オタク」であることに引け目を感じてしまうとか、だけどオタクであることや好きな作品をバカにされるのは許せないとか、大好きな作品の設定やその後の話を自分なりに解釈して楽しんだりとか、同じ作品を楽しむ他のファンに嫉妬してしまったりとか。
    読みながら「何でこんなに私の気持ちを知っているんだこの方は!」と思ってしまいました。
    こういう感情を、辻村さんご本人も抱いたことがあるということなのでしょうが。
    私は自分が結構なオタクだと思って生きてきましたが、この本を読んで、辻村さんのオタクぶりには遠く及ばないのだろうなぁと思いました。笑

    アニメやゲームや小説で、揺るぎなく大好きで大切な作品がある。
    そんな人が一人でも多く、この本を手に取ってくれますように。
    それから先日参加させて頂いたサイン会で辻村さんご本人も仰っていましたが、この『ハケンアニメ!』そのものと、作中作の『運命戦線リデルライト』『サウンドバック 奏の石』をいつかアニメで観てみたいです。

  • アニメ業界で働く人々のお話。
    勿論アニヲタ読者としての感動もあるんだけど、
    業界は違えど、似たような仕事をしている身として
    共感出来る場面が多々ありました。
    何度も泣きそうになった…

    「クリエイティブな仕事」って聞こえは良いけど
    実際はすごく泥臭くて地道なんだよね、と改めて思う。
    才能とか努力とか、愛情とか。
    なんだかんだで人間同士の信頼だったりとか。

    誇りを持って仕事をするひとはやっぱりかっけーよ。
    行城さんほんと格好良くて。
    ああいうひとになりたいなあと思いました。
    あと、王子も格好良い(幾原監督を彷彿とする)!

    とにかく、全編に愛を感じる素敵なお話でしたー
    辻村さんてアニヲタなのかしら。

  • アニメの製作舞台の裏話。
    派遣じゃなくて覇権か。
    辻村深月は、私がなかなか言葉にして言い表せないことをいとも簡単に文章として残してくれる。

    優しさ・嬉しさ・悔しさ・悲しさ…そんな感情表現が、この作品にも顕れていて清々しい気持ちになった。
    やっぱり辻村深月好き。

  • アニメ業界の裏側の厳しさとか、苦しさを爽快に描いていて面白い。
     
    そんなに楽しいものか?良いものを作るために何日も泊まり込み、寝ないで仕事することは、目的のためなら楽しいのか?
     
    と納期に追われる仕事をするのもとしては、エンタメ性を重視し過ぎている気がするものの、物語の面白さにすっかり引き込まれました。

  • 作者を知らずに読んだら、誰かわからなかったかも。
    ただ、面白かった!
    いつもの辻村さんなら、予感で終わり、
    それにワクワクさせられるけど、今回はみっちり丁寧に最後まで書いてある印象。
    それも、辻村さんじゃないみたいに感じた一因かも。

    最後の謝辞にもあったように、
    現場の方の声を聞いて丁寧に書いたんだろうな~~。

    この手の感じだと、有川浩さんや三浦しをんさんなんか得意そうだけど
    なかなかどうして、辻村さんイイ感じです。

    何しろ、アニメ愛が存分に伝わってくる。
    いつもの辻村さんの「面倒くさい人」が
    かなり明るくユーモアたっぷりに描かれていました。
    まあ、たまにはこういう盛り上がりもいいかなと。
    ちょっとらしくないけど、葵さんの言葉にウルっと来ました。

    個人的には、行城さん、ツボです。
    イケメンが多いのはちょっと戸惑いましたけど(笑)

    有科さんは、「杏」さんが思い浮かんでしまいました。
    どうかな~~~だと、王子は誰かな(*´ω`)

  • もしかすると★5かもしれない。

    TVアニメの制作という一般人には馴染みのない世界を舞台としつつ、巧みな構成や人物配置もあいまって、物語に引き付けられる。

    登場人物の対立構造がそこかしこにあるのだが、主人公を交替させた3部構成の話を読み進む内に、どの人物にも感情移入するようになる。

    最終章はそれまでの伏線をすべて取り込んだある意味贅沢なもので、正に大団円といえる。

    読み終えた時にはすべての登場人物に幸あれと願い、TVアニメに好感を持った自分に気づくだろう。

  • 新幹線の中で一気に読んでしまいました。
    アニメ業界のことはあまり分からない私ですが、人間模様を見ているだけで楽しいお話でした。

    登場人物の印象が最初と最後で全然違うものになっちゃうところとか、辻村さんならではの人物描写だなー。

  • 第三章、アニメでまちおこしというエピソードで、公務員の男の子と、アニメ界の女の子がぶつかるところが良かった。
    アニメの舞台となったシーンをスタンプラリーにして、まちおこしにつなげようという企画を進めようとしている男の子に、「いかにも公務員らしい、凡庸な企画」だとか、「これだからリア充は」みたいな反応をしていた女の子が、自虐的なつもりのステレオタイプな偏見を、自覚していくあたりの展開が、とても考えさせられた。
    そうだよね。非リアで、自分のことを痛いと思っていれば、アニメの世界に関しては、リア充の考え方を好きなだけこきおろしてもいいってもんでもないよね。むこうがちゃんと自分達のことを理解しようと歩み寄ろうとしているのに、それを笑うなんて、やっちゃいけないことだよね。本当に反省させられた。いっちゃなんだけど、こういう立ち位置の取り方が、上から目線で、私が導いてやる的なスタンスの(最近の)有川浩との、最大の違いだと思う。
    この三章後半からの怒涛の展開は、本当に素晴らしかった!

  • アニメも観るけれど、ちょっとついていけなかった。

  • なかなか良かった。ただ登場人物のアニメ観に関しては、俺も大概オタクだけどそうまでアニメを拠り所にはしてなかったなーって感じ。さておきananに連載してたあたりを見ると、作中の女子アナみたいな感覚の読者を相手に良くやったとも言いたい。作者がどこまでアニメに造詣があるかわからないけど、全くの門外漢でこれを書いたのだとすると凄いな。よく取材してると思う。

  • 「なぜアニメ業界なんですか?」と聞かれる。
    きつくて辛くて儲からない…
    そんな業界で働き続けるのは
    ただ「アニメが好き」だから。

    伝説の奇才監督・王子が9年ぶりに挑む
    新作の前に失踪。王子を口説き落とした
    プロデューサーの有科香屋子は…

    そして同じクールで期待の新人監督・斎藤瞳が
    組むことになったのは次々にヒットを飛ばす
    敏腕プロデューサー行城。

    なけなしの勇気で行った憧れの人との
    デートを行城に邪魔された神原画師と噂の
    アニメーター並澤和奈。
    斉藤監督の「サバク」の舞台となった
    選永市をアニメファンの聖地巡礼での
    観光で活性化を期待する
    公務員・宗森の手伝いをすることに…

    私は新クールごとに一通りチェックするくらい
    アニメを観るし好きなので
    大変に楽しかったし興味深かったですが
    アニメを観ない人からするとどうなのかな~と
    この本を貸してくれた人に聞いたらアニメ観ないけど
    すごく面白かった!と言っていたので
    これを機にアニメにも興味を持ってくれる人が
    増えるといいなぁ~と思いました。

    今まではエンディングなども声優さんの名前を
    見ることはあっても制作に携わってる人たちまで
    見てなかったなぁ~と
    改めて観ていたアニメの作画とか眺めてみたり…
    1クールのアニメを作るのに本当に沢山の人が
    携わっているんだなぁ~と感動しました。

    それぞれのキャラが魅力的だったので
    その後も読んでみたい…
    三人の女性の仕事にかける熱意、情熱、
    アニメが好きという気持ち。
    個人的には二章の斉藤監督と
    行城プロデューサーの話が好きでした。
    実績のない相手は名前も覚えない行城。
    その行城に認められているという自負。
    行城のブレない姿勢と斉藤監督との
    信頼関係も良かった。

    辻村作品お約束の、他作品キャラ登場なども
    あって楽しいです。

  • また『サークル目線の小説』と揶揄されてしまうかもしれない。
    でも辻村深月作品ファンはこれを待ってたんじゃないか!少なくとも私は待ってた!初期の作品の頃の様なワクワク感とフィクションへの溢れる愛。そして懐かしのあの人たち。名前が出るだけでも嬉しいのに、喋ってる姿や活躍を読むことが出来てとても嬉しい。

    私は察しが悪い読者なので、タイトルを初見したときはピンとこなかった。
    だからこそ読み進める内にタイトルの意味がわかり、やられたと思った。(私は辻村深月先生の狙いにやられやすい。好きでやられているとも言える)
    三編に分かれ(それに加えエピローグのようなもの一編)、それぞれ語り手の視点がまるきり変わる。だけれども、みんな共通した場所で働いている(闘っている)。場所が共通しているが、立場の異なる登場人物それぞれの視点で話を切り替えて進行して行く形式は個人的に好みである。(「ふがいない僕は空を見た」とか)

    特に、一編目が好き。
    多分、登場人物の王子千晴に、辻村作品の登場人物いち好きな木村浅葱に似た良さを見出したからかもしれない。そして気難しい美形の人のカッコ悪さゆえのかっこよさ、そして気難しい人が心を許す心優しい人の存在、そんなのが大好きです。
    浅葱と月子のハッピーエンドが読みたい…。。

    とつい脱線してしまうほどに、これは本当に初期の辻村作品を愛する人たちからすればたまらない作品なのではないかと思う。

    辻村先生は、直木賞を受賞するまで文藝春秋から出版を重ねるうちに技術的な面では向上したかもしれないが、私が惹かれた辻村先生の作品に載せられた想いは、辻村先生の中で薄まってしまったのではないかと不安に思った。

    だけれど、ここ最近の作品を読むに、読者に向けて変わっていないと伝えてくれている気がする。読者に向けて、ではないかもしれない。辻村先生が、本を手にとってくれる人達に伝えたいこと、先生が感謝してきた気持ちは変わっていないのだと思う。

    私の中では文藝春秋作品はまだ折り合いをつけれていないが、確かに一時『サークル目線の小説』の雰囲気を脱したことで作品を形成する力はついたのではないかと思う。
    以前から読みやすい文章ではあったが、何しろ長く登場人物が多く根気がなければ読むのをやめてしまう人もいるかもしれない。(だけど私は逆にそれが好きだったのでもっともっと書いて欲しい)
    とっつきにくくなく、読みやすく、と変化している。ただ万人に受けるかと言われれば太陽君の親の様な人間もどうしてもいるから”アニメ”という題材が中心な以上毛嫌いする人もいるかもしれないが、ハートキャッチされる人は鷲掴みされてしまうと思う。

    でも、辻村深月は直木賞作家なのだ。
    その経歴を盾にするのは少し気が引けるが、辻村深月はその経歴を、強さを経たことによって自分の好きなことを堂々と声高に好きと言える。
    強さがあるから、認められる。経歴を気にする社会だからこそ、その強みをとった価値は大きいと思う。
    単にデビュー作が出たとき新人賞とれただけのフィクション好きの作家、とかで終わらなくてよかった。終わらせないでくれてありがとうございます、先生、各社の編集者さん達。
    辻村深月先生のファンでいて良かったです。

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ハケンアニメ!の作品紹介

監督が消えた! ?
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。
プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。
同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。
ハケンをとるのは、はたしてどっち?
そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。
ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす!
熱血お仕事小説。

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