この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチブックス)

著者 :
  • KADOKAWA(メディアファクトリー)
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840112598

感想・レビュー・書評

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  • 本にまつわる9編の短編集。
    普段だったら決して手を出さない類の本だが、読んでみることに。
    それと言うのも「作家の本棚」と「古本道場」での角田光代さんに妙に親近感を抱いたからだ。
    さて、作品はいかなるものか・・

    と、その前に。この本、構成がちょっと凝っている。
    ひとつの作品が終わるたびに、グレーをバックにした本の写真が現れる。
    それも空中に投げ上げられた写真だ。
    文字の配列も工夫があって、ある話は行間が広めにとってあり、またある話は狭かったり、頁の上部にぐぐっと余白があったり、下部に余白をたっぷり取ってあったり。
    不思議なことにそれが、それぞれの作品の雰囲気を醸し出すのにひと役買っている。

    せっかくだから「本棚」がベースの話と「古書店」が舞台の話があるといいなあと思っていたら、どちらもちゃんとあった。
    同じ本に何度もめぐり会う話、好きなひとと同じ本が好きだった話、暗い因縁のある本の話、伝説の本を探す話、思い出の本屋さんに行く話、祖母に依頼された本の話・・
    そのどれもが、有体に言えば本を通じた「自己再発見」のストーリーだ。
    しかし直木賞作家さんは、そんな身も蓋もない表現はしない。
    本に出会うことによって生じた内面の変化とその後を、実に細やかに描写していく。
    そしてどの話も読後は爽やかだ。事件性もないし、悲劇もない。
    うん、本にまつわる話はこうでなくちゃ。

    最後に「あとがきエッセイ」があるが、これもまた一編の作品のようだ。
    子供の頃から色々な本を読んできた角田さんが、唯一つまらなくて放り出したのが「星の王子さま」。しかし8年後、新たに手渡された同じ本に、いたく感動する。これはすごい、と。
    そして「本は、ひとを呼ぶのだ」と言う。
    「わたしを呼ぶ本を、一冊ずつ読んでいった方がいい。」

    本好きなブク友さんたちは、きっと共感されるだろう。
    この本があって良かった、と思える本に出会った時の喜び。
    またこれからもこういった本に出会えるかもしれないという期待。
    清々しい読後とともに、本がますます愛おしくなる一冊だ。
    「引き出しの奥」と「さがしもの」が、それはそれは良かった。

    • nejidonさん
      ヨルガタさん、おはようございます(^^♪
      お元気でお過ごしですか?
      カタカナ表記にされたのですね。
      ちょっと戸惑ってしまいました・笑
      ...
      ヨルガタさん、おはようございます(^^♪
      お元気でお過ごしですか?
      カタカナ表記にされたのですね。
      ちょっと戸惑ってしまいました・笑
      おかげさまで、皆さん本についてお話するのが本当にお好きなことが、
      コメント欄で分かりますね。楽しいことになっています。
      本に特化したお話なんて、リアルなお付き合いではなかなか出来ません。
      コメント欄では日々読書会です。
      また面白い本に出会いましたらいつでも教えてくださいね。
      2020/05/19
    • 夜型さん
      nejidonさんおはようございます。
      ちょっと素っ気ないかなと思い、でも名前変えるのは変かなと考えて表記を変えました。が、戻しました。
      ...
      nejidonさんおはようございます。
      ちょっと素っ気ないかなと思い、でも名前変えるのは変かなと考えて表記を変えました。が、戻しました。
      面白い本ではなくて読み応えがある本なら
      京都大学図書館情報学研究会から出ていた読書と読者っていう本ですかね。すでに絶版で高騰しており、図書館で借りました。
      続編も出ていますよ。こちらも絶版ですが。よろしかったらぜひ。
      2020/05/19
    • nejidonさん
      夜型さん、お名前を戻して下さってありがとうございます。
      アイコンを見れば一目瞭然なんですけどね。一瞬??となりました・笑
      はい、もちろん...
      夜型さん、お名前を戻して下さってありがとうございます。
      アイコンを見れば一目瞭然なんですけどね。一瞬??となりました・笑
      はい、もちろん面白いとはinterestingの意味で「面白可笑しい」ではありません(^^;
      その本は以前にもお薦めいただいたように思います。
      すぐ検索したのですが、近隣ではどこにも見つけられなくて。
      泣く泣く「入手できない本」というカテに入れてあります。
      本がまだ、ワタクシを呼んでくれないようです。。
      でも夜型さん、古典の「本を読む本」が今日手に入りました!!今すごく喜んでます。
      これからゆっくり読んで参りますね。
      2020/05/19
  • この本は古本屋で何気なく選びました。本当にこの本に出会えて良かったと思います。本にまつわる素敵な短編のお話、どれもとても心に染みました。本屋さんや古本屋さんに行って本を選ぶのがよりいっそう楽しくなる本好きには必読の一冊だと思います。

  • 本にまつわる9つの短編ストーリー。
    手放しても戻ってくる本、盗んでしまう程手に入れたかった本。
    本との距離は人それぞれ異なるが、決して誰も「こんな本読まなければ良かった」と思っていない。

    私もきっとそう。合わなかったなーと思う本は多々あるか、読まなければ良かったと後悔する本はなかった。
    最後の角田さんのエッセイに、何だか安心させられた。
    「世の中に私の五百倍、千倍の本を読んでいる人がいて、そういう人に追いつこうとしても無駄である、そんな追いかけっこをするくらいなら、知識なんかなくたっていい、私を呼ぶ本を一冊ずつ読んでいったほうがいい。(P236)」
    読書する習慣だけは失いたくないな。

    • sinsekaiさん
      この本は僕も大好きな本です。
      本好きの友達にもプレゼントしたりしてます!
      自分も読書が好きで、この本に出会えて本当に良かったと思いました。
      この本は僕も大好きな本です。
      本好きの友達にもプレゼントしたりしてます!
      自分も読書が好きで、この本に出会えて本当に良かったと思いました。
      2020/10/25
    • はるちちさん
      私もこの本が大好きで、普段は図書館で借りてばかりいるのに、買い求めてしまいました。

      私は「不幸の種」が1番好きですね!
      私もこの本が大好きで、普段は図書館で借りてばかりいるのに、買い求めてしまいました。

      私は「不幸の種」が1番好きですね!
      2020/10/25
  • この本が世界に存在することに。

    この本を書こう、と思った人が世界に存在することに。

    この本を好きだな、って感じる誰かがどこかに存在することを

    実感できると嬉しい!と言うのは


    いつまでもふわふわと思いが宙に浮いたままだと

    不安になってしまうから。


    そこにある目線と

    思いもしなかった言葉と

    偶然出会えたその時にこそ、不安は霧が晴れるように

    消えていく。


    いくつもの共感と

    寄り添って、いつまでもしゃべっていたい程の親近感を抱ける短編集です。

  • まさに「この本が存在することに」感謝したくなる一冊。
    誰でもそういう本があると思います。

    本好きならきっとこの本が描く「本がもつドラマ」を楽しめます。
    本好きの誰かに「何かお勧めないですか?」と聞かれたら、結構薦めてます。

  • 今日読んだ2冊が「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」とこの本。本が大好きな人の話を2冊読んで、なんだか頭が混乱してる。
    短いのに印象的な話が多くて、そしてどこか自分にも通じる本好きな話が多くて、幸せな気分になった。
    本って人に勧められたり、好きな作家さんってのもあるけど。時々出会ってしまう、その本に呼ばれた感じがまたたまらなく好き。

  • 9編の短編が連なる角田さんの2003年から3年間に書いた作品集です。如何にも本好きな方ならではの愛情心情に溢れた素敵な本でした!今から14年前に出た本だから角田さんも若々しく瑞々しい(失礼)語り口ですね♪ 皆さん、これを読むとますます本好きが高じるような気がするのですが 笑。勿論わたくしも ご多分に漏れずね。

  • 久々の角田さん。本にまつわる短編集。ほっとする、手元に置いておきたい物語かも。ある特定の本にも、本という存在それ自体にも、その人にとってそれぞれに特別な何かが必ずある。そこから生まれる繋がりや齟齬…なんともいえないものを感じた。“開くだけでいろいろな所へ連れて行ってくれる”まさにそのとおり。

  • この本に出会えて良かった。

  • 色んな本がある。
    何年も前に手放して、旅先の古本屋で再会する本。
    タイのちいさな島の宿に残された日本の文庫本。
    別れの手紙が挟まれた詩集。
    恋人と共有していた本棚。
    不幸の種になるかもしれない、とくべつな本。
    記憶が書き込まれた伝説の本。
    商店街の書店で万引きした本。
    おばあちゃんが亡くなる前に読みたかった本。
    バレンタインチョコの代わりに贈った本。

    本にまつわる短編集。

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    どの話も素晴らしかったし、巻末のエッセイも素敵だった。
    年月を経てから読み直すと、その本の印象が変わる、という場面が何度もあった。エッセイにも書かれていた。
    自分も同じように思う。感じ方は変わる、様々な要因で。読み直す楽しみ方を覚えてから読書の幅が広がった気がする。

    話ごとに文章の上下の余白が大きくなったり、行間が広がったりして、読むのを楽しめた。
    なんとなく手に取った本。読んでよかったな。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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