ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840121507

作品紹介・あらすじ

つまらない本しか置いてない、ツクツク図書館。職員も建物もへんてこぞろい。弱気な館長、運び屋、語学屋、戻し屋ちゃん…そこにある秋、ひとりの着ぶくれ女がやってきた。女は働かないで、わがまま放題。だけど、図書館にある"伝説の本"の話を聞いて…?奇妙でかわいくってクセになる。キリフキワールド、いざ、開幕。

感想・レビュー・書評

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  •  筑津区にある図書館だから、ツクツク図書館と呼ぶ者もいる、その図書館は、矢面に立たされそうな個性ではあるのだが・・・。

     その洋館のような建物の中に入ると、大きなフロアではなく、それぞれに名前の付いた小さな部屋がたくさんあり、気軽に入ったら迷子になりそうな構造に加えて、その部屋の名前が、「お○らしの短編小説の部屋」や、「夜の押し入れの部屋」、「ポルノ王国の部屋」と、この辺りで何となく推測された方もいらっしゃるかと思いますが、そういうノリであり、しかも町にある中央図書館と比較して、こちらはつまらない本しか置いていない、所謂ダメ図書館ということだが、ポルノがある時点で既にアウトなので、そもそもスタートラインにも立てていないのですがね。

     そんなツクツク図書館を支えているのは、つまらない本を読むのが仕事の「着ぶくれた女」と、彼女に振り回されまくりの、平凡な悲劇人の「館長」を中心とした中にも、幼稚園と兼務している(アウトその2)「戻し屋ちゃん」、外国語の本を読む「語学屋」、つまらない本をちょいと拝借してくる(アウトその3)「運び屋」といった、更に個性的な顔ぶれが、物語に何とも言えない不思議なムードを醸し出しており、一度深みにハマれば、癖になる面白さも感じられた。


     ライトノベルを思わせる文体は読みやすく、その殆どが会話で構成されているのは、著者の紺野キリフキさんが筑波大在学中、演劇サークルに所属し、主に戯曲を手がけていたこともあって、舞台劇にしたら面白そうだなと思わせる、シュールな設定の陰に真面目な思いが見え隠れする、テーマありきなのは、何となく推測出来るものがあった。

     というのも、つまらない本しか置いていない図書館という設定自体、既に超現実と呼びたくなるような皮肉を滲ませており、このつまらないって、誰が決めるのですかね? 図書館員? それとも来館者なのかな? いずれにしても人間である限り、それが100%では無いことは分かりそうなものですし、つまらないと思う人もいれば、面白いと絶賛する人もいるから、人間って一人一人皆違っていて、そこに素晴らしき個性があることが実感出来るのであり、そこに違いがあるからこそ、人間って面白いなと感じるのではないかと思い、それを派手に誇張して表現したのが、主人公の着ぶくれた女である。

     実際に個性は大事だよねとか言いつつも、状況によっては、それを押し殺して相手の望むようにしなければならない時もあるのが、世の中の不条理さとは思うが、ここでの着ぶくれた女は、我が強くて、仕事はしない、気紛れに早退する、来館者に対しても横柄な口の聞き方をしたりと、とにかく自由奔放であり、現実社会でこんな振る舞いをしたら、おそらく解雇されるのではないかと思ってしまう、そんな破天荒ぶりだ。

     しかし、そんな彼女の姿に励まされる人も、中には存在し、彼女の口癖の一つである「わたしは働きませんよ?」に拍手喝采する、おばあさんは、皆が一生懸命働くのが当たり前だった時代に於いて、姑の「働くって、気持ちいいわよねえ」の言葉も含め、本音は働くことが大嫌いで、ご飯も作りたくなかったし、掃除をしなくても人は死なないと思っていた、そこに何か物言いをしたくなる方が、もしいるのであれば、それは上記のような不条理さと類似し、その人自身を押し殺させる結果にしてしまう、価値観の押し付けだと思うことから、要はそういうことを遠回しに伝えたいが為に、敢えて、そんな破天荒な人物設定をして、これだって大切な個性なんだということを皮肉っぽく演出したのだろうと、私は感じたのであり、たとえ、それが単に言いたいことを言っているだけの、相手の立場に立った物言いをしていなくても、逆に、それが気持ち良くてスッキリすると感じる人もいるのである。

     そんな多様な個性のあり方を、誇張させて表現することで、現代社会のタブーの一つかもしれない、マジョリティの意見に協調してみせたかのような、まるで上手いこと空気を読んでみせてこその、認められる個性なんだよといった、本音と建て前の応酬で認められる個性なんて本当に個性なんだろうか? といった、直接的に刺さるわけではないが、間接的にモヤモヤするような思いを、そっと照らし出してくれたのかもしれないし、それは、マジョリティが正しいとか、マイノリティが正しいとかいうことではなくて、人間なんだから当たり前なんて、そうそう簡単にはないでしょ? ということだと私は思い、それは物語に於いて、時には運び屋も面白いと感じた本を拝借してしまったことからも実感させる、不完全であるが上の人間の素晴らしさである。

     また、それは人間だけではなく、猫の「ギィ」も、猫ならではの超然とした中に、健気な飼い主思いの一面と、本に纏わる設定がまた良くて、ちゃんとニャアと鳴けないところや、爪を仕舞うのが苦手で、歩くときにカチカチと音を立ててしまう、そんな点にも、何故、他の猫みたいになれないのかと感じるのか、あんただけの大切な個性だねと感じるのか、そんなことを考えさせられたし、それは、着ぶくれた女との関係性からも実感させられた、正解というものの無いことの大切さである点に、それぞれの存在意義も際立つのだと思わせるものがあった。

     しかし、こうして考えてみると、改めて私の作品に対する評価も、おそらく私自身にしか、確かな説得力を持たないのだろうなと感じさせるものがあって、それは、物語のクライマックスに於ける、○○の本に対する、着ぶくれた女の爽快なコメントからも感じられた、この世に存在するものとは、なんと不可解で楽しいのだろうという、その不確かさが、本書のテーマであるのならば、私もそれに応えねばならず、私的には星3にするつもりだったのだが、そんな中途半端な評価では、却って、着ぶくれた女をがっかりさせるかなと思い、こうなりました。

     でも、この方が、却って読みたくなるのかもしれませんし、これが当然、正解では無い訳ですから、読む人それぞれが判断してくだされば、それでいいのだと思いますし、私なりの本書への賛辞です。

  • 町はずれにある名前もない図書館。
    ある日、寒がりの着膨れした女がやってくる。
    彼女の仕事は「本を読む」こと。
    この図書館の利用客はほとんどいなくて、たまにやってくる人はちょっと変わってる。
    なぜなら、この図書館の本はつまらない本ばかり。

    今日も、彼女は仕事をしなくて、館長と言い合いになってる。
    どこからか本を探してくる「運び屋」
    本を棚に戻す「戻し屋」ちゃん
    本の翻訳をする「語学屋」さん
    図書館で働く人々も変わってる。
    そして、図書館には秘密があって。

    かなり難解、でもついニヤニヤと読んでしまう。
    登場人物のとぼけた台詞が刺さる。

  • 何これ!? シュールでよくわからない、いや、わかるような何とも言えない世界観の小説。面白いと言われれば面白いし、つまらないと言われればつまらない、何とも言えない一冊である。不思議……。

  • 題名にひかれて図書館で借りてきたものの何が面白いのか、どこがキリフキワールドなのか首を傾げることしきり。
    世界観が独特すぎて理解に苦しむなぁと思いつつもネコちゃんに癒され、登場人物の個性も少しずつ楽しめるようになった頃に終わりとは。
    癖になってしまうような気もする。

  • 古今東西のつまらない本を集めた図書館が、ツクツク図書館である。
    客はほとんどこない。
    職員の仕事は、ひたすら本を読むこと。

    という、もはや何が何だか、という話でした。
    結構面白かったですが。
    ひたすら本を読むという仕事は、うらやましいと思いきや、つまらない本しかないのでは拷問である。
    一体全体この図書館はなんなのか。
    まあそんなこともどうでもいい話である。
    とりあえず、この本は面白かった。
    それでいいじゃないですか。

    まあ、ただこの面白さっていうのはまったくあとに残らないので、たぶんすぐ忘れる。

  • 独特な世界観なので、好き嫌いがハッキリわかれそうな作品。
    私は中々好みでした。
    女と館長のかけ合いがテンポ良く面白かったです。

  • つまらない本しかおいてない図書館

    猫のギィはかわいい

  • これは何だろう。図書館の話。
    とりあえず、ネコがカワイイ。
    シュールで笑える。

  • (2016/11/15読了)
    初めましての作家さん。本好きの私、図書館の書架で見つけて、タイトルに惹かれて借りてみた。
    コレがキリフキワールドなのか。。。
    ツクツク図書館の書架に並んでいるかも(毒舌⁉︎)

    (内容)
    つまらない本しか置いてない、ツクツク図書館。職員も建物もへんてこぞろい。弱気な館長、運び屋、語学屋、戻し屋ちゃん…そこにある秋、ひとりの着ぶくれ女がやってきた。女は働かないで、わがまま放題。だけど、図書館にある“伝説の本”の話を聞いて…?奇妙でかわいくってクセになる。キリフキワールド、いざ、開幕。

  • 着ぶくれた女が、誰も来ない図書館にやってきた。静かだったその場所は、少しずつ変化し始める。

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