幽談 (幽BOOKS)

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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840123730

感想・レビュー・書評

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  • 妖怪小説家として有名な京極氏による怪談本です。
    滅茶苦茶怖いというものは無いですが、じわじわ来ますね。
    小説でもそうなんですが、この人の文章って情景を読者に想像させるのが上手いんですよ。
    それによって、作品に入りやすくもあるんですが、感情移入しようとすると、京極氏得意の、徐々に微妙な違和感を感じさせるようなザラリとした気味の悪さを味わうことになります。
    あまり怖くないなー、と思って読んでいたんですけど、余韻があるというか、何か後を引くんですよね。
    この人、怖い話と思って読むと、何故か印象に残る嫌な話だったっていうのが得意なのかも。

  • 読んでいる間不思議な感じがしました。はっきり恐怖を感じるわけではないが何か得体の知れないものがいるのだろう世界。また次の本を読まなくては。

  • 図書館。久しぶりの京極夏彦氏。
    最初のお話は、ああ京極夏彦の作品を読んでいるなあ、こんな文体だったしこういうオチだなあと読み、進むごとにどんどんそちらの世界に引き込まれていく。読み終わった時には「あ」の口になって呆けている自分がいる、この感覚が好きで読んでいるんだよなあと思った。

  • 怖いというより、ぞっとする。
    じわじわくる。
    厭な気持ちになる。
    タイトルのかそけき様がまた、幽かさを増し‥。
    まさに「幽談」。

  • 薄墨を溶かしたような、枯淡の怖気。どこか座りの悪い怪奇が上品な短篇集。曖昧になる常識の輪郭。幽く漂う狂気。そして自分の見ている世界すらも信じられなくなる。どこか美しくプラトニックが希な『十万年』が群を抜いて良い。

  • 何だか不気味で何だか気持ち悪く何だか恐いような、でも何があるというわけでもなく、理不尽だが、理不尽だが、理不尽な仕打ちがあるわけでもなく。とにかく、描写しがたいが、ベッドの下や、街の片隅や、一人歩きをしているときの後ろや、使われていない二階の部屋や、そういうものが少し気になる、少し背中がスッとする、そういう感覚を覚える。
    「成人」が一番ゾッとしたかな。実話怪談風って、時に滑稽なのだが、昔の作文風は結構来るなぁ。

  • 切り取ったワンシーンのような文体。
    美しく、冷たさを覚える。
    京極夏彦の文章はやはり美しい。

  • タイトルがいい。
    装丁がいい。
    頁はじめ、頁おわりの若草紙がいい。
    出だしの一文、「汽船で行くのである。」なんてもう。すてきだ。美しい。

    京極夏彦の短編集。
    「幽談」といっても、おどろおどろしい幽霊がバーン!と出てきゃー!なんて真夏の怪談ではない。

    まとわりつく形のはっきりしない恐怖を、じめーっと感じる、まさにこの、はっきりしない梅雨時期に良い小説。

    以下ネタバレる。


    手首を拾う→昔旅館の庭で拾った手首がまだ健在か見にいく話。変わっていく景色、変わっていくことの恐ろしさの中で、手首だけは変わらない。

    ともだち→死んだ森田くんを見る。僕が僕でいるためには同じ時間に同じ場所にいなきゃいけない。ルーティンしなきゃ生きてるか死んでるか分かんない。だから森田くんもルーティンしてる。

    成人→江戸川乱歩みたい。二つの作文のくだり。なんだか何もうまいこと理解できなかった。。。勝手な解釈だけど、人に成れない幽霊の類が、成人式に参加しなかった人をターゲットにくっていってるの?

    逃げよう→嫌なものから逃げ続ける無限ループの恐怖。振り出しに戻るときの自然さったらない。うまい。おばあちゃん初回登場から、これ絶対生きてないやろと予想してたョ。

    十万年→「ものの見え方は人それぞれ。」を突き詰めると、世界が本当は白黒逆だったとか、左右逆だったとか、いま見えている世界を誰とも分かり合えない孤独感におちる。十万年に一度、おおきく魚が空を舞うのは、事実なのか幻覚なのか。

    知らないこと→「逃げよう」とちょっと似ている。見せかけのストーリーから現実に引き戻すときの繋がりがいい。隣の家のサイコな行動をしている主人、という本人のうんだ妄想は、現実を知らないフリして逃げ続けた結果。

    こわいもの→こわいとは何か、哲学のよう。本当に「こわい」とされるものが入った木箱を買い取りにいく話。この本自体の最終話でこんな終わり方されると、本を閉じたあと「うおー!京極先生ー!」とテンションがあがる。

  • 2008.09.20

    私がなるほどと思ったのは「十万年」という話に出てくる、宇宙人についての話。



    (前略)
    特撮に出てくる宇宙人も、SFの宇宙人も、形は変だけどそこは一緒なんだよと、先輩はなぜか悔しそうに言った。
    「まあ、言葉は通じないとしても、それから姿形は人間と違うとしてもさ、例えば空気の振動を音として認識して、光の反射を視覚として捉えるという基本的な構造は、みな一緒じゃないかよ。空気の振動を視覚的に認識し、光の反射を聴覚で捉える、それだけの違いで世界は裏返っちまうぜ」



    あと、それに続くこの話も。



    「こうやって、可能性を広げていく、それが想像力だと俺は思う。だから、神秘と合理は相反するものじゃない。合理の先に神秘はある。非合理が神秘だと思うのは、そりゃ間違いだろうし、合理は神秘を否定するという、そういう短絡も、アホだと思うぞ」
    科学ってのは実証主義だろ、と先輩は言う。
    「でもな、人間には実証出来ないものもある。いや、実証出来ないものの方が多いかもしれない。例えば、見届けるのに千年の時間がかかるような実験があったとして、その実験結果は予測することしか出来ない。実証は無理だ」
    (中略)
    「十万年に一回起きる自然現象は、観測できないぜ。きっちり十万年目に、正確に、必ず同じように起きる現象であっても、そりゃ人類にとっては今のところたった一回二回のことなんだし、偶然ということになるだろう。(以下略)」

    確かになあ。
    自分が「世界」として認識しているものは、実は非常にあやふやな基盤の上に成り立っているのだとこの本でも京極氏は突き付けてきます。

  • 十数年ぶりに再読
    「成人」は仄暗さとエロチックさと不気味さがあいまってて好み
    『どすこい』とかもだけど、「下の人」とか「知らないこと」とか真面目な文体で面白おかしい内容書くのが意外と得意なんだなぁと思う

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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