トーマの心臓 Lost heart for Thoma (ダ・ヴィンチブックス)
- メディアファクトリー (2009年7月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840128674
感想・レビュー・書評
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漫画は未読。でも、一応ストーリは知ってますという知識。でも、漫画をちゃんと読んでいないせいか、小説に対する違和感は無し。ただ、或る程度内容の知識が無いと、分かり辛いかな〜という不親切小説かと思います。で、何故舞台が日本なの?
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漫画を読んだことなくて、小説として楽しめました。少し空気の冷たい秋の様なお話。どんなジャンルにも属さないお話と思いました!
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読み返し一回目。
常々、森さんは萩尾望都さんのファンだって言ってたし、対談も何回かしていて、僕も萩尾望都さんが好きだったから森さんファンの僕には嬉しかったんだよなぁ。
先に原作を読んでいたから、なんだか不思議な感じがしました。
原作にはそこまでオスカーは登場しないし、エーリクとの絡みがほとんどないんだけど、本当はこうやって仲良しさんだったのかなって。
オスカーって年上の同じ学年の少し悪な不良なイメージだったんだけどこんなに優しかったのかなって。
森さんの描くトーマの心臓はやはり森さんのトーマの心臓だったけれど、根本にあるものは同じな気がする。
少しでも押してしまえば割れてしまうほどの薄い薄いガラスのような繊細で美しくデリケートな感じ。
元々、森さんの作品はまだ奇跡的に踏まれていない積りたての真っ白な雪路のような美しさがあって、僕はそこが物凄く好きだ。
そして、望都さんの作品もそういうところがあって、森さんの鋳型の一部になっているのかもしれないと
この作品を読んでしみじみ感じた。
綺麗なお話だ。
そして、あくまでオスカーの物語りに終始していて、原作のネタバレもしないよう見事にカバーしていた。
森さんがこの作品を書くときの姿勢がそこに見られるような気がする。 -
やっぱり萩尾世界の感じられる漫画が読みたいです。
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綺麗なモノを壊れないように大事に書いてある。俺の心臓は綺麗ではない。
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積み本になってましたがやっと読破しましたー
はじめイラストどれが誰かわからなかった…
女性が原作の本をここまで細密に文章に表すのは森先生さすがだなーと思いました
正直もちょっとお耽美BLなのではと思ってましたが真面目な話でしたよ…
お気に入りの一節>>どうして同じ体に、毎朝同じ心が戻ってくるのだろう? -
ロジカルな作風が売りの森さんが、リリカルな作風の萩尾さんの名作をどのように描き出すのか・・・。
単純にそんな好奇心から手に取った一冊。
ロジカルとリリカルって、相反しないのね・・・!
とてもうまく融合させていたと思います。
森さんて、もうどんな話も書けるんじゃないの・・・?
しかも萩尾さんが描いたユーリがもうもう美しくてねぇ。
表紙はエーリクなんだけど、第3章の挿絵のユーリの美しさにぜひ見とれてほしい!(あと第4章の挿絵もねー、銀河鉄道の夜のジョヴァンニとカムパネルラのようで美しいのよー)
お話自体は原作読んでない人にちょっと不親切(?)な描き方をしているんだけれど、これを機に原作を手に取ってみるよい機会になるのかも。
ぜひ原作とセットで読み比べてみてほしい一冊です。 -
2010.10
森博嗣版トーマ。完全なノベライズかと思ったら、細かい設定はオリジナルだった。舞台は日本。時代は不明。近未来っぽいような、戦前のような。イラストのあまりの雰囲気の違いにびっくり。 -
オスカー視点のトーマの心臓。なんか、少女漫画的な装飾が抜け落ちたような、すっきり感。でもあの少女漫画的なところがないと物足りないかも。
あとオスカー視点すぎて話が遠い。見えてこない。オスカーの家族の話のところがよかった。 -
(2010.10.02読了)(2010.09.29借入)
萩尾望都のマンガ「トーマの心臓」のノベライズ版と言うのですが。
マンガを読んだのが、1981年なので、29年前です。よくわからない漫画でした。
ノベライズ版を読んでみて、内容は何となくわかったのですが、トーマとユーリの間に何があったのか、ユーリと上級生の間に何があったのか、ユーリの事件とトーマの自殺(?)との間に関係があるのか、ないのか明確に書かれていないので、すっきりしません。
感受性の高い方、感性の豊かな方に人気のある作品のようです。
マンガを読んだ時もそうだったのですが、小説を読んでも、「トーマの心臓」と言う題名の意味するところがわかりません。英語の題名が添えてあります。Lost heart for Thoma です。トーマのための虚ろな心でしょうか?
ここまで書いたところで、amazonでマンガ「トーマの心臓」の紹介文を読んだら、
ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
という文言がありました。トーマからユーリに宛てて出され、トーマが亡くなってから届いた手紙に上記の文言があったのでしょう。題名はここからきているようです。
この小説は、オスカーが語り手として書かれています。
オスカーは、父が母を拳銃で殺し、父が失踪する前に、父の友人のワーグナ教授に預けられ、この学校の寄宿舎で暮らしています。優秀な生徒は、ワーグナ教授のゼミに参加が許されるのですが、オスカーもワーグナ教授のゼミに参加しています。
普通は、一部屋4人の寄宿舎なのですが、オスカーは、ユーリと二人だけの部屋で過ごしています。
トーマがいなくなった後、時期外れの転校生、エーリクがやってきます。エーリクは、オスカーにそっくりだったので、あれこれと波紋が起こります。
エーリクが先輩たちの懇親会に招かれた時、オスカーも一緒に行ったのですが、エーリクが飲酒して、悪酔いしたため、オスカーは、学校側から注意を受けます。
表向きは、学校での飲酒は禁じられていたのです。酔っぱらった状態を第三者に見られては、学校側も放っておけなかったのです。
オスカーは4人部屋に移され、エーリクは、ユーリと同室にされます。
ユーリは、トーマとエーリクが似ているため、口を聞くのも嫌なのですが、学校側の指示に従わないわけにはいきません。
ところが、エーリクは、ユーリと同室の生活を始める前に、失踪してしまいます。
エーリクは、母子家庭に育ち、母親にかわいがられて大事に育てられたのですが、母親が再婚したために、寄宿舎生活に入ったのです。
ところが、その母親が、新しい夫と一緒に交通事故で亡くなってしまったのです。エーリクは、弁護士からの連絡で、弁護士のところに出かけて行ったのです。
オスカーとエーリクは、後を追い連れ戻すことができました。
トーマが自殺した事件より前に、ユーリに何かあったらしい。そのため、3人の上級生が、退学処分になっている。(表面上は、留学とか、転校とか)
その事件と言うのは、ユーリが3人の生徒にリンチされたらしい。
トーマとアンテがその現場を偶然見てしまったらしい。
トーマとアンテは、ユーリに恋していて、トーマは、ユーリに手紙で何度か思いを打ち明けていたけれど、受け入れてもらえなかったので、表向き、秘密になっている事件のことを切り札に、ユーリに受け入れてもらおうとしたが、拒否されたために自殺に及んだのではないか、と言うのがアンテからの情報だった。
アンテは、オスカーに恋していたらしい。
ユーリは、悩んだ末、研究者の道を捨てて、神学校へ転校することを決めた。神父になるのだと言う。
オスカーは、ワーグナ教授が具合悪くなり倒れた後、ワーグナ教授から、オスカーの父が母を銃殺した理由を聞かされる。オスカーの父とワーグナ教授は、オスカーの母を同じように愛しており、結局、ワーグナ教授は、恋に破れたのだが、オスカーの父の収入が足りないため、オスカーの母に生活費を援助していた。
オスカーの父はそれが許せなかった。さらに、実は、オスカーの実の父親は、・・・
明確に述べられていることばかりではないので、僕の勝手な思い込みが、入っていると思いますので、誤読は、ご容赦ください。
●躰と心(73頁)
反対側の、ユーリのベッドを見る。彼はまだ眠っていた。穏やかな顔が、窓からの光でいっそう白く見えた。死んでいるようにも見える。天使のようにも見える。どうして、同じ躰に、毎朝同じ心が戻ってくるのだろう?
●檻の中(83頁)
人間も目に見えない檻に入れられているってこと。家族とか、学校とか、親戚とか、そういうのもあるし、それから、法律とか、国家とか。
●学問は、生活に余裕がないと(134頁)
芸術も学問も、あらゆる分野のアカデミックな文化の大半は、歴史的にも裕福層が担ってきたものだ。けれど、才能は富には関係がない。芸術的なセンスよりも、学問的なセンスの方が、はるかに才能に依存しているだろう。となれば、国民全員、学問を修めるべきだね。才能を発掘するために、国がそれを援助する必要がある。たとえ女であっても同じだ。
(2010年10月3日・記)