- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840146692
作品紹介・あらすじ
名短歌&百の掌篇。短歌から生まれる不思議で怖い小さなおはなし。怪談専門誌『幽』の人気連載「短歌百物語」に大幅な書き下ろしを加え単行本化。
感想・レビュー・書評
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再読。妖しい短歌百首を紹介すると共に、短歌から浮かんだイメージを元にした掌編ホラー小説を掲載した作品。
ホラー小説としてはややありきたりだったり、フワッとしすぎてイメージを掴みづらい内容の作品もいくつかある。
短歌と根が繋がっているのが分かる作品もあれば、元となった本体から離れ「変化(へんげ)」した作品も…。この歌からこの世界をイメージしたのか、と人の視点を覗き見るような楽しさもあるし、幻想的な短歌のアンソロジーとして読むも良し。
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雪降らぬ島々の子に死者の顔覆へる白をいかで教へむ
水原紫苑
近年、不可視の世界と言おうか、近代という枠組みからとりこぼされてしまう世界に、注目が集まっているようだ。たとえば小説では、怪談専門誌「幽」の妹版として、女性向け怪談誌「冥【めい】」の創刊。俳句では、倉阪鬼一郎の「怖い俳句」(幻冬舎新書)が話題となった。
短歌では、佐藤弓生の著書「うたう百物語」が好評である。100人の歌人から1首ずつを選び、想像力を飛翔させ、その歌の世界を掌編小説にアレンジ。見開き2ページずつの幻想世界100編が、歌の体温とともに、読者に迫ってくる。
掲出歌は、年末のデパートが舞台の小説に変身した。若い父親が、娘の姿にふととまどう。娘が、子供服売り場で雪のように白いコートを試着したのだ。妻が日頃、純白の服を着てはいけない、と強く言っていたというのに――。そして「死者」の顔を覆う「白」色が際立つ結末となっている。
ほかに選ばれた歌は、詩人中原中也の
〈暗【やみ】の中に銀色の目せる幻の少女あるごとし冬の夜目開けば〉
や、作家栗本薫の
〈花ぐもり座敷わらしがあらはれて花を見てゐる濡れ縁の上〉
また、2000年に没した歌人仙波龍英の
〈ひら仮名は凄【すさま】じきかなはははははははははははは母死んだ〉
など、近現代から目配りよく採られ、短歌だけでも読み応えがある。
異界との自在な出入り、ホラー要素もある幻想空間。そのような世界が親しく感じられるのは、おそらく、どこかゆがんだ現実社会の照り返しだからなのだろう。
(2013年1月27日掲載) -
腕を植えて生き直せれば永遠の植物としてあなたを愛す (東直子)
…の一首から始まる、全99+1首の短歌と、そこからうまれた怪談風味の掌編がおさめられた贅沢な一冊です。一気にたくさん読んだり、ちまちま読んでたら、いつの間にか「こっち側」に戻ってきてしまいました。ふわふわとした言語感覚と刃物みたいな切れ味がいっしょにあって、ぞくぞくしてとてもよかったです。どことなく暗い情緒を感じさせる短歌のチョイスもさることながら、添えられた佐藤さんの掌編もとても素晴らしい…! 「怖いけど首を突っ込んでみた」感じの、えも言われぬ掌編あってこその本作でした。眠りたくない夜は、本書にお世話になるといいでしょう。
せっかくなので私も一首考えてみました。怪談っぽいやつ。
「目の前にいたんだもん」と頽れてぎゅっと手のひらにぎるあの子は
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夜な夜な就寝前に少しずつ。短歌がいざなう夢物語。月の夜に見る白昼夢。ひやっと怖くて懐かしい。生と死の狭間をゆらゆら‥
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短歌+短編小説という形式で構成されている本。
小説の方にははっきりした起承転結が無かったりしますが、
短歌の雰囲気をとても深めてくれています。 -
幻想・怪奇風味の短歌をベースに織られた掌編集。倉阪鬼一郎「怖い俳句」に触発されて、いくつか手に取った本の一つであるが、俳句に比べて短歌のほうが長い分だけイメージが固定されやすく、説明過多になってしまう印象を受けた。それぞれの掌編は美しいが、流れてしまうような部分もあり、それぞれの印象はやや薄い。読み通すよりも、むしろ朗読用のテキストとして、それぞれ演じられるべきかもしれない。
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短歌から連想される情景でつづった、百物語。
掌編読んでから、短歌読むって形になってます。
それだと、いまいちイメージしづらい。
逆にしてみたら、それなりにぞくぞくしました。
変な世界に惹きこまれる感じはあったけれど、没頭まではいかず。
それって、自分の想像力の仕業? -
一番最初が一番良かった……
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短歌からイメージを膨らませて描かれた、ショートショート怪談。ひとつひとつはとても短くてさっくりと読めますが。これは一話ずつじっくりと読むのがお勧め。物語を先に読んでから短歌を見ても、短歌を見てから物語を読んでも楽しめます。