ふったらどしゃぶり When it rains, it pours (フルール文庫 ブルーライン)

著者 :
  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840154079

作品紹介・あらすじ

同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。報われないと知りながら、一緒に暮らす幼馴染を想い続けている整。ある日、一顕が送信したメールが手違いで整に届いたことから、互いの正体を知らぬまま、ふたりの奇妙な交流が始まった。好きだから触れてほしい、抱き合いたい-互いに満たされない愛を抱えながら、徐々に近づいていくふたりの距離。降り続く雨はやがて大きな流れとなってふたりを飲み込んでいく-。

感想・レビュー・書評

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  • お世話になっているみんみんさんの激推し作品に挑戦してみました!
    そもそも私がBLを初めて読んだのは(BLではないけども)江戸川乱歩の『孤島の鬼』でした。
    びっくりする位に抵抗もなくむしろキュンする作品のブックリストにまであげる程でしたが、そこに『魔界水滸伝』で完全なる純愛にやられ(これもBLではないんですが)、やはりみんみんさんとおびのりさんのお勧め『蒼穹のローレライ』で号泣とBLの底力を感じている訳ですが、本格的な現代BLは初めてです。

    なんつう、なんつう切なさよ…!!

    一穂ミチさんは今となっては文学界での地位を築かれていますが、私自身『光のとこにいてね』しか拝読していなかったのでBL界でも人気だとは知りませんでした。
    なんと言いますか、流石としか言いようがない。これBLと括ってしまって良いのだろうか、れっきとした恋愛文学ですよ。いやBLも文学なんだけども、上手く言えません。(語彙力は死にました)

    一穂ミチさんも、栗本薫さんも、共通して思うのは男女の恋愛も見事に書けるという事。
    実際に本作の主人公の1人、一顕は美人の恋人、かおりと同棲している状態から始まります。
    最初はシングルベッドをぴったりくっ付けて寝ていたのにどんどんその距離が開き、最終的にはサイドテーブルが間に挟まってしまう。
    愛し合ってはいますがセックスレス、しかも一顕は求めているのに彼女がその度に躱し続け、結婚が視野に入っているけれども一顕はお悩み。

    片や幼なじみのデザイナー和章に片思いしている整。整が辛くてどん底だった時もずっと助けてくれていた彼の家で2人暮らし中。
    この和章に最初腹を立てていたんですよ。整の気持ちを知っていて拒絶してる癖に離れたくない、ずっと一緒に居たい、って、一体どういう事なんだ?!整も男から狙われるストレスを抱えさせてると気にしてるし!と。
    これが最後にどんでん返し。1番切ないのは和章かも知れない…ごめんな…と謝罪する羽目に(最近よく小説の登場人物に謝ってるな…)

    まあ、その辺の事情はネタバレになるので置いておいて。

    主要人物2人の名前が同じ読み方なのが気になっていたら、やはり伏線でした。
    一顕と整は部署は違いますが同じ会社でひょんな事から顔見知りに。
    ある日、同期会の幹事を任された一顕はその連絡をする際に間違いメールを送ってしまいます。
    送信先は整。
    2人はそれをきっかけにお互いが同僚だとは気付かずに名も名乗らずメル友という関係に。

    顔が見えない知らない相手と言う気安さもあって、徐々にそれぞれの恋愛の悩みを打ち明けて行く2人。
    片想いも辛いけど、両思いなのに身体の関係も大事にしてる一顕も辛い。
    お互い蛇の生殺し状態で悶々とした日々を過ごす中、このメールが癒しとなって行きます。

    変なメル友とやりとりすんな、とちょっと整にやきもちみたいなの焼く和章に、君にそんな事言う権利ないからね!と怒ってた私を許したまえ…ごめんね…(2回目)

    整は片想いをしている件だけが辛いのかと思っていたら悲しい過去を抱えており、そんな時に文字通り親身になって世話をしてくれた和章がどれ程有り難い存在か気持ちが分かるので、苦しむ整に対してこっちも悲しくなったものですが、一穂さんの綺麗な文章がより悲しみを煽ります。
    整と一顕が飲み屋で中学生男子みたいな会話をしてるシーンひとつ取っても素晴らしい表現力だし、おびのりさんがレビューで一穂さんBLでも全力だと書かれていた理由が分かりました。

    タイトルが現しているように雨が重要なキーワードとして使われているのですが、マンションの低層階で雨音が煩くて眠れない時もある一顕と、タワーマンションの高層階で雨が降っても分からなくて、雨音が恋しくなる整の対照的な思いもとても詩的で、昔はかおりと抱き合って雨音が煩いね、と笑っていた事を思い出す一顕と、どれだけ想っても拒絶される和章との静かな空間に息苦しさを覚える整、2人の感傷が見事に表されていて溜息が出ました。

    事ある毎に雨がドラマティックな演出をしてくれるので、洗濯物を干していたのに突然降ってくる雨にイラついていた昨日の気持ちが嘘のように浄化されました。(天気予報をあまり見ない弊害)

    お互い別の相手への切ない気持ちを抱えたままで話が進んで行きますので、一顕と整がどうなるのか気になりすぎて一気に読んでしまいました。
    中盤でかおりの女上司の家に、一顕とかおりがお呼ばれされたシーンなんかは、湊かなえさんの世界じみていてハラハラしてしまいました。怖い…怖すぎるし一顕可哀想だからやめてあげて…。
    私が一顕なら泣いて帰ります…。

    ただ、この一件のお陰で一顕と整の距離は近付く事に。でもこれはこれで切ない!!

    みんみんさんに教えて頂いたのに、再販された完全版ではなく通常版を読んでしまったので、完全版で付いていたほっこり書き下ろしが読めなかったせいで、幸せなシーンが非常に少なかったですが、今まで読んだBLの中では1番良い終わり方をしたので嬉しかったです。このシーンも雨が最高の演出をしてくれていて、とても素敵でした!

    でも和章…涙。
    誰か和章の事を今度は助けてあげて…。

    みんみんさんとおびのりさんのお陰で、切なくて面白いBLばかり読めているので有り難いです。ありがとうございます!
    本当のBLファンの方々は様々な作品を読まれていると思うのですが、やはりこの世界にも当たり外れはあるのでしょうか?好きなシチュエーション等でも変わってくるとは思うのですが。

    さて、まだまだみんみんさんのお勧めが控えてますので他と合わせてちょいちょい挟んで行こうと思います♪

    ところで、この系列の作品は表紙が表示されないんですね。せっかく綺麗な表紙なのに残念です。
    もう、何を晒されてもこちとら気にしないんですがねえ…(いや、普通に素敵な表紙なんですが)

    • yukimisakeさん
      ゆーきさん、それがですね…ちょっとなんとも言えないあれがアレで…
      またどっかでお話しますね笑
      ゆーきさん、それがですね…ちょっとなんとも言えないあれがアレで…
      またどっかでお話しますね笑
      2024/04/10
    • ゆーき本さん
      (*ノωノ)キャ
      じゃあどっかで待ってる
      (*ノωノ)キャ
      じゃあどっかで待ってる
      2024/04/10
    • yukimisakeさん
      お願いします…笑
      反省の毎日です笑
      お願いします…笑
      反省の毎日です笑
      2024/04/10
  • あー…一穂さんの作品の中でもかなり上位で好きかも。同じ会社の同期、同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕×同居している幼馴染が好きな整。web連載だとなかなか続けて読むのが難しかったのでこうして本になって嬉しい。個人的にはすごくリアリティがあって、色々考えてしまったなぁ。偶然から始まって、ホントいろんなことが重なって終盤はタイトルの通り。ペーパー付。サイン会参加サイン本(ミニトート他グッズ、小冊子[アフターレイン]付)

  • WEB小説マガジン「フルール」掲載作品が紙化。女性による女性のためのエロティックな恋愛小説、というのが売りのようですね。TL系とBL系の二本立てなので、自然と互いを意識しあうものを感じさせます。
    そこに一穂ミチセンセの登場というのは、BLとして安定した品質保証ばかりではなく、エロ特化でもいける作家さんだと判明する良い機会になりました。

    HしたいのにHさせてもらえない男と、同居する相手に片想い中の男が恋に落ちるという一見ベタなストーリーですが、切り口のセンスの良さにはっとさせられます。
    ツールの扱い方もよかったです。メールのやりとりが面白く、ドキドキハラハラさせられました。読者は相手がわかってるので、いつ気がつくのかドキドキしたし、後半の修羅場もメールの存在感がハンパなかった。
    登場人物が一顕にしろ整にしろ全員、生々しい感情を持ってせまってくるんですよね。
    特にかおりや他の女性の登場人物の感情には女の特質というか嫌な部分がきっちり描かれていて、いたたまれなかったです。
    そういうのが見たくないから、BL読んでるんです…
    和章にもあっと言わされました。抱えているものがあったんですね。すごく印象が変わった登場人物です。重い。

    人物像について言えば、一顕も整も種類は違ってもそれぞれ色気が漂いまくりで、感情の表し方も行動の仕方も人間臭いところがよかったかなと。
    特に、エロの描き方。
    話の端々に官能が見え隠れしていて、時折ドキッとさせられます。
    ベルニーニの「福者 ルドヴィカ・アルベルトーニ」らしき彫刻を一緒に見て、互いを意識してしまう…というくだりがエロティックでした。芸術作品が、いい仕事しています。
    そして、あるきっかけで二人は一気にセックスへとなだれ込んでいくんですよね。
    どのHシーンも求め合う激情がMAXで感じられて、萌えました。
    理屈じゃないんですよね。
    互いをがつがつと求め合う姿に飾ることのないありのままの想いがあふれていて、やってることはただのHなんだけど、確かにこれも愛だと思わせるものがありました。


    あと、砕け散ったストームグラスもインパクト大。こわい。書き下ろしのたらいはきゅんときました…
    そういうツール使いがあちこちで光ってます。

    読み返す確率は高いと思える作品。

  • 同僚 萩原×半井

    WEB連載で既読
    出会いも気持ちを近づけていく過程もいい感じ。
    ただ、それまで報われなかったにしても、思ってた人がいるのに・・・と思わなくもないけれど。
    人が、たった一人だけを心に思う時ばかりじゃないことを知ってる程度には、年なんで私。
    それも、あ~そうだよね。そうなっても仕方ないよね、って。
    特に萩原、よく耐えてきたよね。
    いっぱい半井とイチャコラしなよ。

  • やっぱり横組みの画面より、文庫で読むほうがストーリーに入りやすい……と思うのは古い人間だからでしょうか?
    文庫化バンザーイ!!ww 
    おとなのエロスが売り言葉のフルールなので、かなりエロいです、エロくないシーンもなんだか色っぽくてエロいんです!
    だけど!
    エロだけじゃないよ!だって一穂さんだもん!!
    そこにいたるまでの描写がうん、やっぱり一穂さん!!
    ほんと大好きなんだ。何度だって言う!
    ワタシは一穂さんの書く文章が大好きだ~!!!
     
     
    帯……マルコさんの案じゃなくてよかったですねwwwwwwwww

  • 非常に評価が難しいお話でした・・・。
    どうなのこれ?と・・・。
    一言で言うと「やりたい男同士の話」というミもフタもないことになってしまいそうな。
    なのに相変わらずの描写の美しい文体。
    テーマも本当に難しくて恋愛にセックスが必要かみたいなところになってくると思うんだけど。
    「両想い」だけどプラトニック。「同棲してる」けどセックスレスの「お預け」されてる側の二人の苦しみにスポットライトが当てられていて、「ただやりたい」というだけではないんだけど、下世話な話はそうなんでしょ。ということにもなり・・・・。
    結局、その点に限らなくても恋愛において相手に必要なものを与え合えることは大事なんだよね。という気がしてくる作品ですね。
    うーん、難しい・・・

  • 一気読み。切なくてきゅんきゅん。いいわあ。

  • 何気に重たい背景の二人。それを書き切るのがさすがだなあ、と。この設定は地雷の人も多そうだから好き嫌い別れそう。
    挿絵がイマイチ雰囲気と合わないかな〜。もっと大人な絵柄のほうが雰囲気にあうかも。
    Webで読んでた時はこんなにページが多いと感じなかったんだけど、つまりそれだけ読ませるということか。
    書き下ろしがあって、その後の二人が読めて良かった〜!

  • 大好きな作家さんのひとり、一穂先生の新刊。
    まず、届いたときに思ったことは「本が厚い!」でした。と同時に、読むのが楽しみに。

    さて、いつもと同じように、何の情報も入れないまま、まっさらな気持ちで本を読み始めました。
    ”かずあき”という名前から、少し混乱するようにもありますが、読みなれていくうちに(漢字は違うのだけれども)互いの生(性)活背景が分かるように。
    「kazuaki」で始めるメルアドだったので、最初は一顕と和章が…?!えええっ!!と思ったのですが取り越し苦労だったようで、一顕と和章の同居人、整とのやりとり。
    メルアドが好きな人の名前+誕生日って、すごいな…と思ったのは私だけでしょうか?だってこのメルアドは和章本人も知ってるわけで…。でも和章は整の自分への気持ちを知っててその気持ちだけキレイに避けています。離れられないって知ってて残酷なんだけど、理由は最後の和章の吐露を読めばわかります。
    さて、ひょんなことからメールのやりとりをすることになった、一顕と整。お互い、自分がまわりに言えなかったことをメールの文字にかえてやりとりするところ、加えてどんどんと自分の奥底にこぷりと溜まっていた感情が加えられていくところが、読み手の私にはとても引き込まれていきました。
    一顕も整もコップのフチにたまった水みたいに、あふれそうであふれないラインで心をたもっていて、先に一顕がこぼれちゃって。整に真夜中メールするときは、一顕の感情にシンクロ。なんていうか…彼女のかおりさんには…ううーむ…。個人的には一顕が欲を押さえつけられていいように扱われてるのは辛かったかな。話し合えればよかったけど、実際、膝詰めて彼氏と彼女が話すには勇気がいるとおもう。でも結果、一顕も整も、あふれそうになってるお互いのコップの水を飲んでくれるような相手だと分かって、一緒になれたから、終わりよければよかったよかった!
    個人的には表紙は素敵だと思うけど、竹美家先生の挿絵は必要なかったかも。辛口なようだけど、全体的にぼんやりしすぎててキャラがよく伝わってこなかった。和章さんもイメージ違った…。でもそれを差し引いても★5つです。

  • 間違いメールから、なんでも話せる(メールできる)
    仲に。お互い誰か知らないまま。
    でももうその時から、お互い無くてらならない存在になってたんだろうな。
    和章の気持ちもわかるけど、もっと早く話せてたら違ったのか。話せても話せなくても、そういう運命だったのかもな。
    あーでも、最後まで、お互いがお互いを思ってるが故にうまくいかないのかなあと、思いながら読んでたから、ふったらびしょぬれ、で、よかったー。

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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