蚊がいる (ダ・ヴィンチブックス)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840154307

感想・レビュー・書評

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  • ほむほむこと歌人・穂村弘さんのエッセイ集。
    独身の頃よりも、なんだか落ち着いたような感じがしました…ほむほむの人生の経験値が上がったのかも?
    でも、ちょっと自意識過剰なところは相変わらずで、つい嬉しくなってしまいます。
    特にほむほむ流マナー考に、にんまり。

    本書で特に楽しみだったのは、巻末の対談です。
    ほむほむの対談相手は、お笑い芸人の又吉直樹さん!
    世間に対して「自分はズレている」と感じていること、短歌・俳句や笑いで表現することを生業にしていること、などの共通点を持つお二人。
    対談時の写真が数枚掲載されているのですが、なんともいい表情をされているのです。
    楽しい時間だったのだなぁ…ということが伝わってきて、私まで満足。

  • 表紙が素敵で読みたくなりました。
    ブックデザイン、横尾忠則。
    金鳥の蚊取り線香のパッケージがベースなのだと思うけれど、昭和のデザインって、今見ると逆に新鮮だなあ。

    中身ですが、穂村弘氏、初読みです。
    「にょっき」あたりから始めれば良かったのだけれど…
    失礼を承知の上で申し上げると、「お仲間!」という感じです。

    私も、「マスター、ノダちゃん」とは無縁だし、みんなで何かやるときに自分のやることがわからない。
    そして、他人の目を気にしすぎの自意識過剰で、考えすぎて何もできない。
    小心者、小市民…

    しかし、決定的に違うのは、それをネタとして作品に昇華できるかどうかという…
    会社勤めが長くて焦燥の日々を送ったらしい。
    しかし、そんな焦燥さえ、デビュー年齢を調べて自分と比べ、まだ大丈夫、まだ大丈夫だっ…と自分に言い聞かせた、『清張ライン、伊能ライン』みたいな面白いエッセイになってしまう。

    時々引用される短歌もよい。
    ダ・ヴィンチの読者投稿欄「短歌ください」は時々読むけれど、こちらが本になったものも今度読んでみようと思う。

    巻末には、又吉氏との対談あり。

  • ほむほむ、普通の人っぽくなったなぁ。
    ピース又吉さんとの対談がなんだかシュール。

    このキンチョールみたいなジャケットかっこ良いね。

  • ずるいよな。俺なんてベッドで菓子パンどころか、ドーナツまで食べちゃうのに、おもしろいことなんてちっとも書けやしないんだ。

  • 「歌人のセンサーが反応する瞬間(とき)」

    整った美しい世界がある一方で、自分の力ではどうにもならずただもがくしかないいくつもの現実がある。例えば夜中に耳元でその羽音を響かせる蚊―インパクトのあるタイトルに象徴される歌人・穂村弘さんがその悩ましい現実を綴る。

     「にょっ記」を手にして以来、そのゆるさに一目惚れして読み続けている穂村さんだが、本書においても「蚊がいる」ってタイトルのネーミングにまずはやられた。装丁もいいです。ソレっぽくて。「蚊がいる」「かゆいところがわからない」「マナー考」「納豆とブラジャー」の4章からなる短文集で、痛々しいまでの内向的な自意識をお馴染みのユルさに包んで、めがねの奥から目の前の事象をじっとみつめる穂村さんはここにも健在だ。

     穂村節とも言える文体で語られる、普通の人はそんなこと思ってもみないだろうなということや「そうくるか?!」という物事の解釈に読む度に度肝を抜かれるのだが、ときおり展開されるその哲学的な世界観に共感の目眩を覚えることもしばしば。

     例えば「運命と体」という文章の中で、目の前にいる人と電車や飛行機で別れたとき、今の今まで手で触れられるところにいた人が、電車の発車とともに自分から次第に離れていったり、何時間後かには機上の人となって空の彼方に消えていくことがとても不思議なことに思えるというのだ。

     穂村さんは、そこに一つの身体には一つの運命があるのであって頭ではわかっていてもそれが自分の中では腑に落ちないのだという。地図上を動く光の点を見るように、自分と縁のあった人、自分が知っている全ての人の運命を「散らばった光の点としてばらばらと動く様が見てみたい」というのだ。

     この感覚ってなんかわかるんだよね。世界は全ての人に共通で一つのように思えるけれど、実はそれはものすごい錯覚であって、この世に30億人の人間がいるとしたら、今この瞬間には各人の知覚している30億通りの世界が存在するってことなんだと思う。

     行ったことも無い場所の会った事も無い人に対してはなんとなくそれはわかるけど、家族や恋人、友人など明らかにその時間の、もっといえば運命の何分の一かを共有しているはずの人にも「この人には自分とは全く違う、この人だけが見ている世界が存在する」って認識はしずらいと思う。

     そういうことに想いを馳せる穂村さんだから「別の顔」という文章の中では、電車の中でカップルの男性が先に電車を降りて別れた後の女性の様子をじっと窺っていて、彼女の表情がカップルの片割れから個人に戻っていくのを見つめたりしている。穂村さんはその「移り変わりが劇的なものに思える」というのだ。

     この章では一人の人間は数え切れないほどの別の顔を持っているということが語られている。しかし電車を降りた男性には決して見ることができない彼女の表情の移り変わりを見たとき、そこにも穂村さんは運命を共有していたカップルが物理的に離れた瞬間に浮かびあがった現実、「一つの身体に一つの運命」ということを視覚的に感じたのではないだろうか。

     歌ってきっとそういうことを感じた瞬間に出来るのではないかなあ。残念ながらここで歌が出来たとは穂村さんは書いていないけど。ピピッと。歌人のセンサーが反応する音を聞いた気がする。 

  • +++
    日常生活の中で感じる他者との感覚のズレ、居心地の悪さ、「ある」のに「ない」ことにされている現実……なぜ、僕はあのとき何も云えなかったのだろう。内気は致命的なのか。自称“ふわふわ人間"穂村弘のあたふたっぷりに共感しつつ、その鋭い自分観察と分析は、まさに“永久保存用"の納得感。
    フリーマガジン『L25』で連載していた「蚊がいる」、読売新聞「○○のマナー」、週刊文春「かゆいところがわからない」、文芸誌『GINGER L.』の「この辺に埋めた筈」などの人気連載に、ピース・又吉直樹との対談を加えて刊行。
    装丁=横尾忠則
    +++

    折しもデング熱騒動のさなかの現在、いささか物騒なタイトルではある。だがもちろん、デング熱とは露ほどの関わりもない。相変わらず全開のほむほむ節が小気味よい。肯ける部分が多いのはいいことなのかどうなのかは別として、ついつい、そうそう、と膝を打つことも多い。世渡り下手なすべての人に勇気を与える一冊である。ピースの又吉さんとの対談も、うっすらとテンションが低くて好みである。

  • 装丁に惹かれて穂村さんのエッセイ初めて読みました。
    小心で自意識過剰な日々にあるあるある…と物凄く共感したw
    特に「内気だけが罪」。
    そうなんですよ、分かってるけど直せないんだよ…内気だから。

    巻末の又吉さんとの対談も面白かった。
    他のエッセイも読んでみたいな。
    でもこの方小心ではあるけど人付き合いが下手な訳ではなさそうですよね。奥様もいるみたいだし。

  • 穂村さんのエッセイ集。この感覚、笑える。「くすりっ」でも「にやりっ」でもない「ぷっ」である。どれも面白かったが、「内気だけが罪」「パッチワーク紳士」「蝿とサンドイッチ」「納豆とブラ ジャー」「白鳥とアイロン」がさらにも笑えた。短いエッセイなので、毎日少しづつ読めるのがよい。でも一気に読んじゃったけど。

  • ほむほむ節は、おおいに共感できるけれども飽きてきた(笑)。
    こういう文学的思考男子って、世の中にどれぐらいの割合でいるんだろう。
    これまでは憧れに似た感情を持っていたのに、読むタイミングが悪かったのか、なんだか気色悪く思えてきちゃってゴメンなさい(^^;;

  • 昔から感じてた私のこういう所は人に理解されないだろうし、そもそも恥ずかしくて他人に言う気にもなれないって事を平気で文章にしている大人を発見した。とても嬉しくて親近感が湧いた。拗らせていた変人な自分という名の自意識は大人になった今他人と共有できている不思議な感覚、不思議な大人だなあと思った。

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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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