イリヤの空、UFOの夏 その4 (電撃文庫 あ 8-9)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
3.92
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本棚登録 : 1406
感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840224314

作品紹介・あらすじ

伊里野と一緒に逃げ出した浅羽。二人の前にはかすかな幸せとその幸せを圧倒する様々な困難が待ち受けていた。次第に破壊されていく伊里野を連れ、疲弊した浅羽が最後にたどり着いた場所は…!逃避行の顛末を描いた『夏休みふたたび前・後編』と『最後の道』。榎本によって明かされる様々な謎。伊里野は浅羽の目の前から姿を消し、そしてその代償のように平穏な日々が戻ってきた…かに見えた。だが…!感動の最終話『南の島』。以上、「電撃hp」に大好評掲載された四編に文庫書き下ろしのエピローグを加えて、ついに伊里野と浅羽の夏が終わる。ボーイ・ミーツ・ガールストーリー、完結。

感想・レビュー・書評

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  • 自己憐憫や陶酔の入り込むすきのない理詰めの展開と、主人公の自発的な意思決定すら物語に回収される容赦のなさ。傍から見た状況がどれだけ悲惨で、奪われることが決まっている物語を与える行為がいくら残酷でも、受け取った側がその過程に一瞬でも意味を感じたのなら、すべてを呑み込めないにしても、やっぱりそのことを、よかった、と思う。

  •  一人の人間を背負って生きるということ。その重みに押し潰される描写が容赦なくて泣いてしまった。
     精一杯決めた覚悟も、裏を返せば空想じみた虚勢でしかなくて。
     不甲斐ない自分を受け入れられず自棄を起こした浅羽の態度を契機に、イリヤの中の時間が退行していくところは、本当に展開の妙だと思う。
     気ばかり逸っていた浅羽がイリヤの過去の言葉で我に返る浜辺の場面が、良い。

     最終的に、イリヤを守り切ることができなかった上、二人の迷いも苦しみも決断も、全てが仕組まれたものだと分かったのに、不思議にバッドエンドには感じなかった。
     それは、気持ちよく死んでもらうために餌を与えるという行いの罪深さを自覚しながら、誰よりその行為の正しさを信じてもいた榎本という存在があったからだと思うし、
     さらに言えば、生きる意味も戦う意味も見いだせずにいたイリヤが、浅羽という存在に意味を見出し、それを通して初めて世界に触れられるようになった、その変化に、何か尊さのようなものを感じられたからかもしれない。

     残念だったのは、世界観がアバウトすぎて種明かしの部分が軽く感じられてしまったところ。
     そこがメインではないとはいえ、「宇宙人の侵略」に対してわずかな対抗力でどうやって応戦していたのかけっこう気になるのである。しかも地球軍は生きる意志に乏しい兵士で構成されているというので余計気になる。

     それにしても、終盤がかなり重い展開なだけに、水前寺という濃くて朗らかなキャラがいてくれたのは良かった。どうみても中学生のキャパシティを越えまくって三十路の貫録すら漂っていたけど、彼がどっしり構えてくれているだけで何となく安心できる。浅羽が慕うのも無理ないし、ちょっとへたれて依存気味になりかけるのも分かる気がした。
     最後まで元気そうだったのが嬉しい。
     

  • 何も知らずに世界の思惑通り生きて、それでも、自分の気持ちはホンモノだと胸を張って叫びたいと思う。
    おっくれってるうーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

  • イリヤ!イリヤ!イリヤ!イリヤぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
    あぁああああ… あ… っあっー!あぁああああああ!!!イリヤイリヤイリヤぅうぁわぁああああ!!!!
    あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
    んはぁっ!伊里野 加奈たんの白髪ショートの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
    間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
    小説4巻のイリヤたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ… ああ… っあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!!
    アニメOVA化されて良かったねイリヤたん!あぁあああああ!かわいい!イリヤたん!かわいい!あっああぁああ!
    コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
    ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
    イ リ ヤ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!
    うぁああああああああああ!!そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!
    園原基地ぃいいいい!!この!ちきしょー!やめてやる!!
    現実なんかやめ…て …え!?見…てる?表紙絵イリヤちゃんが僕を見てる?
    表紙絵のイリヤちゃんが僕を見てるぞ!イリヤちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のイリヤちゃんが僕を見てるぞ!!
    アニメのイリヤちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
    いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはイリヤちゃんがいる!!やったよ晶穂!!ひとりでできるもん!!!
    あ、コミックのイリヤちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
    あっあんああっああんあ絵里ちゃんぁあ!!シ、椎名ァー!!水前寺ィイイイイイイ!!!夕子ォオオオオ!!
    ううっうぅうう!!俺の想いよイリヤへ届け!!UFOの空のイリヤへ届け!

  • 長文です。

    「夏休みふたたび」前後編、「最後の道」「南の島」「エピローグ」を収録。
    その3を読み終わり、わたしはとても興奮していた。イリヤのことばかり考えていた。
    冒頭で二人がほのぼの楽しそうにしているのを見て違和感。気楽過ぎやしないか。しかし浅羽の方は実のところ(一人になる御手洗いのシーンで)疲弊した顔を見せる。ああ…早くも嫌な予感がする。
    忍び込んだ小学校で浅羽と伊里野は吉野に出逢う。吉野は大人だ。善も悪も両方持っている。榎本も、椎名もそうなのと同じように。善で浅羽を認め、二人に歴史の授業をする。悪で物を盗み壊し逃げ、伊里野を犯そうとする(または、犯した)。
    浅羽は大人になりかけているのに、子供のままでありたがっているように感じた。髭剃りを恥ずかしいことだと思う、自慰に罪悪感を覚える、大人のように善悪両方なんて持ちたくない、と考えているのでは。
    大人のような諦めも妥協もしないと無理やり自分を押さえ込んでいたが、とうとう我慢が出来なくなり、最後の道で伊里野にすべてをぶちまけてしまう。逃避行の終わりが見えていた。
    浅羽は祖父母の家に電話し(会話を傍受されることを判っていただろう)、祖父母の自宅で榎本に再会する。伊里野を手放す。そして、榎本から本当のことを聞かされる。三日後の最終決戦に負けたら人類は滅亡する。
    ところが三日後、戦争は終わったと報道される。学校に行くが伊里野はいない。校内放送で呼び出され、浅羽はヘリに乗り込み南の島へと向かう。
    「最期」の出撃を拒否する伊里野を説得させるために、浅羽は呼ばれた。伊里野の戦闘服には無責任で切実な願いが呪いのように寄せ書かれている。この部分の文章を読んだとき、言葉で言い表せない気持ちになった。わたしは今後、寄せ書きを頼まれても断ることにする。
    浅羽は人類と伊里野を秤にかけ、伊里野を選んだ。伊里野は、自分の命と人類を秤にかけ、浅羽のいる人類を選んだ。浅羽のためだけに死ぬ。こんな悲しい台詞があるか。
    エピローグでは、椎名からの手紙が筆者からのメッセージにも思えた。結末は決まっていたのだ。

    読み終わり、判ってはいたけれど煮え切らず、レビューを読み漁った。冲方丁先生の考察を読み、少し落ち着いた。
    間違いなく「イリヤの空、UFOの夏」は名作だと思う。これ以上ないラストだと思う。けれどわたしは、伊里野がずっと生きていて、浅羽の隣で微笑んでいてくれたらと思わずにいられない。

  • 最終巻。長かったようで短かった夏休み。何もなくなってしまったかのような読後感とともに余韻に浸れる。エピローグがすべて。「主人公がいるから死にたくない」のではなく「主人公のために死ねる」ヒロイン。こうして世界は救われる。

    出てくる登場人物も皆素晴らしかったです。特に水前寺先輩はカッコよすぎますね。晶穂もかわいかった。浅羽の両親も味があったし、榎本や椎名先生もよかったですね。あとはサブキャラ達もよかった。それにしてもイリヤがお守り代わりに浅羽の文房具もってたりとかしてたなんて切ないです。素直じゃなかった二人が素直になったら真実だけつきつけられてさようならという感じですかね。彼あるいは彼女にとってのハッピーエンドとは何だったのかを考えさせられます。とても良質なボーイミーツガールでした。

    どうでもいいけどMr.childrenのHEROがちょっと思い浮かびました。浅羽は誰か一人の命と引き換えに世界を救ったわけですから。ただ一人彼女にとってのHEROにはなれませんでしたけど。

  • 読み終わって、ワーワー泣いて、茫然自失となりました。「殴られるような衝撃」の意味を、ようやく掴めたような気がします。

    ファイアーストームや8月31日の会話は、浅羽の心境であり、榎本の心境でもあったのかな、と思います。
    イリヤに「人」として幸せになってほしかったから、最後まで足掻いていたのだと思います。

    夏と秋が隣り合う時期にこの作品に出会うことができて、良かったです。

    皆、幸せになってほしいと願わずにはいられません。

  • 完結編.本シリーズによって「イリヤ」といえばこの「イリヤの空 UFOの夏」という図式が成り立ち,多くの語り系クラスタに“セカイ系”というネタの燃料と与えたという(?)伝説のSFラノベ.ヒロインイリヤへの痛めつけの具体的な描写をほとんどせずに彼女の過去の凄惨さを描き,主人公にラノベ界屈指の精神的攻撃を実行するという,痛々しさは健在.しかし最後の「南の島」で感動の完結へと結びつく構成がすごい.エピローグでの浅羽の最後の最後の行動にただただ感動.こうして浅羽の長い夏が終わるわけだが,水前寺に始まり水前寺に終わる,見事な全4巻だった.2003年8月刊行だが,毎夏に読みたい本.

  • なぁーっ!まとめようとしたら本のタイトルになってもうたぁーっ!イリヤで夏でUFOで空なんだあーっ!あっでも部長が一番、かっこよかった<br /><br />

  • シリーズ完結編。そしてイリヤは…という感じの結末だった。今日のタイトルは、そんな気分だったのでつけてみたんだけどね。もう「終わらない夏休み」は流行らないか…(笑)4冊読んで、秋山瑞人の文章は大変に読みやすいという結論に達した(笑)表現がちょっと以前に読んだ重松清に似た『分かりやすい文章を書くことの難しさ』を克服している感じだね。難しく書くことは、慣れると意外に簡単に書けるが、端的だが表現が綺麗で何をしているのか分かる文章ってのはめちゃくちゃムズイ。その点に関しては、ある種の知識が必要な部分もあるが、良い文章だと思う。

                   ◇ ◇ ◇ ◇

    ラストが泣けそうで、泣けない!あと一歩を超えなかったのは、中学生が主人公だからだよなぁ…と、勝手に想像。最後の返しのインパクトが少なかったけど、その替わりに脇役たちの心情がイタイ感じで書いてある。読み終わったので、アニメ版も視聴してみよう〜っと。

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