- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784842055510
作品紹介・あらすじ
ユーゴの悲劇の根源に迫る。民主化が国家解体・内戦の引き金になったメカニズムを浮き彫りにした比較政治学の力作。第4回秋野豊賞受賞。
感想・レビュー・書評
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久保慶一・早大准教授の修士論文です。今や准教授は、旧ユーゴ地域現代政治研究、比較政治学の若手のホープ(36才)ですが、修士論文でこの出来とは、やはり学会をリードする素晴らしい研究者は違うなと思いますね。
全体的に旧ユーゴ地域の国家性問題を簡単に理解できる入門書としてかなりの出来だと思います。読みやすく、門外漢もスラスラと読めます。修論だけあって、ちょっと不用意に判断や評価を下していると思える点もありますが、これらの評価は、現在はより慎重なものになっているかもしれません。
久保氏は、比較政治学をディシプリンにしており、旧ユーゴ地域の紛争を主たる研究としていると言うよりも制度やその定着の問題など共に旧ユーゴ地域の政治変動を理解するというスタンスをとっています。
なので、国家性問題が生じる要因などついては、紛争研究で指摘されるような構造的要因との兼ね合いも気になるところです。また、これはおおきな疑問なのですが、民主主義の定義が若干異ならざるを得ない、第一次ユーゴの国家性問題を「民主化」という切り口から扱う事がそもそも方法論的な課題を内在しているのではないかという印象を持ちました。
他にも冒頭の1章で提示された理論に本書がどのような新しい知見を事例研究として提供し、インプリケーションがあったのかにも、すっきりしない印象がありました。
無論、修論にそれを求めるのは酷でしょうが。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多民族国家故に国家性問題を内包し続けた、旧ユーゴスラヴィアの民主化を概観するには最適の一冊。