どれも特別な一日

著者 :
  • 雷鳥社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (123ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784844135951

感想・レビュー・書評

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  • この詩集を読んでから、雑草がいつなんどきも「地球の不精ヒゲ」に見えてしかたない。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「(略)あれは地球が
    自分を守るために
    せっせと生やしている
    不精ヒゲ」(11ページ、「雑草」より引用)

    この詩を読んでから、出会う雑草すべてが、地球の不精ヒゲに見えてしかたない。

    不精ヒゲだもんな、しかたないよな。
    勝手に生えてくるんだもんな、ヒゲだもんな。
    地球も自分、守らにゃならんもんな。
    そんな風に思ってしまう。

    そんな不精ヒゲこと雑草の花粉にやられて、今日もわたしの鼻は、ぐずぐずしている。
    これもわたしという地球が、一生懸命、からだを守ってる証拠なのかな。
    でもしんどいわい。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    どの詩も短く、いつも見知った言葉たちでかかれている。
    けれど、その言葉がそのように並んでいるだけで、読むたびに言葉のひとつひとつが、重みをもって心に置かれていく。

    一編読み終わると、タイトルに戻る。
    すると、タイトルの言葉がまた、一刻前とはちがく重みをもって、心に置かれる。
    なんとも不思議である。
    ふしぎな詩集である。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「未来線」「雑草」「命」「銀杏並木」が特に好きだ。

    理不尽なしんどさは、やっぱり避けたほうがいい。というか、それは前向きに逃げよう、うん。
    でも、ただ座っているだけで生きられてしまうような、偽物のあたたかさの中にばかりいることもまた、避けた方がいい。

    理不尽な悪意に包まれているときは、めいっぱい不精ヒゲをはやそう。
    でも、そこを抜けて自分の歩きたい道を行くためなら、不精ヒゲを剃ることも必要だ。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    というわけで、鼻ぐずぐずが花粉からわたしを守ってくれてるのはわかったが、その守り方はなかなかにしんどいので、マスクと薬という能動的な守り方へ変更した。

    庭の不精ヒゲはまだ、生えたままである。

  • 2012年刊行。
    円熟の温かい言葉の数々がほんわかとした気分にさせてくれます。
    これで谷郁雄の蔵書たちはとりあえず全て読みました。
    次は銀色夏生さんあたりにチャレンジしてみます。

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著者プロフィール

1955年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。90年『死の色も少しだけ』(思潮社)で詩人デビュー。93年『マンハッタンの夕焼け』(思潮社)がBunkamuraドゥマゴ文学賞候補に。詩集に『自分にふさわしい場所』(写真・ホンマタカシ)、『定員オーバー』(写真・長島有里枝)以上、理論社。『実況中継』(写真・浅田政志 実業之日本社)、『空を見上げる』(写真・石川直樹 武田ランダムハウスジャパン)、『君のとなりに』(写真・谷今日子 角川学芸出版)、『思春期』(写真・青山裕企 ピエ・ブックス)、『無用のかがやき』(写真・リリー・フランキー 実業之日本社文庫)、『透明人間⇄再出発』(写真・青山裕企 ミシマ社)ほか多数。

「2011年 『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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