アーサー・ラッカム

著者 : アーサー・ラッカム

• トレヴィル (1997年6月1日発売)

感想・レビュー・書評

[zasetuさんの感想 · 2022年2月22日]

とても丁寧で綺麗な本でした。ラッカムは挿絵画家としての名を馳せるまでに風景画を教えこまれていたことや、生家の前にひろがる名園の成れ果てを見て育ってきたことから、その自然の力強さ、壮麗さ、壮大さの描写力が凄まじいです。なので、温かさを感じさせながらも、生き生きとした太い幹の木々が作品を彩っているのが彼の特徴だと思います。かと思えば線は精緻で細かくて女性の登場人物たちもよく映えます。同時期の鬼才ビアズリーに劣るを知らず、まさに努力の結晶のようなすばらしい絵たちです。
『不思議の国のアリス』や『楽しい川辺』、『ヴァルキューレ』に『神々の黄昏』と、有名どころの作品の挿絵もきちんと収録されています。解説では筆者が「最後の巨匠」と評すラッカムの生涯が、彼の作品とともに、簡潔でありながら要点良くまとまっています。

著者プロフィール

英国の挿絵本黄金期を牽引し、後世にも多大な影響を与えた画家。代表作に「ケンジントン・ガーデンのピーター・パン」「不思議の国のアリス」「真夏の夜の夢」「グリム童話集」など。

「2020年 『シンデレラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」