法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する

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  • フィルムアート社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845916054

作品紹介・あらすじ

音楽、出版、アート、写真、ゲーム、ファッション、二次創作から、不動産、金融、家族、政治まで。アフターインターネット時代の文化を駆動する新しい法の設計。クリエイターの"自由"を守り、表現を加速させる気鋭の弁護士の初の著書。

感想・レビュー・書評

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  • 弁護士として、インターネットに関する法的問題を専門とする著者の問題意識は極めて明確であり、重要なものである。それは端的に「イノベーションや創造性の阻害要因として法を捉えるのではなく、むしろドライブさせるものとして新たな法をデザインすることができないのか?」というものだ。

    インターネットと法律に関する現代の基本理論は、言うまでもなくローレンス・レッシグが「CODE」で明らかにした4つのルールの有り方であろう。そこでは、我々の社会のルールを形成する要因として、「法」、「市場」、「規範」、「アーキテクチャ」があるとされ、特にレッシグはCode/Codingに基づく「アーキテクチャ」が知らず知らずにうちに現代社会のルールを形成していくこと、そしてその重要性が増すことを予言した。そして、実際、「CODE」が発表されて20年弱が経過した現在は、このレッシグの予言通りであると言って良いのだが、著者の問題意識は、この中での「法」の存在である。なぜなら、「市場」と「アーキテクチャ」は、経済学的要請、技術の変化といったトレンドによって日々刻々とかつスピーディに変化し続ける。一方で、「規範」とは我々の文化が過去から引き継いだ文化的習慣などの累積であり、即座に変化するような類のものではない。

    そうした背景を考えたときに、一見「慣習」と同じく固定的に見える「法」に、環境変化に応じた柔軟性を持たせるようにリ・デザインすることはどのように可能なのか、その可能性を本書では、音楽、二次創作、アート、ゲーム、ファッション、ハードウェア、不動産、金融、家族、政治などの様々な産業/社会領域ごとに明確化させていく。例えば、アートの領域のおいては、人工知能が生み出した創作物に対する著作権の問題など、昨今メディアで話題になるような各論点も含め、非常に網羅的にまとめられている。

    問題意識の鋭さ、広範な論点の可視化と初期的な方向性の提示など、多くの人にとって有用な価値があるのではないか。

  • 禁止権ではなく、報酬請求権に。

    日本にフェアユース規定はないが、ゆらぎ、あいまい、だからいいんじゃないか、とも言いたくなる。

  • 法を社会のOSと捉え、現在的問題をアーキテクチャー内の問題として記述しようとしたもの。
    OSの更新が現代的問題の解決に不可欠であることを示唆。

  • 難しい。挫折。

  • 各事業領域において包括的に法が果たす役割を書いており
    テクノロジーが進化する中で、法律がどう寄与し、かつイノベーションの促進に繋がるかを多面的に書いている
    動画や写真、ゲームなどの既存領域に関しても深掘りしてあり
    二次創作物に対する法律の取り扱いなどに関しても網羅的に知ることができる
    自分の知りたい領域だけピックアップして読むのが良い

  • 豊かで健全な文化の発展のために、法律がどう関わるか、非常に多面的に考察している。
     創造性を生むには、既存のものがオープンで利用しやすい状況が良いという、ローレンツ・レッシグさんとも共通した見解。必然的に著作権の話題が充実しているが、それに限らず、宿泊施設や政治参加といった問題も扱っている。

    冷静で真面目な口調だが、わかり易く、言い回しも豊かで読み心地が良い。
     一章は総合的な話をして、2章はアート、ゲーム、ファッションなど分野別に言及し、それぞれ多視点的に述べている。

    個人的には、ついつい2015年の五輪エンブレム問題に触れたところが痛快だった。
    「五輪エンブレム問題は、法律が設けている最低ラインがサイバーカスケード/ネットリンチという、他者への不寛容や暴力が一種の祝祭的な盛り上がりのなかで増幅する快楽主義的なネットのアーキテクチャにより大きく引き上げられうるという事実を露呈した。」(p28)
    自分がクリエイターというのもあり、鬱憤はたまってたから、こういうまとめかたがされていると、やっぱり気持ちがいい。

    装丁=佐々木暁さん
    角が直角の並製本に、ビニル質(?)のジャケットがついてきっちりガードしている、珍しい組み合わせ。黒に金の箔押しな表紙がかっこいい。帯はジャケットの内。ジャケットが透明なので見えるし、傷つかない。

  • ・著作権 権利保護でなく 利用促進
    ・エンブレム問題 法よりもネットリンチ
    ・余白やゆらぎをクリエイティブに解釈
    ・リーガルデザイン 規制ではなく潤滑油
    ・Musicity
    ・ブライアンイーノ 生成音楽リフレクション

    目から鱗の考え方

  • 人の行動や社会秩序を規定するものは4つ規範、市場、法、アーキテクチャ。

    「私たちの生活や文化を『余白』のない社会に変貌させてしまうおそれがあるアーキテクチャによる規制から、いかに私たちの生活や文化の『余白』を確保し、制度設計するか。私たちは、ビジネスや文化のみならず、あらゆる現代的な問題の背景として、この主題について不断に考え続けなければならないのだろう。」p334

    ・コモンズという「余白」
    「一方、創造性はイノベーションが生まれやすい、確率を高くする環境や土壌を創出することは可能である。イノベーションの打率を上げることと言っても良い。(中略)これまで出会わなかったヒトモノコトが偶発的に出会い、交配する機会を最大化することが創造性やイノベーションの源泉となる。
    そのためには可能な限り多くの情報、事物など有形無形のあらゆるリソースを誰もが自由にアクセスし、利用できること、リソースの自由利用性=「コモンズ」を確保することが重要になる。」p.21

  • パブリックドメイン

  • デザイン=計画、企画、目的

    辞書で調べると「意匠」だけではなく、広義な意味を持っています。法律も時代の変化によって、時代に合わせたデザインが求められている。

    ITやアート面において、積極的な取り組みをされている弁護士の水野さんの解釈は興味深い。法律において「こうでなければならない!」という前提だけにとらわれず、法をデザインしよう!という考え方に共感。

    後半は、ITやアートに限らず、変化の激しい領域においても言及。とっつきにくい「法律」というものを身近に感じる一冊。

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著者プロフィール

1918 年生まれ。早稲田大学大学院修了。
早稲田大学文学部教授を経て、同大学名誉教授。2000 年逝去。文学博士。
主な著書
『出雲國風土記論攷』、『出雲神話』、『評釈 魏志倭人伝』、『古代社会と浦島伝説』(二巻)、
『入門・古風土記』(二巻)、『新版 日本古代王朝史論序説』、『日本神話を見直す』など。

「2022年 『勾玉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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