世紀末の詩

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  • ワニブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847013027

感想・レビュー・書評

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  •  結婚式でフィアンセを奪い去られた亘と大学内の権力争いに負けた夏夫。

     その二人が出会ったのは、飛び降り自殺をしようとして登ったそれぞれのビルの屋上。

     ビル越し向かい合って自殺を思い留めた2人とそれを別のビルの屋上から眺めていた謎の少女ミアと3人で不思議な共同生活をバラックで始める。

     愛とは何かを知るために。

     作品は25年前の1998年に発刊さて、ドラマもやっていた作品。私はドラマ未視聴で、初めて読んだのは20年くらい前。当時、読んで面白いという記憶があったのに、本棚から手にとって内容を全く思い出せなかったので、20年ぶりの再読です。

     本作は1章30ページ程度でそれが10章立てになっているんですが、30ページ内でこれだけ感情を揺さぶれるのかと思うくらい、文字数も少ないのに読み応えがあるところが凄い。本当にドラマ1話分を見た気分になれるくらいに。

     流石、人気ドラマの脚本を数々手掛けている野島伸司だなと素直に思いました。

     内容としては、エンタメでコミカルな部分もありつつ、愛に関する月末は各章、暗め(北斗の拳の「人は愛ゆえに哀しまねばならない」が出てくるくらいに)ですが、読後は暗かったという感じはしません。寧ろ、爽やかさすら感じました。

     本作は「愛」って何だろう、形にしてみようという話なので、くどいくらいいろんな愛が溢れている作品です。想像で甘くて、現実には苦いものも多くあるというところ。

    しかし、その「愛」を言葉にしたり、形にしたりするのは難しい。

    愛だと思っていたものが愛でなかったり、何も思ってなかったのに、振り返ってみたらあれは愛だったなんてこともあるけれど、「じゃあ愛って何?」っていうと、答えがないもの。

    そもそも愛っていろんなものありますからね。家族に向ける愛、推しや趣味に向ける愛、なんなら食べ物に愛を向けることだってある。いろいろな愛があるというなか、「愛とは何か」というのは非常に難しいです。

    でも、私が今まで触れた歌の歌詞には「愛」とは気がつけばそこにあるものだとあったり、愛は疑わないことなど、それが「愛」だと言われれば確かに「愛」だなと思うことが多いです。愛の意味や形を知らないのに。

    そんな不思議で、多分、一生答えの出ない上に形が見えない「愛」というもの、私も登場人物たちと同じように、今も、20年前も探しているのではないかと思った読後でございます。

    そして、愛の形は本作の最後のようなものなのかもしれないですね。

  • 初めての野島伸司作品。
    愛の形って?愛ってなに?
    考えると難しくて、
    言葉で表現するのは難しくて。
    でも感覚で汲み取る事ができた。
    それぞれのストーリーで描かれる愛の形がセツナクて、苦しくて、あったかくて、頼りなくて…
    大好きな1冊になりそう。


    『愛って風船の形をしてるんだ
    プーッと息を吹き込んで
    苦しくなったら交替しよう
    割れないようにキュッと結ぼう
    赤、青、黄色それぞれに
    色鮮やかな愛が上がるよ
    時には風に流されよう
    時には雨にうたれよう
    いつか降りゆく場所さえも
    僕と君は一緒なんだね

    優しさって
    無限に続く愚かなほどの優しさって
    いつかは愛にたどり着くかな

    もし僕に会いたいなら
    僕も君に会いたいのさ
    きっときっと会いたいのさ

    僕がみかん色の夕陽にとけても
    僕のことを忘れないでね
    どうか僕を忘れないで

    心が壊れてしまうのは
    いつか君が僕だったからさ
    そして僕が君だったからさ

    不幸の手紙は僕が破ろう
    この世に終わりなんかないんだよ
    君を愛する僕がいるから』

  • 「愛とは何か」「そもそも愛というものはあるのか」ということがテーマの物語。
    全11話。お話ごとにエピソードを披露する登場人物が変わり、様々な関係や状況の中で見られる「愛のようなもの」たち。それは愛にも見えるし、ただの自らの欲望にも見える。
    そしてメインの登場人物である、野亜(ノア)と百瀬(モーゼ)が、それらが愛であるのかについて見つめる。

    かつて大好きだったドラマのノベライズ本なので、ざっくりと内容は分かっていたけれど、細部に関しては「こんな台詞やこんな描写があったんだ」と再び感動する場面もたくさんあった。
    「パンドラの箱」「車椅子の恋」「恋するコッペパン」などとくに気に入っていて印象深いお話もいくつかあったのだけど、自分の欲望が愛を超えられないお話が多く、相手の何を見つめることが愛なのかということを、自分の経験と重ね合わせて考えてしまった。

    それぞれに理由があり俗世から離れて潜水艦を作る野亜と百瀬。この世の醜さにほとほと疲れ、だけど死ぬ道は選べず、古いバンでアイスや焼き栗を売りながら暮らし、元いた世界とは違う人たちと知り合い関わりながら「愛とは何か」を追求していく。
    老齢の元大学教授である百瀬にははっきりとその形があり、まだ若く未熟な野亜は色んな人たちを見、そして百瀬と意見を交わすことでそれを探っていく。

    自分もそれなりに長く生きてきて、人を好きになったり、友だちと呼べる人と親しくなったり、親や大切な人を亡くしたり、を経験してきたし、それぞれに愛を持っていたつもりではあるけれど、それが本当に愛だったのかどうかは今となっては分からない。
    欲望と完全に切り離すことはなかなか難しいし、愛が純粋に相手を思う気持ちだけで構成されるものならば、私はまだそれを持ったことはないのかもしれないとも思う。
    失敗したり苦い思いをすることを通して自分なりのそれを見つけていくのが人生なのかも…ということは何となく感じている。

    かつてのヒットドラマメーカーである野島伸司さんの作品なのだけど、この方の脚本は、印象的な台詞がとても多い。
    人はとくに親しい相手の気持ちを推し量ろうとするけれど、想像にはやはり限界があって、結局は相手が語ることや会話を通してしか本当の思いを知ることはできない。だから会話の一部である台詞というものに著者の強い思いを感じるのかもしれない。

    ドラマは残念ながらディスク化されていないので観ることは叶わないのだけど(本当は今からでもディスク化して欲しい…)この本はずっと大切に手元に置いておくと思う。
    10代の多感なときに大切に観ていた作品。それなりの経験を積んだ今の年齢になって、もう一度触れることができてとても良かった。

  • 中学生の頃のわたしがこの物語に出会って、それからずっと「ホンモノの愛」を探しています。
    けれど、教授の言うように結局、自己愛にたどり着いてしまう。

    愛は信じることではなく疑わないこと。
    愛は思い出にできないもの。
    わたしは唯一、子どもに答えを感じます。

    物語をまとめる詩で、1番好きなもの。
    「優しさって、無限に続く愚かなほどの優しさって、いつかは愛にたどり着くかな」

  • 愛してると口で言うのはたやすい。

    では、愛してることを態度で示すにはどうすればいい?


    野島伸司の書いた本「世紀末の詩」が今手元にある。

    ふいに思い出したように読み返す1冊。

    ドラマ化もされ、それも見ていたけど、ぜひこれは

    活字で読んでもらいたい。

    長編小説だけど、物語は一つ一つ短くまとめられていて

    途中から読んでも飽きない構成になっている。



    愛とはなんだろう。この究極の問いに真正面から

    取り組んでる物語の姿勢がとても好きでした。

    人それぞれの愛の形があり、全ての人に共通する形など

    あるはずもないけれど、


    最初はDNAの吸引的な入り口から惹かれあう男女。

    恋が消えてしまった後、愛に到達するか、そのまま終わりを

    告げるか、その境目は何なのか、人は愛しい人がいながら

    なぜ新しい人を好きになってしまうのか?

    それは避けられないことだったのか。


    愛し続けるという事がどんなに難しい事か、だけどそういう相手に

    めぐり合えた事がどれほど大切でかけがえのないものだったか

    そういうものを改めて考えさせてくれる一冊でした。


    夏夫と冬子は長く恋人同士として付き合ってました。

    だけど夏夫に好きな人が出来ます。

    相手は教授の娘で自分の出世も約束されてる。

    そのとき、冬子は妊娠してました。

    だけど新しい恋に夢中な夏夫にはそれさえ邪魔だった。

    夏夫は冬子を捨て、冬子はその後姿を消しました。



    やがて死期が近づいて、夏夫は振り返って思います。

    自分が本当に愛していたのは冬子ただ1人だった。

    新しい恋に一時的に夢中にはなったものの、

    それは愛にまで到達できなかった。

    死ぬ前にせめて、冬子に会って謝罪したい。


    そして、冬子も夏夫のことを一生想い続けていました。

    夏夫と冬子、季節が繋がらない2人の名前を

    幾千もの秋でつなげれるように

    生まれて来た娘に「千秋」という名前をつけて、

    たった1人で育てていた。

    だけど、夏夫がそれに気付いた時はもう遅かった。

    2人の間にはもう、時間が経ちすぎていた。




    本当の愛に到達しながらも、人はそれをたやすく手放してしまう。

    人ってどうしてこんなに愚かで身勝手なのだろう。

    そして、どうしてこんなにも愛おしいのだろう。



    人は完全だから愛されるわけじゃない。

    弱いところや、不完全さを愛することが出来るから

    だから、人間なんだなって、そう思う。


    そして愛することにはちゃんと資格がいる。





    主人公の亘が好きになった人は既にフィアンセがいて

    結婚式を目前に控えていた。

    彼女が結婚する前の日、亘は彼女に言います。


      「明日、僕はあなたを連れ去りに行きます」


    彼女は言います。


      「・・・・待ってます」


    亘は続けて言います。


      「里見さん、愛の形が見たくありませんか?

       ・・明日見せてあげます」





    でも、彼は結婚式場には姿を現さない。

    それが彼の選んだ愛の形。


    そして、あたしはやっぱりこの主人公が愛おしい。





          進もう 君のいない道の上へ

                   (Mr.Children くるみ)




    ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

      ハローベイビー
      
      不幸の手紙は僕が破ろう

      この世に終わりなんかないんだよ

      君を愛する僕がいるから

    ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

         

    • trapxnestさん
      これ、竹野内豊の出てたドラマの原作?
      ドラマをちゃんと見てないから、読んでみたいな。
      これ、竹野内豊の出てたドラマの原作?
      ドラマをちゃんと見てないから、読んでみたいな。
      2011/06/20
  • 一番好きなドラマ。今思えば、かなり影響を受けている気がする。
    このドラマ好きだった人とはなぜか気が合う気がするってゆー。

  • 何度も読み返している本。
    読み終わったら感想聞かせて!って渡されてから、
    もう10年以上経ったね。また話そ。

  • ドラマがとても良くて買った記憶があります。
    この著者の作品は苦手なのですが、なんだかこの本は好きでした。
    ドラマの最終回が少しファンタジーな感じでハッピーエンドではないけど、とてもよかった。

  • 昔ドラマを見たことがあるので、読んでみた。

    やはり名作、少しファンタジーを混ぜている所に個人的には違和感があるが、充分面白いし考えさせられる。

    惜しむべきは、やはりノベライズだからなのか、小説家としての経験の問題なのか、単純に小説としてみた時に凄く違和感がある。
    ノベライズは自分で書かず、専門の作家さんに任せて欲しかった。
    そのせいなのかはわからないが、凄く名作なのに、ドラマのノベライズ版としかみられないのは残念。

  • 昔からジョンレノンの「LOVE」が好きなんです。
    好きになったきっかけは10年前にやってたこのドラマ。主題歌が「LOVE」で挿入歌が「STAND BY ME」っていう素晴らしすぎるドラマです。
    まぁ曲はもちろんいいんですが内容もすごくいい!
    すごく好きなドラマだったので、久しぶりに思い出したところでノベライズ本を読んでみました。

    究極の愛、永遠の愛ってなんだろう?そもそも愛はほんとうにあるのか。
    読めば読むほどわからなくなる。
    愛とは疑わないこと
    愛とは息をするということ
    愛とは生きること
    愛とは…

    愛について考えたい人は読んでみるといいと思います。

    でもやっぱりドラマの最後に「LOVE」が流れるのが好きだから小説はいまいち物足りないかなー。

    ハローベイビー
    僕はきっと愛を知らない
    君もそうならついておいで
    この果てしなき物語の彼方へ
    2008年12月07日

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著者プロフィール

1963年、新潟県生まれ。88年脚本家デビュー。数々の話題作を手がける。

「2015年 『お兄ちゃん、ガチャ(2)<完>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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