孤独

著者 :
  • ロッキング・オン
3.32
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本棚登録 : 127
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860520083

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。とても。
    ふと手に取って、たけしさんの語り口で書かれていて読みやすそうだなと読み始めたのだけど、家族関係から、好きなものから、だんだん思想というか考え方が見えてきて、最後のテーマは宗教だった。
    生まれも育ちも私とは全く違う。私は殴り合いの喧嘩をしたことがないし、貧乏でもなかったし、女である。本自体が古いこともあり、常識が現代とはかけ離れているのだけど、それにしてもたけしさんの考え方がすごく新鮮で面白かった。

    私には想像しにくい経験や考えを、乖離した冷静なたけしさんが語っている。
    宗教の話は特に、生き方に迷って「宗教に頼ったら楽なんじゃないか」と考えたことがあるから、他人の文章で描かれていると説得力があったし、それがいいとも悪いともなかったのが腑に落ちた。
    たけしさんは世界的な評価を受けている人で、本人もその自覚があるのに、それでいて「俺を作ったのは俺の周りの環境」と言うのは、自分に対してとても冷静だなと思った。
    乖離したもう1人の冷静な自分について、映画内で激情を抑えて無表情でいるのはそういう意識からとあって、とても怖いなと思った。映画の演出として。精神的な痛みから逃げるために意識を乖離させることは私もあるが、暴力にそれが適用されると…サイコパスっていうのはそういうもののことかもと思う。
    たけしさんの映画観たくなってきた。

    線を引いて届かない存在でいないと魅力的でいられないという話はなかなかしんどい。でもそうかもと思った。
    最近は精神的健康のために、人に(ほどほどに)愚痴を言うようにしているのだけど、そうやって自分を開け渡すと、人は私から離れていくかもなと思う。余裕そうに見えるように、平等で浮世離れしているように見られたい。価値がないことを隠したい。これは私の話。
    軽い気持ちで読み始めたけど、今の自分にグサリと刺さる部分が多くて…たけしさんは本当にたくさん考えてきた人なんだなと思った。

  • たまたま書架で目を引いて手に取る。
    孤高でなく、孤独。強烈な愛情と憎悪にもまれて育ったことで、常人にはない独特で複雑なリカージョン感覚を持っていることがわかる。宇宙観については自分とまったく一緒だ。

    <blockquote>P60 で、「とりあえずお前らの面倒は、オレが一生みるぞ」って行ったんだけどね。あの後でもし本当に芸能界だめになってたらね、面倒見てねえと思うんだ。ほいで「裏切り者、恩知らず!」とかいろんなこと言われて、「汚ねぇぞ人でなし!」なんか言われていると思う。

    P84 酒だと酔っても自分が考えてることは、基本的なとこは崩されない感じあるけど、薬って基本的な考え方まで崩されるような気がするからね。おれはやっぱり根本的な思想として、人生をただ楽しむだけのもんだとは思ってないし。淡々と生きるもんだと思ってるから。楽しもうとしてはいけないし、別に嫌がってもいけないっていう。ただ、普通に仕事を考えて、酒飲んだりして生きてることが一番ベストだと思ってる。でも、薬なんかやると、その考え方自体を根底から崩される可能性あるじゃない?したらちょっと、ヤバイ。

    P110 ああ、笑われてるけど、これは自分じゃないんだっていうのと、自分だっていうのとか。痛みに対してとかね、あらゆるとこでポッと抜ける癖があって。(中略)俺は「オレを見せてあげてんだよ、俺じゃねえよこんなもの」って思ってて。そういう感じすごくあるからね。

    P171 高めの球をふっちゃうバッターに「高めの球には気をつけろ」って言うのはプロのコーチ失格なんだって。「高め」って言っちゃった時点で、そいつの頭には高めの球っていうのが残っちゃうから。そうじゃなくて、そこでは「いいか、低めの球を狙え」って言うべきなんだって。はなから高めっていうもの自体を全部なくすんだって。

    P223 宗教っていうのは、下手すっと、鏡みたいなとこあると思うんだよ。(中略)だけど、神というのはそういうものかなって感じがある。要するに鏡にしといて、こう自分を映してみて、ああ罰が当たるとか、そういうことしちゃいけないんだっていう、自分自身を再確認する鏡かなあと思う時あるね。(中略)要するに人間自体が自分で治る力があるじゃない?だとしたら、どんな汚い方法でもその人が治りゃあいいんだって。それが宗教だと思うんだよ。サクラ使って、足の悪い人が立ち上がりましたなんてやってても、ほんとに立てない人がそれをみて立ち上がったら、それでいいっていう。それはインチキでもなんでもないっつうね。</blockquote>

  • 結構、文だけ読むとうわぁ~って内容なはずなのに不快感を感じないというのは仁徳なのだろうか。

  • お金も女も名声も手に入って、自分のことを教祖みたいなものかもって言ってしまうところに好感を持ってしまう。そのくせ、こんなもののために生きてきたのか、頑張ってきたのかって当事者にしか分からないことを教えてくれる。成功者みたいな発言が全くない。目標とか夢を目指してとかってことを言わない。
    本人が言うとおり心配されるタイプというのは、ファンのひとりとして当たっていると思う。読み終わってから気が付いたけど、インタビューは渋谷陽一だった、なるほど!

  • この人の生きて、生きた時代を知らないことを恥ずかしくかんじる。私は貧乏も空腹も戦争も知らない。それは当然であり、おかしなことは何もないけれど、戦後の時代を生きてきた人間であることをこの本を読めばよくわかる。

  • たけしの子供の頃とか若い頃の話とか家族の話とか、宗教観とか。

  • たけしの本も結構読んでいる。
    人生に一本筋が通っている人の発想はやはり違う。

  • 桐生などを舞台とした作品です。

  • 北野武とは極上の鬼才者でもあり、ごく普通のオッサンでもあった。
    いや、普通以下かもしれない。

  • また違った天才という印象
    淋しがり屋のコンプレックスをもった人なんだと思う。
    だから面白いのかもしれないですね。

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著者プロフィール

ビートたけし。1947年、東京都足立区生まれ。72年ツービート結成。89年『その男、凶暴につき』で映画監督デビュー。97年『HANA-BI』でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。著書多数。

「2020年 『浅草迄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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