建築について話してみよう

著者 :
  • 王国社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860730376

感想・レビュー・書評

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  •  建築家:西沢立衛の建築の発想についてまとめた著書。
     本書では、現代の日本の建築は屋内ばかりが豊かになっているが、屋外の概観は画一化されている。従来の建築においては屋内と屋外、ひいては街全体の連続性が保たれていたが、その連続性が崩壊していることを問題として取り上げている。
     日本建築の屋内外の葛藤を乗り越えるべく、西沢は以下2点を意識していると言う。
    ①「使いたくなる機能」を備えているか(主に屋内)
    ②建築物の雰囲気を作り出す
    =たとえ中には入れなかったとしてもなんとなく感じ取れるもの(例:法隆寺)
    これらを踏まえて、街全体と調和した建築を目指しているのではないか。
     また、全く別の話で印象に残った内容がある。ガラスを用いた透明感についての記述で、人がガラスが透明できれいだと感じる時には、ガラスという異物が景色の間に挿入されているという認識が前提にあって、きれいだと感じるのである。ガラスについての価値観が一変した記述であった。
     建築家や建物の名称に明るくなってから、もう一度読みたい作品である。

  •  今年6月に直島アートサイトめぐりに出かけてから、西沢立衛に対する関心がにわかに高まり、最初の単著である『建築について話してみよう』(2007 王国社)を読んでみた。私のように建築の門外漢にもすぐに理解できるように書かれていて、助かる。

     瀬戸内旅行時における彼の作品をSANAA名義もふくめ訪問順に挙げると、「海の駅なおしま」(2006)「本村ラウンジ&アーカイブ」(2004)そして「豊島美術館」(2010)である。単純な感想としては、白いものが離島の田舎風景、自然風景の中に無理なく溶け込みながら、それでいてすぐれた違和の感覚もくすぐってくるという感じ。そしてそれは使う人の人数によってまったく異なる様相をもつ。「海の駅なおしま」「本村ラウンジ&アーカイブ」は共に島を訪れる観光客の受け入れ口であり、不特定多数の人が利用するように作られている。だからかりそめの交流ロビーとしての色彩が強い。
     これに対して「豊島美術館」は、限られた人数によって体験されるパビリオンで、なんとなく文明の最終形を提示しようとしていると感じた。アーティスト内藤礼の巨大インスタレーション『母型』これ一個だけを展示するシェル型の美術館。いやこれは、どこまでが内容物で、どこからが入れ物なのか判然としない。美術と建築が完全に同化している。そしてその内部に入ったとき、今まで感じたことのない安らぎの体験が待っていた。夢の中か、誕生前の記憶か、死後の予見か? いずれにせよ同じことだろうが、私たち訪問者はシェルの中でしたたる水滴と共に、一時的に俗世間の生をやめることができる。
     
     本書のなかで西沢は「建築物を設計すること、空間を創造することということは、新しい価値観とか、僕らの生き方、考え方を、ダイレクトに表わす」と書いている。そして「あまり建物の用途とかプログラムとか、スペックとか、中のことばかりで建物をつくってしまうのは、よくないと思うのです。やはり建物が背負っている気配というものがどのように環境化していくか、ということも考えねば」と述べている。建物と既存環境がいかに繋がっていくか、著書を読み、作品の中を実地に訪問しながら、作者の思想を明確に受け取ることができた。
     ちなみに西沢立衛は横浜国立大学のY-GSA教授である。非常勤の身分で「同僚」を名乗るのはおこがましいが、私のことはともかく意外と横国はいい人材が集まっているように思う。本書の巻頭インタビューは、梅本洋一がインタビュアーを担当している。そして、人材を集めるべく先頭に立って戦ってきたのが梅本である。

  • 前に一度読んだ。後半の対談形式がわかりやすいし、全体的に文章は平易

  • 西沢さんの創造性がゴリゴリ伝わってきた。大変刺激的!!建築をやっていないとあんまりしっくり来ないかもしれない。建築関係の雑誌等に単発で載った論考などをまとめたものだから、全てが一本のストーリーで繋がっているとかそういうわけではないけれど、西沢さんの考えは一貫しているのでそういう意味ではひとつながりなのかもしれない。

    先日【森山邸】に入ってきたのでその感想も箇条書きで。

    【森山邸】の新発見(2回目だったので)

    ・西沢さんがものすごく手作りだということ
    ・すべての箱に各々のストーリーがある。森山さんちと賃貸住宅を設計してるような、でも森山さんちを設計してるような。
    ・日本建築の根源は採用してる
    ・だからといって昔の素材、使い方をするわけではない
    ・開こう開こうとしている
    ・庭と建物の在り方が爆裂おもしろい
    ・地面が感じれるってめちゃくちゃ大事
    ・庭と開口とプロポーションだけであそこまで辿り着けるか、という壮絶なる感覚
    ・西沢さんは生活が箱の外に溢れても良いと考えている
    ・森山さんそれぞれの行為を建築化している、住まいへ
    ・どこまでも森山さんちなのである

  • (110309)発売してすぐに買ったんだけど、当時の自分にとっては面白くなかったので、読むのをやめた。。。だけど、今読んだら、言ってることも明快だし、設計の考え方も納得させられるものがあるし、なんであの時読まなかったんだろう?っておもった(笑

  • 日本の家の捉え方とか、はっと気付かされる視点が数多くあったことが

    読んだ収穫だった。

    でも、基本的に自身の建築の説明で、

    よく知らなかったので想像しながら読み、些か消化不良。。。

  • 優しいタイトルに魅かれて読んだ一冊。
    内容も易しかった。
    薄っぺらく感じました。

    作品が評価を受けてる方なので
    どんなことを考えてらっしゃるのか興味をもっていたのですが
    この本読んで興味が薄れてしまいました。

    でも建築勉強するものとしては
    現代の日本を代表する建築家さんだし
    読んでおくべきかも?

  • まず思うのは、「建築について話してみよう」っていう甘ったるいタイトルが嫌。
    とんでもなく強い大きなものを作っているのに、無責任な気がして嫌。
    建物を見るときの視点もそれほどおもしろくもないし。
    でも実際に作っている作品はそれなりに素晴らしいもの多いみたい。
    まぁ読みやすかった。でもこんな文章しか書けないのかと思うとやっぱり・・・。
    悪い言い方をするとバカっぽい。すいません・・・。

    P.21
    ――スタイルを壊したいと思うことはないのですか。
    それはありますよね。創作活動というのは原理的に、新しさに向かっていくものなのです。過去とまったく同じだったらそれは創作とは呼べないわけです。つねに僕は新しいものを求めたい。ただ、同時に、一人の人間が建築を考え続ける限り、ある一貫性は必ず出てくると思います。それは壊すとか壊さないとかそういう問題ではないですね。

    P.25
    ――学生についてはいかがですか。
    見方とか読み方というのは、自分で創造しなければいけないものであって、批評とはもっとクリエイティブで、それは圧倒的に個人のものなのです。モノの見方を公共のところから拾ってくるのはダメなのです。情報を利用してfoaとかフェリーターミナルとかいものがあるという事実を知ることは重要だとは思うんですけど、その読み方まで学んでしまってはいけない。建築は、そんなプロのジャーナリストみたいに完璧にスマートに眺めてしまってはいけなくて、もっと素朴にというか普通にというか、もっと原始人が眺めるように建物を眺めるべきなのです。

    P.43
    意味なく謝らないこと――誰がどう見ても不自然で非合理的な解答を、何か大変自然で合理的なものにひっくり返していくその気迫は、実務で何かとトラブってしまう日本人建築かも案外見習うところは多いかもしれない、という気がしたのであった。
    ちなみにそういう意味では、もしそういうデザイン手法を日本の学生が自分のものにしようと思うのなら、まず第一に、いきなり謝ったりしてはいけないと思う。根拠なしに謝ったりしないこと、異常事態を論理的に必然化していくチャンスを怠らないこと、それがああいったダッチ・デザンを実現していく最低条件である気がする。

    P.83
    建築の原則とはなにか。大きく分けて二つあることに気付いた。
    1.「建物をどうつくるか」という意味の建築原則。建物の原則をつくること。
    2.「建物の使われ方」についての建築原則。使いたくなるかどうか、使いがいがある空間であるかということ。

    P.123
    昔ぼくらは、建築の原則は平面とか空間構成とかからやってくると考えた。いまはちょっと変わってきた。構造、空間的関係性、プログラム、環境、風景、といったことをしばらく考えているうちに、建築の原則がはっきりしてくることが多くなった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。1990年横浜国立大学大学院修了。妹島和世建築設計事務所を経て1995年妹島和世とSANAA設立。1997年西沢立衛建築設計事務所設立。現在、横浜国立大学大学院 Y-GSA教授。

「2020年 『丗|SEI/徳田邸 ― 京都 生きる喜び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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