健康不安と過剰医療の時代

  • 長崎出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860954901

作品紹介・あらすじ

私たちに「健康不安」を抱かせる現代社会のからくりとはなにか。リスク管理の要求される社会では、個人の心身への関心が高まる。その構造の中で巧みな意識操作が行なわれ、健康不安も煽られている。その場合の「健康」とは実態ではなく記号化された何物かに過ぎない。我々の内なる「健康への意思」が何に由来するものかを見抜き、惑わされず流されずに対処して生き延びるための知恵。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか危なかっしい本だ。
    健康食品や医療業界のマーケティングの指摘は妥当だと思うが、執筆者によっては、反・科学的な態度も多分に混じっている。読むなら第三章だけでいいと思う。
    なお版元(長崎出版)は2016年に消滅。


    装幀 佐々木正男


    【目次】
    はしがき 誰のための、何のための「健康」なのか、「医療」なのか[井上芳保] [003 -021]
      1 医療っていいものでしょ
      2 「飲むヒアルロン酸」の効果について
      3 今のにほんの医療は何かがおかしくなっている
      4 血圧の基準値がどんどん引き下げられている
      5 「病“縁”化社会」の何を問わねばならないのか
      6 本書の構成
    目次 [022-027]


    第1章 なぜ、診断被ばくの危険性が見過ごされているのか――原発事故よりも怖いCT検査[近藤誠] 030
    1 世界一の診断被ばく国 031
    2 胸部CT一回で一〇ミリシーベルト 033
    3 発がんリスクにしきい値はない 035
    4 子どもはとりわけ危険 037
    5 医者の無知、無頓着 038
    6「とりあえず」「念のため」 040
    7 八〜九割の検査は不要 041
    8 がん検診に意味はない 044


    第2章 「虫歯予防にフッ素」はなぜ危険か
    ――公表データを科学的に再検証して[浜六郎]
    1 長く激しい論争 048
    2 効果も必要性もない 049
    3 過剰摂取の危険性 052
    4 深刻な急性中毒症状 053
    5 推進・反対の資料を総点検 054
    6 発がん率が3%増 056
    7 神経系から遺伝子にまで影響 058
    8 事実の黙殺と隠蔽 059
    9 疑って吟味する姿勢 062
    [編者による付記] 063


    第3章 「生活習慣病」の正体を探る――
    なぜ生活習慣が病気の元にされたのか[村岡潔]
    1 「生活習慣病」のレトリック 069
    2 健康と病気の多元的ファクター 072
    3 異常と正常――検査値のアンビバレンツ 077
    4 戦略はリスクよりもポピュレーション 079
    5 メタボリックシンドロームのミステリー 082
    6「生活習慣病」というカーテンを開けよ 086


    第4章 「健診病」にならないためにはどうすべきか――細かな数値よりも自分の身体の感覚を大切に[松本光正]
    1 六〇歳の人で一生涯の間に一〇〇万円は得する話 097
    2 科学的に考えるべきである 099
    3 加齢というのは仕方がないことである 101
    4 身体は合目的的に反応している 103
    5 血圧を測りたくなる環境になっている 104
    6 医者は三種類に分けられる 105
    7 医療を疑い出したきっかけはBCGとハンセン病 107
    8 健康診断を受ける人のほうがむしろ短命である 109
    9 日本人ほど「コレステロール」を気にする国民は他にいない 110
    10 味の素の理論でコレステロールと血圧の基準値の低下が説明できる 113
    11 脳梗塞は血圧の薬を飲む人のほうが飲まない人の二倍も発生している 115
    12 高血圧では人は死なないし、日本の脳梗塞はほとんど医者が作っている 117
    13 メタボリックシンドロームは馬鹿馬鹿しいの一言 119
    14 骨を強くするはずの薬を使うと、骨がだんだん脆くなっていく 121
    15 高額な機械の減価償却のために元気な人を不安に陥れて検査の対象にしている 122
    16 健康診断で何が悪いってレントゲンが一番悪い 124
    17 がんは早く発見しても意味はない 127
    18 プラス思考で生きるということ、自分の身体の感覚を尊重するということ 128


    第5章 なぜ、この国の医者は平気で患者を見捨てるのか――ムラ社会に支配された医療、そしてその改革への模索[名取春彦]
    1 クスリ漬けの仕組み 138
    2 放射線科という診療科の抱える問題 147
    3 クスリ漬け、検査漬け問題が解決されない本当の理由は何か? 155
    4 クスリ漬け検査漬けをなくすには、どうすればよいか? 163
    5 おわりに 176


    第6章 精神医療の権力性とどう向き合うべきか――なぜ、「よりよい精神医療」ではなく「精神医療よりよい何か」をめざすべきなのか[井上芳保]
    1 心理主義化から医療化へ 183
    2 抗うつ剤の処方が過剰になる構造を問う 201
    3「脱制度化」を進めるイタリアの精神医療と「べてるの家」 211


    第7章 健診/検診という商品はどう消費されているのか――パラメディカルの位置から見えてくる医療の実態[梶原公子]
    1 すべての人に最高の健康を 230
    2 健診という現場 242
    3 健診/検診でなくしてしまうもの 255


    第8章 なぜ、スポーツクラブに通い続けるのか?――「不健康」というラベルに抗う人びとの調査から[竹中健]
    1 「病」の標識化と管理 268
    2 不健康のラベリング 270
    3 行政による「健康」指標採用の基準 271
    4 企業による「健康」指標の採用 273
    5 どんな人がスポーツクラブに通うのか? 280
    6「健康な私」に生まれ変わるという物語 289


    終章 医療の過刺に巻き込まれないために――生き延びる知恵としての医療社会学の視点[井上芳保]
    1「社会」の情報のために 302
    2 今、なぜ「健康不安」と「医療の過剰」が問題なのか 304
    3 胃部レントゲン検査――危険で値段が高く無意味なのに継続の不思議 307
    4 胸部レントゲン検査――結核の激減にもかかわらず継続の不思議 312
    5 がん検診――受けるとかえってがんになる危険が高まるという皮肉 318
    6 精神疾患の増加――構築された「病」とその犠牲者たちの声 321
    7「医源病」に対して我々はもっと怒るべきである 324
    8 医療産業の肥大化に抗する医療資源の再配分という視点 326


    奥付 [333]

  • ノンフィクション
    社会
    医療

  • 予防医療が盛んになると、健康でなければ生きている価値がないような価値観が生まれ、安心して病気養生することが出来なくなる危険があるんですね。
    今のところ病気と事故は「不運」であって、傷病時は雌伏して待つしかないという認識がありますが、病気やけがをしたことに罪悪感を持たねばならないとしたら、ストレスで治りが悪くなりそうです。
    90歳まで生きた人はその生活習慣が本人に合っていたからそこまで生きられたのであり、90歳の人に血圧を下げるために生活習慣を改めろなどと言うのは愚の骨頂だという論には感心しました。
    つまり、痛いとかかゆいとか、症状が出てから病院に行けばいいのであって、検診は不用ということですね。はい。

  • 広く喧伝されていることが、真実なのかどうか。
    声が大きい人の意見を聞きいれるだけではなく、
    必要な物は自分で選ばないとね

  • CTやバリウム検査、レントゲン検査等により世界一検査による被曝量が多い日本。意味のない検査ややらない方が良い検査、メタボリックシンドロームにまつわる不合理や利権構造、血圧基準値を下げることによる降圧剤の売上増加、医療が病を産む現状などについて様々な医師や医療関係者の論稿を集めた本。「健康のためなら死んでもいい。」は、いい得て妙。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:498.04||I
    資料ID:95120566

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著者プロフィール

1956年北海道生まれ。社会学者。東京学芸大学大学院修士課程修了。札幌学院大学教授、日本社会臨床学会運営委員などを歴任。単著に『つくられる病――過剰医療社会と「正常病」』(ちくま新書、2014年)など。編著に『「心のケア」を再考する』(現代書館、2003年)など。最近の論文に「「ミスター・ノーマルがいっぱい」を、遊びつつ学ぶ」(『苫小牧駒澤大学紀要』36号(最終号)、2021年)、「医師たちには義俠心の発揮が求められている」(『性の健康』21巻1号、2022年)。本書関連論文に「ルサンチマンの社会学の構想――ニーチェ的主題の継承をめざして」(『思想』773号、1988年)。

「2022年 『鬼滅の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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