B級ジャズ名盤迷盤101―60年代のジャズ喫茶で輝いた101枚 (CDジャーナルムック SUPER Disc SELECTION)

  • 音楽出版社
4.67
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 9
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861710025

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本が出版された日から今日までかれこれ17年間の年月を掛けて、紹介されている101枚のアルバムを全て聴きました。

    短い時代に一部の熱狂的なファンによって愛され、その熱量の高さゆえに燃え尽きるのも早く短命に終わった、そんな音楽のジャンルをなぜか好きになります。LAメタル、ゴアテクノ、ガバ、ダブステップ、ニューオーリンズバウンスやジャージークラブ、ジューク・フットワークやサウンドクラウドラップなどのヒップホップ、ロシアのフューチャーベース、コンプレクストロ、ファートゥーラウド…この本で数多く紹介されているジャズのハードバップもそんなジャンルの1つだと思います。特に50年代終わりから60年代にエレクトリックな表現やファンクやロックの影響を受け消えていったあのジャズのヴァイヴスは素晴らしい、前述の現代のクラブミュージックなんかに比べても古さを感じる事はありません。この本を知った当時の17年前の自分は、ジャズについて何も知りませんでした。なんとなくジュンク堂で手に取ったこの本に導かれてジャズを聴くようになり、ジャズのサックスやヴァイブが好きすぎてクラシックの管楽器を、そして吹奏楽を逆輸入的に好きなるまでにこの音楽が好きになりました。それほどにこのディスクガイドの影響は大きかった、人生を変えられてしまった一冊です。

    この本の素晴らしいところは、ジャズという音楽について日本人の自称有識者に語られる時に必ず言われる、あれはジャズじゃないこれがジャズだ、みたいなめんどくせぇジャズおじさんの自分語りが一言も無いところです。演奏についての解説はあっても筆者個人の評価や批評はありません。簡潔だけど詳細なアーティストのプロフィールや逸話とアルバムレビューで構成されていて、今までディスクガイドはいろんなジャンルのものを読みましたが、これほど聴いてみたいと思わせる文章とセンスで書かれたものは他には無かったです。

    日本人はもちろん、世界中のジャズおじさんが如きには理解出来なかったフリージャズのアーティストが紹介されているのも貴重だと思います。結局ジャズってクラシックを知っていないと、何がカッコイイのか凄いのか解らないところもあると思うんです…たとえばファッションで例えたら敢えて外したアイテムをスタイリングしても結局、何がスタンダードなのか解っていないとその外した事自体が理解できない、とでもいうか…ジャズって何故かセンスのないおじさんを惹きつけるところがあるようです、でもそういうカルチャーってありますよね?全身シュプリームおじさんとかノースフェイスにプレ値スニーカーおじさんみたいな…センスの無い人間がそのせいで評価出来なかったものを、センスのある人が解説している、というのは今の時代とても貴重なのではないでしょうか?

    17年愉しめる本なんてありますか?
    人生の伴侶としてこの本をおすすめします。

    この本が実存することによってジャズは解放される。

    2022 1/1 101/101

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1931年東京生まれ。東京大学文学部(美術史)在学中からジャズ評論を執筆。その後、ライブの司会などを通してジャズの現場に深くかかわった。1970年代以降はロックやポップスを論じ、日本レコード大賞の委員も務めた。主な著著に『新書で入門ジャズの歴史』(新潮新書)、『相倉久人のジャズ史夜話』(アルテスパブリッシング)、『されどスウィング』(青土社)のほか、『モダンジャズ鑑賞』『ジャズからの出発』などがある。2015年没。

「2016年 『相倉久人にきく昭和歌謡史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

相倉久人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×