スローモーション (ピュアフル文庫)

著者 :
  • ジャイブ
3.09
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本棚登録 : 319
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861763021

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤多佳子の黄色い目の魚が本当に大好きで、捻くれた女の子は初期作品でも健在なんですね。
    最初はなんとなく物足りない。
    でも児童文学の語り口で、ザクザク大人の事情に斬り込んでいくストーリーはこの頃から変わらず。
    後半、女子高生の主人公から発せられる「カウントダウンの関係」という早すぎる諦観にドキリとしてしまいました。
    スローモーションというタイトルの由来も、どんどん重みを増して明かされていって。
    劇的な展開に頼らずとも女子高生の等身大の"事件"を濃密に描き、難しい言葉を使わずとも私たちが抱く複雑な(複雑ぶっているだけかもしれない)感情を解きほぐす。
    佐藤多佳子の凄さが、この短い中に詰まった作品だなと思いました。やっぱり好きだなー。

  • 高校一年の千佐は派手な友達と一緒にいるけど、本当は真面目。千佐のニイちゃんは元ヤンキーで、事故の後遺症で足を引き摺る無職。

    ニイちゃんが千佐の同級生の及川周子の家で暮らし始めた。
    足の悪いニイちゃん、スローモーションの及川。寝ぼけた亀と腰痛のカタツムリみたいな二人。

    及川周子は親戚の叔父さんに連れて行かれて戻ってこなかった。彼女の家庭も、千佐とニイちゃんの家庭も、それぞれの問題を抱えていた。

    ---------------------------------------

    この小説が最初に刊行された1993年当時は、ちょいワル高校生がクラブに行ったりするのは珍しくなかったのかな。今からだいたい30年前の高校生の姿に多少の違和感があった。

    家庭の問題を抱えながら生活する高校生の姿は、なんだか10代のころの自分を見ているようでちょっと恥ずかしいような気分にもなった。大なり小なり、それぞれが色んな種類の悩みや問題を持っている。けれど、当時の自分はいちばん自分が苦しいような顔をしていたと思う。他の人からすれば、お前の悩みなんて知らねーよって感じだったんだろう。

    口に出さないと理解してもらえないことがある。辛いとき、苦しいときにそれを誰に伝えることで助けてもらえることがある。
    すごく難しいことだけど、自分の苦しさを誰かに聞いてもらえたら当時の自分もうまくやれたのかもしれないな。

  • 主人公の女子高1年生の柿本千佐の家族は、小学3年生の担任そしている教師でクソ真面目なお父さんとお見合いでクソ真面目なバツイチ教師と結婚した専業主婦のお母さん、クソ真面目なバツイチ教師の前の妻との子供で元不良現無職のニイちゃん。お父さんは千佐には真面目に生活してほしいと願っていて、厳しい門限を設定していますが、クラスの派手なグループの一員として、クラブに行ったり、お酒を飲んで帰ってお父さんにひどく怒られたりします。クラスには同じ水泳部に所属する動作がとてもスローな同級生の及川周子がいて、気になっています。その及川がいじめの対象になりつつありますが、ちょっとしたきっかけで千佐もハズされることになります。
    このお話には、過去にナイフで傷害事件を起こしたり、殺人事件を起こしたり、暴力があったり、学校をサボったり、クラブに行ったり、高校生なのにお酒を飲んだり、いろいろワルいことが書かれてていたりして、悲しくて切ないところもあって、児童文学のような書き出しにもかかわらず、大人のお話に感じました。

  • うーん、がっかり。
    素直な感想。
    期待しすぎなのかな?

  • もっと若いときに出会っていたら
    夢中で読んでいたかもしれない

  • 主人公は女子高生。ニイちゃんは、元不良のニート。
    ダメなニイちゃんを軸に微妙な空気の家族。
    そんななか、学校ではスローな動作の同級生、周子が気になりだす。
    ニイちゃんと周子が哀しく印象的な作品。

  • 高校生とその生活に視点を置いた作品が読みたくて、かつ最近忙しいので短めの作品を探していて出会った。
    佐藤さんの本は3冊目かな。ただでさえ独特で瑞々しい作者の表現に多感な女子高生の語り口調が合わさったもんだから、なんだかそれだけで特別なものが出来上がってしまっている気がする。
    忙しない日々に慣れてしまうとなにもかもが白黒早送りになってしまうけど、そんなときにこの本を思い出せれば。モノクロームの毎日にちゃんと色が付いていることを教えてくれるような気がする。

  • なんか似たような印象の本を読んだことがあるなと思ったら、別の出版社で出されたやつを読んでいたみたい。良くも悪くもなかった。佐藤さんにしては物足りないかな。

  • 小学生の頃に読んだと思う。
    お兄ちゃんとスローモーションな友人が印象的。

  • 2013/05/11読了

  • ひねくれたコドモたち。
    おとなもだけど
    いい人的な人間が全然出てこない。。

  • 普通?の女子高生千佐と元やんでバイク事故後はニート生活の兄、動きがスローな同級生及川の物語。

    兄妹の微妙な感情がうまく表現されている。

    及川がスローな理由のエピソードはちょっと無理があると想うけどね。

  • 誤解を恐れずに言い切ってしまうと、
    大きな事件が起きるわけではない。
    登場人物が大きく成長する訳でもない。

    主人公や、その周辺人物が、
    ものすごく魅力的な訳でもない。

    実際にその辺にいそうな女子高生と、
    ちょっと...不思議だけど、
    ま、こういう人もいるかもね、
    という周辺人物たち。

    彼ら・彼女らが、つまらない日常の
    ちょっとした事件で泣き笑いし、
    少しだけ前に足を踏み出す...

    言ってしまえば、そんなお話。

    でも、登場人物たちの感情が、
    とても素直でリアルなせいか、
    知らず知らず引き込まれてしまう。

    噂ばかりが先行していじめられる
    「何もかもスローモーな」女の子。

    いつもつるんでいる仲間たちとの、
    ほんのささいなきっかけで
    「あっち側」と「こっち側」に
    別れてしまう関係のあやうさ。

    「悪そうな」仲間と遊んでいても、
    部活の水泳だけは真面目にやってた
    主人公の熱の失い方と復活。

    そんな、当人以外にはどうでもいいような、
    等身大の悩みと葛藤とあきらめと...
    それでも少しずつは何かが変わっていく。

    「一生続く」登場人物たちの暮らしの、
    ほんの一部分をスポイトで吸い上げて
    プレパラートに載せて観察していた。
    そんな読後感の小説。

    本を閉じた後も、登場人物たちは
    同じペースで生活を続けていくことが
    見えはしないが確信できる、
    そんな不思議な魅力を持った一冊です。

  • これも初期作品。雰囲気はわかるわかるー、って感じなんだけど、やっぱり文章は今と違って、今が好きな読者としては、なんかしっくりこなかったかなあ。

  • ちょっと込み入った人間関係や一癖ある登場人物たちに、ぐいぐい引きこまれたが、なんだか尻すぼみ。

    結局、大した進展もなく、むしろ平凡になって終わってしまった。

  • 作中に「ニート」や「クラブ」なんて言葉が出てくるから最近の作品かと思ったら、1993年の作品なんだな。
    道理で一平の設定や、全体の雰囲気が何となくバブル時代の気配を残してたわけだ。文庫化するにあたって加筆修正したというのはそのあたりなんだろう。

    この著者の作品は地に足が着いているから好きだ。登場人物たちに、おためごかしな簡単な解決を与えない。
    でも読み終えるとハッピーエンドだなと素直に思える。
    最後はちょっと物足りない。でも現実なんてこんなものだし、それに彼女にとってもこの出会いは忘れがたい、重要なものになっただろう。これまでと違う人生を歩き出せたと信じたい。

  • 著者の作品は最近気に入ってよく読んでいるが、この作品はあまり楽しめなかった。文章のうまいケータイ小説とでもいおうか。著者が繊細な心情とリアルな職業(今作では女子高生だが)の描写がうまいのはわかっていて、これが身の丈の作品でないことは確かなのだが、そのうまさゆえか随分と小さな物語に感じてしまった。まとまりすぎているのに、妙にしっかりと女子高生目線。おそらく年のいった男性読者にはハマらない小説なのだろう。

  • 柿本千佐、女子高の1年生。22歳のニイちゃんは元不良で無職、父さんは小学校教師でクソ真面目人間、母さんはお見合いでバツイチ堅物男と結婚した専業主婦。父さんはあたしに、修道女みたいなタイプを望んでいる。最近、いつも動作がスローな同級生・及川周子が気になってしかたがない?。『しゃべれどもしゃべれども』などで話題の著者による、ちょっと痛くて切ない少女たちの物語。

  • 情報科教員MTのBlog (『スローモーション』を読了!!)
    https://willpwr.blog.jp/archives/51552365.html

  • ひとりでもいい自分を必要とし愛してくれる人がいれば生きていける。逆に守りたい存在があれば立ち直る事ができる。親が子供にその事を伝える事ができるかどうか。そういう風に読みました。

  • ちょっと悪そうな感じの子に惹かれる時期ってあるよな。
    できごとひとつひとつはちょっとしたことなんだけど
    それがきっかけで心が動いたりするんだなと。
    文章が好き

  • 2006年7月6日購入。
    2006年7月10日読了。

  • [2009/11/18]

  • 登録忘れてました。面白かった気がします。

  • 柿本千佐、女子高の1年生。22歳のニイちゃんは元不良で無職、父さんは小学校教師でクソ真面目人間、母さんはお見合いでバツイチ堅物男と結婚した専業主婦。父さんはあたしに、修道女みたいなタイプを望んでいる。最近、いつも動作がスローな同級生・及川周子が気になってしかたがない・・・・・。
    『しゃべれどもしゃべれども』などで話題の著者による、ちょっと痛くて切ない少女たちの物語。


    最初は、もっとアットホームな家族を想像していた。
    だから、ちょっと残念だった。
    もともと、自分が想像するようなアットホームな家族なんて、なかなかいないんだろうけど。

    周子の存在が、最初はちょっとイラっとした。
    ニイちゃんと同棲しちゃってるのも、正直意味分かんない。
    だんだん慣れてきたけど、ちょっと・・・。

    正直よかったところは、
    最後にニイちゃんの不良仲間だったユーイチが来て、ニイちゃんが今までホントの母親からずっと貰ってた服や本を全て売り、交通事故で怪我してそのままにしてた足を治す、
    と言って車に乗っていったところぐらい。

    正直、早く読み終われ!って想いながら読んでた。

  • 出てくる登場人物たちの関係性が面白い。
    ただ、単調なお話なため印象的なシーンが少ないのが残念。

  • 今回はあまりグッとこなかったかな。この内容を瀬尾まいこが書いていたらもっと面白くなったなんて思ったりして。親が千佐ってうまく発音できないからと言って妥協して呼んでいるのが面白かった。ニィちゃんが最後にかけてドンドン前向きな方へ向いていくのが読んでいて清々しい。

  • レビューはブログにて。
    http://tempo.seesaa.net/article/114609241.html

  • うーん…。タイトルとモチーフのみ。

  • 自分とは異質、と感じる同級生と仲良くなっていく女子高生のおはなしです。 こんな風に友達になれたらいいな、と幸せな気持ちになりました。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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