氷の海のガレオン,オルタ (ピュアフル文庫 き 1-1)

著者 :
  • ジャイブ
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861763557

感想・レビュー・書評

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  • わたしはあなたと違う、それはいけないことなのか。

    斉木杉子。学校に居場所がない。同級生たちと自分が違う、彼らに合わせることはできない。間違っているのは、どちらなのか。

    本読みのティーンエージャーの多くが、多かれ少なかれ杉子と同じような悩みを抱えただろう。自分は「言葉」を持つゆえに、彼らと話ができない。彼らと違う自分は、間違っているのだろうか。学校は何もしてくれないという諦め。大人になれば、自分と同じような「言葉」を持つ人に出会える。もしくは、「言葉」をしまって、相手に合わせてしまうことを覚える。けれど、小学生の、もしくは中学生の、まだまだ子どもであるところの、彼らの世界は狭くて。

    表題作を中高生のうちに読めたら、宝物になっていたかもしれない。大人になって読むと、手を差し伸べたい、でもできない悲しみに暮れる。もう、わたしはその場所にはいないから。

    「オルタ」の方は、読むのが辛かった。学校、そして教師という存在が、そこまで否定されるのか。でも、確かに学校と教師はそういう存在だと思う。この社会に適合する人材を作り上げる役割を持つ。だから、オルタだけを救うことができない。貴大もオルタも他の子もいる学級を最大公約数でもっともよい状態に仕上げるなら、オルタに我慢を強いてしまうのだろう。もっとよい方法があればよいのに。自分の子を守れるのは親で、教師が守るのは教室なのだと、痛切に感じた。だから、母親の判断に安心したし、母親がオルタに向けて語った貴大の援護だったり、その後ばったり会ったオルタと貴大の自然なやりとりだったりが、とても尊く感じられた。

  • 「氷の海のガレオン」が、良かった!

    沢山の本を読んで、読んで、いつの間にか世間からはみ出してしまった女の子の話。
    でも決して可哀想ではなく、自分で自分の世界を愛し、讃える杉子は素敵だと思う。

    でも、それ以上に、詩人の母が子どもを産み、己の言葉で育てることに恐怖するシーンが良かった。
    そうして、奇異の目で見られることなんてものともしない魂が宿ることを祈るのも。

    なんだか、よく、分かるのだ。

    「オルタ」はもやもやしてしまった。
    学校が、救いになることだって、ある。
    そうならないことだって、ある。

    それはもちろん人それぞれで、ホームスクーラーとなることで、オルタは救われました。は、それで良いのだけど。

    オルタも貴大も、人と関わりながら生きていく。じゃあ、この先は、どうなるんだろう?って思った。
    私には苦しい話だった。

  • 二階堂奥歯と穂村弘が勧めているんだから、面白くないわけがないだろう、ということで読んでみたら、昔のわたしがいて仰天した。
    結局ひとりで、だれもいない廊下を歩いてゆくラストシーンの杉子は気高く美しい。殴り合った子と和解するでも、「おまえ強ぇな」「おまえこそ」になるでもなく、相変わらずそういうものを横目で見、でもちょっと憧れもある、そんな終わり方でほっとした。まるでわたしが許されたような。
    『オルタ』は私小説、と思っていいのかな?

  • 生きづらい人は、きっといつまでもその違和感を抱えて生きていくことになると思う
    だってほかの星から来たのだから
    違いに敏感なのは直らないし、他人がそれを嫌だと思うかもしれないことも変えられない
    放っておいて、と思うけど、放っておくことが悪だと思う人だっているんだから
    その人の存在は受け入れつつ、距離を保とう
    壁ではなくて、距離、ね

  • 何度も読み返している本だけど、昔はよく分からなかったママの気持ちが、今なら少しだけ分かるかなと。昔の私は杉子だったし、まりかちゃんだったのかな〜と。疎外感にたえられなくて、私は周りとは違うんだ、私は特別なんだと、周囲を見下してしまうのは一種の自己防衛だけど、悲しいなと思いました。オルタは正直あまり好きになれないお話。

  • あまちゃんやった能年ちゃんが好きな本みたいだけど…分かる。よく分かる。

  • 穂村弘の『整形前夜』で知った。「自らを天才だと信じて疑わないひとりのむすめがありました。斉木杉子。11歳。―わたしのことです。」―この書き出しに魅かれたのだ。杉子と世間から逸脱した家族を描いて、見事に爽快である。しかし、学校という世間の氷の海を、孤高の杉子はハロウとともにガレオン船で渡って行く。エンディングもいい。併録の「オルタ」もまた、書き出しが秀逸。ただし、「おーい、みんな、学校に気をつけるんだぞ!」といったメッセージ性が強すぎるのは作者の意図はともかく、作品としては弱くなるのが否めないだろう。

  • ちょっと想像してたのと違った。「自分の言葉を持つ」を自分は周りより大人っぽい子だと解釈していたのだけど、実際には周りより変わりものな子だった。まあまあ面白かったけど。

  • なんとも歯噛みしながら読んだ。悔しいちゅーか、もどかしいちゅーか。慄然と世界を拒絶している感じが溢れていた。

  • 奥歯のおすすめで知る。
    独特な文体だった。

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著者プロフィール

1971年石川県生まれ。作家。
日本大学芸術学部演劇学科卒業。1993年「氷の海のガレオン」(群像新人文学賞優秀作)でデビュー。作品に『ねこの小児科医ローベルト』『悦楽の園』「マイナークラブハウス」シリーズ、『あたたかい水の出るところ』『夢界拾遺物語』『ぼくらは、まだ少し期待している』などがある。

「2023年 『ステイホーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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