- Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861764363
感想・レビュー・書評
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読み終わった後、うーんとうなってしまった。
テーマは重い。
「普通に生きられない」と感じる人たちを「普通」の枠になんとかして押し込めようとする集団の恐さが読み取れました。
私なんぞはごくごく「普通」に「学校に行くのが当たり前」と思って小中学校を過ごしてきたので、その頃はたぶんここに出てくる先生みたいな意見を持っていて、「多数サイド」でいることに安心感を持ったんじゃないかなー
少女がたくましいです!喝采したくなるところが多々。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こんなにも優しくて、柔らかい恋愛小説が読めるとは思ってもみなかった。<br />
「氷の海のガレオン」にあった一人称一視点の肉体感や切迫感から一歩遠のき、「小説」であるというフィクションの客観的なぬくもりがこの物語には敢然と横たわっている。<br />
たぶん、客観さの分だけレンジが広くなって、「ガレオン」が微かにしっくり来なかったアタシみたいな人間にもヒットしたんだろう。<br />
もしかしたら、優しさの分だけ、深さや鋭さや、本来もっとも受け取るべき人に刺さりきらなかったりするかもしれない。そういう人は改めて「ガレオン」を読めばいい。<br />
これから先どれだけ生きるかわからないけど、アタシは何度もこの本を読み返すだろうし、もしかしたら大切な人に贈るだろう。<br />
読むことが、読み終えることが、たまらなく嬉しかった。<br />
生きてて良かった。 -
相原真琴、13歳。
母親は、15歳で彼女を生んで、死んだ。父親は、どこかに行ってしまった。
祖母と曹祖母と3人で暮らしている。行き場のなくなった子どもたちも同居していて、2人のおばも週の半分はここにいる。
学校の前の席の南一と知り合う。
ある日、彼が教科書に描いた絵を見せる。奇怪な生き物が蠢く絵だった。
「素敵ね」と、彼女がいったのが、全ての始まりだった。彼は、生まれて初めて彼を受け入れてくれる人間に出会った。しかし、彼女がそのことに気づくまで、たくさんの時間がかかった。
学校はおかしな所だった。普通という概念が作り出され、みんなが、そこからはみ出さないように自分を作っていた。
12歳のとき、真琴は後ろの席の男子に、しつこく攻められていた。無視していたが、ついに担任に話した。担任は、彼は真琴が好きなんだ、といった。
真琴は、学校へ行かなくなった。祖母は、休めば、といい、曹祖母は「逃げてきたのは情けない」という。そして、真琴は普通の家庭は、本人が嫌だといっても、殺されそうになっても、学校へ行け、というのだということを知る。
いけめんの染谷くんが真琴と南に興味を持ち、家にも出入りを始めて、真琴は南を受け入れられない学校を変えていこうと思うのだが…。
真琴という変わった環境で育った女の子が、もっと特殊なところで育った南に出会い、自分の生き方や、生きがたい子どもたちの環境を考え、変えていこうと行動する。
普通とは何か、という問いかけが、全く意識されない中、展開されていくのが凄い。 -
発達障害の男の子
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中盤から章の1つ1つが愛おしく顔がにんまりしてしまった。
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革命を起こそうとした少女の物語。
そうか こういう価値観もあるのか。と思った。
基本的にみんな頭いい。
真琴がんばれw
染谷くそかっけぇ! -
永野のりこの「電波オデッセイ」読んだ直後にこの本を図書館から借りて読んだ。
近い、つながってる…(電波夫婦って!(笑))
この物語が、この物語を必要とする少年少女の元へ届きますように。 -
一人の女の子が、愛する男の子のため に革命を起こそうとするお話。
話のテーマは、著者がデビュー作から取り上げているもの。
LDやADHDという名前は、教育関係者の間では当たり前のものになっているけれど、名前だけでわかった気になっている人も多いんだろうなあ。
染谷君の存在がとてもありがたい。
異性間の親友関係が、「ああ、あるある。」と思う。
13歳でこの先一生ずうっとこの人と生きていくんだと決められるのは、幸福だけれど、自分を顧みるとなんだか不思議。
きんぴかでザクロをもぐ姿が、目の前に浮かんできて。とてもハッとした。 -
15歳で身ごもり、出産とともに命尽きた母ミチルと、その母がかくまった革命家の父から生まれた少女真琴。真琴が資産家の祖母と曾祖母と暮らす相原の家には、児童相談所で働く伯母と議員の叔母が泊まりこみ、来る日も来る日も伯母の連れてくるワケありの子ども達であふれていた。
いつか両親のような「妥協しない相手」と出会うことを夢見る真琴は、グロテスクな絵を得意げに見せる、クラスメイトから浮き出た存在の南一(みなみじはじめ)と出会う。小さくてやせて、いじめの標的にされる南だったが、真琴は彼の中に崇高な世界を見出し、彼こそ「妥協しない相手」とばかりに惹かれていく…
主人公は、若い祖母と、曾祖母と暮らす中1の真琴。なんせ、この相原の家はみな結婚が早いので、真琴が新記録を打ち立てるのでは?と冗談も飛び出すくらい早熟なのです。家は大きなお屋敷で、屋敷内には児相で福祉司をする伯母が連れてくるワケありの子ども達の喧騒であふれています。
この真琴が出会う南という男の子は発達障害で、場の空気が読めず、学習能力もなくクラスでは浮いた存在ながら、グロテスクな絵を細密に描くという特技をもっています。いつしか、彼の中に崇高な世界を見出していく真琴。「普通」が大切にされる世界で、彼がつぶされることのないようにと必死でその手立てを考えていくのですが…
どんな風にまとめたらいいのか、とにかく一読の価値アリとしか…。少年と少女の物語でもあるし、ADHDやアスペルガーなどの発達障害についても考えさせられる内容です。深い!そして楽しい!ちょっと今までに読んだことのない本でした。 -
タイトルとジャケットからは、かつて超話題になった大人の小説を想像させるが…アスペルガー症候群で絵画に天才的才能を持つ同級生を「学校」という「普通の集まり」から救うために敢然と立ち向かう少女の命の戦いが激しく生々しく描かれていく。後半少女の精神が混乱していく様子が出てくるが、実際にこういう治療をしているときに心の深い深い場所で起こるまさにそのカオス状態がリアルに描写されている。「普通」であることを強いられる学校生活。そこにムリヤリはめ込まれる「普通でない子供達」をどうやって理解していけばいいのか、これを読めばそのヒントが得られるかもしれない。