悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事

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制作 : Emile Habiby  山本 薫 
  • 作品社 (2006年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861821080

悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事の感想・レビュー・書評

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  • ある日、エドワード•サイード氏が喜びに顔を輝かせながら「この本読んだかい? 本当に素晴らしいんだ。パレスティナ文学の傑作だよ。そしてね、この小説の主人公の名前はサイードなんだよ!」と言ったのだった。

    言うまでもないが、小説の主人公とエドワード•サイード氏とに関連性はない。非楽観屋のサイード氏は、倫理•道徳•正義感に対し独自の解釈を与えており、毒気はさほど強くないのだが、いかんせん煮ても焼いても食えない。古今東西の文学に精通してはいるが、オリエント式のパロディーとして口から飛び出す為、周りからはあんまりかしこくないと思われていたりする。岡野玲子『妖魅変成夜話』の李成潭に近い。冷蔵庫に美味しそうなグレープフルーツが入っていたら「むいむい」ってメモを貼る人種に違いない。

    個人の力ではどうする事も出来ない状況に翻弄されながら、読む者を翻弄するサイード。そしてふと気付いた時、私達は彼と一緒にイスラエルの夜に立っている。それは、ひどく寂しい光景。

  • 時々見ている、外国文学を紹介するサイトで「おすすめ」だったので読んでみました。

    作者はパレスチナに生まれ、イスラエルの建国後も国内に留まって「アラブ系イスラエル人」として生きた方なのだそうです。

    そう書くとすごく難しそうだと思われそうだし、実際テーマは重いのだけど、普通に小説として楽しく(って語弊があるかもしれないけど)読めました。

    著者と同じアラブ系イスラエル人であるサイードの一人称の語りが、何だか飄々としているというかずっこけているというか、「あーっ、もう、サイード、バカだねえ」とか心の中で突っ込んでいる間に、あっという間に読了。

    著者は、イスラエル政府に抵抗して、パレスチナ人の権利を求め続けた知的リーダーでもあって、当時そういう人たちはみんな共産党に属していたらしいんだけど、主人公サイードは、こともあろうにユダヤ人の手先としてその共産党の活動を取り締まる、いわば民族の敵。密告もしてるみたい。
    でも、それは生きる方便で、彼なりにアラブ人の誇りや憤りを語ったりもして、憎めない。

    イスラエル建国に当たってパレスチナ人が「追い出された」ことはなんとなく知っていましたが、作中に出てくるパレスチナ人たちのなめる辛酸は軽く想像を越えていました。でも、だからこそ、そこに立ち向かうには「笑い」だ、というのが、アラブ文学の伝統であり著者の持ち味なのだそうで、決して重くって難しくって読みづらい小説ではありません。
    読み終わる頃には、イスラエルと中東の抱える問題について、やっぱり考えさせられてしまうのですけれど。

    訳者の方はこの作品にもともと思いいれがあったらしく、膨大な訳注も親切で読みやすいし、訳文に軽快なリズムがあって、翻訳調と戦う苦しさみたいなものは皆無でした。背景知識がそれほどなくても、注が親切なので意外と大丈夫。引用や比ゆや言葉遊びに満ちているので、読み返すたびに新たな発見がありそう。

    普通におもしろく読んで、読むうちにパレスチナに対する理解も深まる作品。

  • パレスチナ人作家の作品は初めてでしたが
    背景となる歴史に対し私が疎い為
    話とは関係無いところで躓き
    残念乍,意識が集中できませんでした.

    もう少し勉強してから再度挑戦したいです.

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