駐日ベルギー領事の娘として日本に生まれ、3歳まで過ごした著者の自伝的小説。フランス語より先に日本語を話し、家政婦のニシオさんと日本語で会話をしていたという日本での子ども時代。
チョコレートの味に喜び、鳥取の海で溺れそうになり、子ども部屋の窓から落ち窓枠にひかっかって助かり、鯉に餌をあげているうちに池に落ち再び溺れそうになったり。出来事の一つ一つは、やんちゃな子どもなのだが、それをまさに形而上学的に書くことで、ウィットにとんだ魅力的な文章になっている。家政婦のニシオさんも素敵。一緒に働いているカシマさんは、白人を毛嫌いしていてちょっと怖い。
ベルギーらしく、子どもたちの好きな読み物の代表として「タンタン」が幾度となく登場。
庭の池で鯉を飼う発端ともなる「こいのぼり」を見て、5月は男の子の月だと教えてくれたニシオさんにアメリーが「女の子の月は?」と聞くとニシオさんは「ない」と答え、アメリーは理不尽を感じる。このくだりは、日本人だっておかしいと思うはず。なぜニシオさんは雛祭りを教えてあげなかったのだろう。アメリーの興味をかきたてるような3月なのに。