経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える

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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861824296

作品紹介・あらすじ

資本主義と人類はどうなるのか?「経済学」というコンパスを使った、世界史・人類文明史への壮大なる旅。

感想・レビュー・書評

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  • ー 人間の特質は性悪なものであり、富や教育によっても善良にはなれない。テロ行為の首謀者の出自は貧しくなく、また無学でもない。彼らのほとんどは高学歴だ。

    ジャレドダイヤモンドやユヴァルノアハラリのようなスケールで人類の歴史を語るダニエルコーエン。成長とは麻薬であり、幸せを感じるのは成長が加速する時だとインタビューで発したが、まさに人類は成長に取り憑かれた生き物だ。グローバルに開かれた資本主義は競争による継続的成長を必要とするイデオロギーだが、資本主義でなくとも、人間同士は常に、権威などのステータスやセックスにおける異性の獲得、金銭などのスコアを競い「他者より多く」を求めて止まない。この点、多くを獲得し得た者は他者に支配を及ぼす性悪な存在とも言える。スコアやセックスを求め、その過程で勝ち抜き=成長という麻薬に取り憑かれた、終わりなき努力家たちという事だ。

    種としては、権威あるものが多く子孫を残すだけではなく、権威なき「力無き夫婦」同士で補欠の人類を作り環境変化の多様性に備えた。しかし、人口増は一人当たりの所得を減らし、耕作可能な土地が不足するというマルサスの法則のような状況が起こり、人口過密化が齎す感染病、支配欲がぶつかり合い戦争に発展する。

    定住化した人類は、シュメール文明、エジプト文明、クレタ文明、インド文明、中国文明など青銅や文字の発明とともに文明を発展させた。これらの中で支配力を強めたのが西欧文明だった。文明間での腕力による序列、つまりミリタリーと外交、政治力や経済力が全てを決していく。

    戦争は融合の過程なのか、個々の領域を尊重し合い、技術革新により特定範囲内での安定した自給自足が実現すれば、支配欲やセックスのための権威争いも穏やかになり、やがて人類は増殖を終えるのではないだろうか。そして増殖が戦争を齎すならば、平和とは世界規模での草食系化をプロセスに必要とするような気がする。このプロセスを更に一段上げるのは、量子コンピュータかAIか核融合技術か。

  • マルサスの法則(富・食料と人口のバランスが常に崩壊すること)を克服したかに見えた近代は、二つの大戦を経て平和体制を保持する現代へとつながって行きます。世界は、経済成長を回転軸として、次々とフロンティアを見つけて発展を目指していくことにより、展開していくこととなります。

    一方フランスの経済学者である著者は、経済成長至上主義の中で、人々の幸福感は必ずしも比例しない、というイースタリンの逆説を紹介します。人々が幸福を感じるのは、経済成長が加速する過程であり、それが停止すると不満に転ずる。

    著者は、人類の最重要課題を不確実性と定義しているように感じられます。それをうまくコントロールすることができずにシステムが崩壊に直面する、と。

    また不確実性とともに、地球の限界についても、環境や人口増加の側面から人々の意識が変わることの必要性にも本書の巻末で警鐘を鳴らしています。

  • “経済成長"は、人類を“幸せ"にしたのか? ヨーロッパを代表する経済学者による、欧州で『銃・病原菌・鉄』を超えるベストセラー! いかに経済が、文明や社会を創ってきたか? そして、21世紀、資本主義と人類はどうなるのか? 世界15カ国で翻訳刊行。「間違いなく21世紀を生きる人類の必読書である。その面白さは、『銃・病原菌・鉄』を超える傑作である! 」(「ル・モンド」)。 「経済学」というコンパスを使った、世界史・人類文明史への壮大なる旅――。経済が、いかに文明や社会を創ってきたのか? 古代文明の人類初のグローバリゼーションから、現在のグローバル経済へ。1930年代の世界大恐慌から、2009年の世界金融危機へ。古代中華帝国から、現代中国へ……。アダム・スミス、マルサス、リカード、マルクス、シュムペーター、コンドラチェフ、ケインズ、ハイエク……、経済学の巨匠たちとともに、人類の過去と未来を旅し、21世紀世界が直面する課題の答えを探る。

    第1部 なぜ西欧が経済発展したのか?―経済成長という“悪徳の栄え”の法則と教訓(文明と経済の起源;停滞の中世から奇跡の近代へ;マルサスの法則;解き放たれたプロメテーウス;永続する経済成長)
    第2部 繰り返される経済的繁栄と危機―戦争と平和/狂騒と恐慌の時代の法則と教訓(世界戦争の経済的帰結―ドイツに別の選択肢はあったのか?;史上初の世界恐慌;高度経済成長は、私たちを幸せにしたのか?;福祉国家の誕生と終焉;戦争と平和の経済学)
    第3部 グローバル化/サイバー化する経済と社会―二十一世紀を動かす新たな法則とは?(復興する中国とインド;歴史の終焉と文明の衝突;二十一世紀資本主義とエコロジー;新たに世界を襲った金融危機;非物質的な資本主義と経済法則)
    おわりに 人類初となる時代への突入―求められる思考法の転換

  • 「ヨーロッパで起こった出来事が、今日では、世界規模で繰り返されている」という書き出しではじまる経済の視点で世界史を俯瞰して説明した本。
    覇権が移り変わりつつある現代において、今後の世界がどのように歩んでいくのかを想像する上で、色々な気付きを与えてくれます。
    日本の高度経済成長が終わり、長く停滞しているが、必然の流れであったようである。
    この本を読みながら、抑圧された中国の都市戸籍を持たない人々が、フランス革命のような、ドラスティックな革命を起こすことになるのかが気になってきた。

  • 未来を考えようシリーズ。「資本主義は終わるのか」ということが、だんだん現実味を帯びてきたと思う今日この頃。タイトルにあるように、物々交換が始まった頃からリーマンショックまでの1万年を振り返るもの。余計な主観や主張がほとんど入らずに淡々と状況を俯瞰していて、大きな流れを理解するのにちょうど良い。難しい理論もなく、経済学に馴染みの薄い人でも理解しやすいと思う。「人はある理論に支配されているということを、その理論が死んでからでないと認識できない」これは金言。記憶を遡ると、日本だけでも、バブル経済、高度経済成長神話、戦前の大東亜共栄圏構想、維新からの富国強兵などなど、その時代が終わってから「ああそうだったのか」と気づくものばかり。さて、今私たちは何に支配されていて、ひょっとしてそれは終わりを告げようとしているのだろうか。

  • ・結局、我々は西洋文明の枠内で思考している。

  • 歴史の中での経済システムおよび価値観の変遷
    また現代社会の特徴と将来の展望

    朝日新聞での著者のコメント
    「富というものは、働かなければいけない時間を減らすためにあるものだ。貧しい人がたくさん働くのは、まさに貧しいからだ。余裕のある者も同じくらいに働くべきだという考えはばかばかしい。」

  • ー 人類は、太古の昔から、反対方向に働く二つの力によって引っ張られた糸の上を歩んできた。

    人口が増えつづけるため、人類は自分たちを養う農地の定期的な不足に立ち往生してきた。しかし人類は、まさにその増えつづける人口により、社会生活の密度と複雑性を高めた。

    すなわち、さまざまなものを発明し、知識の限界を押し広げ、自分たちの運命を切り開いてきたのだ。この方程式の解法に失敗して消滅した文明もあった。自分たちに何が起こるのかを理解できない者たちは、ローマ帝国の場合ではゆっくりと、マヤ文明の場合では突如として憔悴した。

    失われた文明のことなど忘れてしまった人々や、人類は常に危機を克服してきたと考える人々もいる。だが、人類がつねに危機を克服してきたと考えるのは、これまでに危機を克服できなかった人類を除外して考える場合だけの話だ。 ー

    経済と人間の残念な歴史をおさらいできる作品。

    我々人類は、“原因が分かっているのに、対策を行わない”滅亡モードをこのまま進んで行くのか…
    そんな不安を強く抱かせる作品。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 人類が常に危機を克服して来たと考える人は、かつて危機を克服できなかったローマ帝国やマヤ文明のことを忘れている。解決できない危機は存在するのだ。物質的繁栄は飢餓を克服し、平均寿命を延ばしたが、経済発展により暴力強化につながった。そしてその暴力はサイバー・ワールドという新たな境地に到達した。いま我々の文明は危機にさらされている。

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著者プロフィール

1953年、チュニジア生まれ。フランスの経済学者・思想家。パリ高等師範学校経済学部長。『ル・モンド』論説委員。2006年にトマ・ピケティらとパリ経済学校(EEP)設立。著書にフランスで『銃・病原菌・鉄』を越えるベストセラーとなった『経済と人類の1万年史から、21 世紀世界を考える』など。

「2019年 『ホモ・デジタリスの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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