赤松小三郎ともう一つの明治維新――テロに葬られた立憲主義の夢

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著者 : 関良基
  • 作品社 (2016年12月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861826047

赤松小三郎ともう一つの明治維新――テロに葬られた立憲主義の夢の感想・レビュー・書評

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  • 赤松小三郎ともう一つの明治維新 関良基 作品社
    テロの葬られた立憲主義の夢

    かつて私自身が自分にはない吉田松陰生き様に
疑問を持ちながらも惹かれるものがあった
しかしこれを読んで目からウロコで
何に疑問を持ち何に惹かれていたのかを具体的に理解し
    歴史認識を新たにした

環境学者である著者が2016年暮れに出版した
    常識的に言えば著者はお門違いとも言える明治憲法に関わり
    長州の吉田松陰一派のテロで慶応3年に闇討ちによって葬られた
    赤松小三郎の手による理想論とも言える民主的憲法について
今現在の政治に危機を感じて急遽まとめたものである
    
赤松の顕した憲法は
慶応3年=1867年5月
    全国民に参政権を与える議会の開設と法の下の平等と個性の尊重など
    現行憲法につらなる憲法構想を提案し
その実現のために《御改正口上書》と言う建白書を
    徳川政権の松平春獄と越前と薩摩の島津久光に対して
    少なくとも三通したためているとある

    民主主義とは流れ変わる世論に迎合するものではなく
    国民が私欲に迷わず道理をわきまえた議員を選出し
    その議員が公の議会で公的な政策を練り上げ
    行政が執行していくことであり「興論政治」の実現であるとし
    赤松は貴族が自らの無能を自覚しないままに世襲して
    権力を得た者達の専横が諸外国の亡国の原因だと断罪していた

    又京都では薩摩藩邸で塾を開くとともに私塾も開き
    大垣・肥後・鳥取などからの門人に講義していた
    それに対し権力欲を本音とする大久保利通などは
    危機感を感じていたようで後々の暗殺へとつながる

    平和的大政奉還論と国民議会構想を持つ西郷を
    内戦へと武力発起を焚き付けたのは
    グラバーの武器商人とつながる英国の外交官であった
    アーネスト・サトウだという
    このことでニホンの国民が不幸だったのは
    薩長が利己的になって列島を二分し仲間割れを起こし
    戦争することで英国から武器を買った上に
    傀儡政権という漁夫の利を熨斗を付けて与えてしまったことなのだ
    会津の山本覚馬も薩摩の牢獄に繋がれる中で「管見」と言う意見書を書いた
    そこには議会政治・三権分立・学校の建設・殖産興業・通貨改革・
    太陽暦への転換・長子相続から均分相続への移行・製鉄業や醸造業などの復興がある

    権力に擦り寄り立憲主義者から宗旨変えして初代東大総長となった加藤弘之
    徳川から薩長へと権力に迎合し続けた西周は山縣有弘のブレートとなる
    テロによって権力を手にしテロによって滅びた伊藤博文
    人斬りテロリストであった高杉晋作
    天皇崇拝者としての神国思想と民族排外主義であった吉田松陰は
    何故か近代日本の立役者として左右両派から評価されている
    吉田松陰の門人であり多くのテロによって時代を動かしていた品川弥二郎
    赤松の門人でありながら赤松の暗殺に関わるが後に後悔する
    議会制民主主義を目指した薩摩と土佐による薩土盟約を保護にして
    サトウの入れ知恵で薩長同名に転向したゆらぎの西郷隆盛

    赤松の一番弟子であり薩摩の塾長として赤松を講師として招請した野津道貫
    東郷平八郎と上村彦之丞はロシヤ艦隊に勝利した立役者で
    赤松の門人であり赤松を尊敬していた


    鎖国の意味
    新世界秩序を推し進めている国際金融支配組織を目論む
    物質至上主義に閉じ籠もる者達と
    同じ土俵に登らない事を宣言したのが
    独自の精神的自律を重んじる《鎖国政策》である
    これは後のアメリカンドリームに浮かれた
    モンロー主義とも違う自主独立を守る防衛策だったのである

    一見丸腰の宣教師という一神教のイエズス会を
    トロイの木馬とする物欲と血に飢えたグローバリストたちと
    一線を画しながらも
    その暴力的侵略に対処するべく情報収集していたのが
    信長以来明治まで続く300年を持ち堪えた徳川政府である

    黒船前後でココゾと物欲に走った長州が
    英米の手先となって薩摩を取り込み尊皇攘夷を建前に
    開国することで無血による大政奉還を目指す土佐と縁を切り
    アメリカの南北戦争で余った武器を買い込み
    武力で新政府を独占せんが為に傀儡政府を独り占めしたのが
    維新の名を借りた軍国独裁国家である

    義務教育で政府に都合よく書き換えた日本史によって
    神武天皇始め都合の悪い事実をことごとく葬ったのである
    そこには現日本国憲法に勝るとも劣らないほどの
    立憲主義を唱えて徳川政府を始め薩摩・越前に建白し
    内戦を避けた開国を目指して奔走して
    利己的な専制支配を目論む大久保利通や西郷隆盛に恐れられ
    暗殺された上田藩士の赤松小三郎や
    会津の山本覚馬や土佐の山内容堂や長州の佐久間象山の実像は
    消し去られたのである

  • プロローグ文末に添えられた不穏な一文――
    「言うまでもないことであるが、実証的な史実を除く、日本政治のあり方についての本書の内容は、あくまでも私個人の見解であり、研究会を代表するものではないことを申し添えておく」
    ――著者の覚悟であり、至極妥当な警告文でもあったと思う。

    決して品の良い本ではなかった。人にたとえるならば、正しく某米国新大統領こそドンピシャといえる。
    大いに“炎上”すべきである。
    そのただ中、又その先に見るものこそが本書の真価であろうし、赤松の「夢」への道筋ではないか。

    副題にあるように、本筋はわが国の憲法制定をめぐる出来事を軸として展開され、現状においてなお「スルー」され続ける赤松案の位置づけを探る。
    巻末付録として時系列に収録された4本の憲法草案(赤松「口上書」・薩土盟約「約定書」・龍馬「八策」・「五箇条の御誓文」)を順に追って概観される変遷が興味深い。

    主題の人物は信州上田の人であり、著者もまた上田の人であるらしく、上田から目線の“維新”物語でもある。

    尚、本レビューを書いているのも上田の人であることから、評価に当たっては若干どころでないバイアスがかかっているかもしれない。

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