シン・ゴジラ論

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861826122

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    およそ現時点現地点での網羅的なゴジラ総論になっている.とすれば,2016年にヒットした映画「シン・ゴジラ」そのものにも,過去のゴジラ像やイデアとしてのゴジラを総括するような力があったのだろう.
    著者は,「シン・ゴジラ」の生産の現場である映画製作のそのことを論ずるよりも(*02),消費の現場を重んじ,過去のゴジラについての言説をメスとして,雑多な部位を腑分けしながら論を進め,シン・ゴジラの本質に鋭く切り込んでいく.その点では,ゴジラ及びそれに続く諸ゴジラ,そしてシン・ゴジラの社会受容史と現代社会のあり方といったような切り口を残している.

    (02)
    著者は,「シン・ゴジラ」が観客に論を巻き起こすような形で展開されたこと,見たもの誰もが論じたくなるような映画である特徴,それがメタレベルでのゴジラの特徴であることを論じている.そして初期のゴジラからとそれが巻き込んだ言説の足跡(*03)を追っており,そのようなゴジラであれば,戦後日本の社会のありようを映さないはずはないという視角によって,戦後日本文化論,特にメディア論を成立させている.そのひとつとして日本の浪漫主義を断罪しているあたりは,現在の日本のストーリーの地点を探る上で興味深い指摘になっている.

    (03)
    ゴジラは,反面では破壊の象徴であり,とりわけ都市の破壊の象徴である.核のリサイクル機関としてのゴジラであると同時に,都市のリサイクル機関として希望されたゴジラが論じられるのも見てみたいものである.ゴジラの足掻きは,案外,経済の車輪を回転させるものであったのかもしれないと本書を読んでいて思った.

著者プロフィール

1983年、札幌生まれ。批評家。東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻修了。博士(学術)。日本映画大学准教授。著書に『虚構内存在』『シン・ゴジラ論』『新世紀ゾンビ論』『娯楽としての炎上』他。

「2021年 『シン・エヴァンゲリオン論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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