【「新青年」版】黒死館殺人事件

著者 :
制作 : 山口 雄也  新保 博久 
  • 作品社
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本棚登録 : 124
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861826467

作品紹介・あらすじ

日本探偵小説史上に燦然と輝く大作の「新青年」連載版を初めて単行本化!
「新青年の顔」として知られた松野一夫による初出時の挿絵もすべて収録!
2000項目に及ぶ語註により、衒学趣味【ルビ:ペダントリー】に彩られた全貌を精緻に読み解く!
世田谷文学館所蔵の虫太郎自身の手稿と雑誌掲載時の異同も綿密に調査!
“黒死館”の高楼の全容解明に挑む、ミステリマニア驚愕の一冊!

 本書は『黒死館殺人事件』の初出誌「新青年」を底本とし、世田谷区立世田谷文学館所蔵の小栗虫太郎自身の手稿と照合した上で校訂、註釈を加えたものである。
『黒死館殺人事件』は本書発行以前より、多くの出版社から若干の異同を含みつつ刊行されてきたが、基本的には新潮社版を、唯一の著者本人の校訂を経た底本としてきたと言ってよい。そしてこれまでも、有為の先人によって、本文の検討作業が行われてきたが、著者の早逝や戦後の混乱もあって、手稿の存在が明らかにされない状態での、不十分な作業となってきたことはやむを得なかった。
 筆者は一九七〇年以降「黒死館語彙」の蒐集調査を続けてきたが、故・松山俊太郎氏の慫慂を請け、一九七六年、教養文庫版『黒死館殺人事件』の校訂に協力させて頂いた。その編集方針は、初めて「新青年」版との本文校訂を行った上で、正確を期すということであった。しかしながら、その際も多くの問題点を著者の誤謬、捏造として処理せざるを得なかった。筆者は教養文庫版刊行以降も、黒死館の諸相について調査を続けてきたが、そうした疑問点を残したまま現在に至った。幸いにもその後、手稿旧蔵者が判明し、世田谷文学館が入手したため公開閲覧が可能となり、今回の企画が成立した。
山口雄也「解題」より

感想・レビュー・書評

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  • 三大奇書と呼ばれている本の一つ。
    殺人事件推理モノではある。
    オカルトとか錬金術とか好きな人にお勧め。
    文章の体裁はとても好みだけれども話の内容が主人公の法水の話し方のおかげで回りくどすぎてものすごく眠くなる。
    作者が博覧強記過ぎて、ルビと注釈と引用がやたら多いから想像力のない人だと情景が浮かばなすぎてきついと思う。
    正直に言ってしまうと厨二病の人が好きそう。
    そして私は注釈の方が楽しめてしまった。
    元ネタを丹念に拾ってくれてるのが本当に素晴らしい。
    さらにすごいと思うのはこの作品が9ヶ月間の連載だったこと。
    ただ、もう二度目を読む気力がない。

  • 数十年気になりつつ手の出せなかった本の作品社版。 A5判、479ページ。 下1/3ほどが2000項目に及ぶ語註です。本文もルビがものすごいことになってます。

    という物理的条件だけでなく、想像を遙かに上回る難物でした。

    事件は連続殺人で、おどろおどろしい描写もありますが、近年のホラーに慣れた方にはさほど衝撃感はなさそう。 ただ、物語が進行する舞台は薄暗い時代感があって、期待を裏切らない雰囲気。

    謎解きは容疑者のアリバイや動機にはさほど踏み込みません。まず、普通の方法での謎解きを楽しむ物語ではなさそうです。 それよりは、文学的素養がかなり深い関係者との言葉のやり取りの細部を捉え、様々な暗号法やオカルト的知識を駆使して、真相を探ろうとします。 というか、真相に迫るつもりがあるのか? と問いたくなるくらい、この物語は連続殺人も人の命も二の次にして蕩々と語る探偵の知識ひけらかしに尽きます。 
    これについて行けるかどうかで、評価は極端に分かれるのではないでしょうか。 確かに三大奇書の一つに挙げられるだけのことはありますね。
     
    ところで、こんなものを見つけてしまいました。 全編無料で読めるようです。
    → 「まんがで読破 黒死館殺人事件」https://vcomi.jp/page_product/page_product?seriesId=42
    登場人物(特に探偵)の風貌が私のイメージとずいぶん違ったのが残念ですが、ともかく、蘊蓄や謎解きの複雑な部分を大胆に削ぎ落として、ストーリーの本筋はわかりやすくなってると思います。

  • 澁澤龍彦絶讚のゴシックミステリ。
    今まで文庫でしか読んだことはなく、作品社もコレクターに的を絞った一冊なのは間違いない。
    今なら河出文庫でも読めるので、価格的に無理な向きはそちらを。他にも読んでみたい方は東京創元社の日本探偵小説全集 小栗虫太郎を探して。

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著者プロフィール

小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4~12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

「2017年 『【「新青年」版】黒死館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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